【夏休み番外】海行くらしいぞ!!
────お盆に海水浴をしてはならない。
曰く、水死者の霊が足を引っ張るのだとか、海の神の領域を侵す事になるだとか。
近年では、クラゲが発生しやすい、海流の流れが変わったり波が荒れるため、沖に流されやすい、といった風に伝承ではなく事実として知られている。
……なるほど、”水死者の霊が足を引っ張る”というのも科学的に観ればこういう理由があったのか。(そう筆者は感心した。)
しかし、この世界は科学では説明できない魔法が存在する世界。伝承がそっくりそのままの意味になる……可能性がある世界。
そして、我らが主人公の金子練くんは、夏の魔物ならぬ魔王に、その運命を翻弄されてしまうのだった。
それは光というより、最早熱線だった。
「…………今年、あっちぃな……。」
うだるような熱にギラギラとした陽射し、もう文面だけでうんざりとしてしまいそうになるが、その一方ルミナは元気そうだった。陽の光を受けて糧とする月光龍の特性だろうか。
さて、そんな折。
「……あっ、海行こう!!」
唐突に練がそう高らかに宣言する。
当然季とシルフィアの2人は大困惑だ。
「急に何言い出すんですか???」
「練くんが……陽キャに……?」
「おい、母さんか?息子が不良になってしまった母親なのか?」
「そんなぁ、母さんだなんて……まるで夫婦みたい……♡」
さて、いつもの茶番を終えたところで、
「そういえば買ったけど来てない水着もあっただろ?使わなきゃ勿体ない!!」
そう言って皆に同意を求める練。
「お兄ちゃんが見たいだけでしょ?」
「見たい!!!!!」
「あら、素直ですね。」
呆れ顔のダークとその正直さに目を丸くするライト。その背後から現れたカオスが練を指さして言う。
「ふっふっふ!!これだけ美少女が居るのに、夏の水着回無しはありえないよねっ!ご主兄様?!」
「当然!!ルミナも行きたいよな?!!」
「行きたーい!!」
無投票5名、賛成3名。結果は海に行くでした。
「えっ?!私白票扱い!?」
「よっしゃああああああ!!!『行くぜぇぇぇぇぇぇぇ』!!!!!!!」
なんて、そんな茶番じみた空間が歪む。
突如、まるで風呂場の水栓を抜いた様に、空間が渦を巻いていく。
あえてそれに相応しい名前を探すのなら、ワームホールがそれなのだろう。
「「「「「「「え。」」」」」」」
そして『え』の口のままに固まる7人組。
「な………………ッ。」
最初に口火を切ったのは、
「なんだこの歪みいいいいいい!!!!」
なんか、原因っぽいヤツだった。
「「「「「「えっっっっ。」」」」」」
そして『え』の口のままに固まる6人組。
「………………なんだこの歪みいいいいいい!!!!」
おい、白々しいぞ。
「…………パパ?」
「……ん?んん???何かな??」
まだシラを切り通そうとする練に、更なる追い討ち。
「いや作ったの練くんだよね?!!」
「魔力なしに突然こんな現象が起こせるのは錬金術しか有り得ません!」
「誤解だ!!そもそも俺の錬金術は弱体化している!!」
「いやいや、自分以外を対象にした錬金術はそのままだよね?」
「私たちに隠し事は無理ですよ。」
「ぐぬぬぬぬ……。」
はい、お前の負け。
「海に行きたいってご主兄様の願望が空間に作用して、この謎穴が完成〜って感じかな?いやぁ、カオスだね!!!」
そして、四面楚歌状態の練を横目に、カオスはにししと笑う。
(……そして、この謎穴さんの先には────プライベートビーチが広がっていること間違いなし!!それをいち早く察して、水着を取りに行くカオスちゃんなのであった〜!!)
さあ善は急げ。踵を返してさっさっさっと、目的のブツをいち早く手に入れようとか、なんならいきなり水着を着て登場してしまおうとか、そんな皮算用を働いていたその時。
「ん?なんだ???穴の様子が────」
人生は必ずしも上手くいくものではない、ということを如実に語るように、もしくはカオスのその哀れな行動を揶揄うように、
「「「「「「わー!!!!!!」」」」」」
その渦はカオス以外の6人を一瞬にして取り込み、
「……………………ぇ。」
乗り気MAXなカオスを置き去りにしてその渦は──────
「えっ、えっ??えぇっ!!?えっ????えぇっ!?!!えぇ!????えぇっっ!!!???」
──困惑MAXのカオスを嘲笑うように、あっという間……いや、「えっ」という間に閉じた。
「…………なんでこうなるのぉ……?????」
カオスにできることといえば、もう何の渦も異変もない空間に虚しく手を伸ばすだけ、それだけだった。
「ねぇねぇ、ママは?」
そんなカオスの背中に、そんな言葉が投げかけられた。
「レフアちゃん……。」
その不安げな顔を見て、カオスはハッとする。
周囲を眺めると、残ったのはレフア、オルタナティブ、レクス、そして自分。
(1番年上じゃん、私。)
なんか全員、揃いも揃って見た目だけは自分よりも年上だが、間違いなく実年齢は自分が最も上だ。
(なのに、私が初めに挫けてどうする?!泣き喚いて……それは私のポリシー、『混沌』に反する!)
「ふふん!新婚旅行だってさ、全く困ったパパ達だぜ。」
なんてことはない。ただの強がり。
「しんこん……?」
「結婚おめでとう旅行さ。さぁ、パパとママ達が居ないうちに、最高の一日を過ごしてやろうぜ?愉しく、カオスに!!」
だけど、最年長者なんかは強がってこそ。
「さぁ手始めに、バカ長い流しそうめんでもやっちゃいますかぁ!!!」
「お〜!!」
さて、そんな大はしゃぎシスターズを眺めるのはクール系ブラザーズ。
「ま、親父の願望に起こされた現象なら、母さん達を傷付けることは有り得ないし、戻って来れないこともないだろう。」
「間違いない。あのバカ親父のことだからな。」
「あぁ、間違いないな。じゃあ、せっかくだし俺達も楽しむか。」
「最強の流しそうめんでギネス取ってやるぜ……!」
……流しそうめんにギネスあるの?(長さのギネス記録があるらしいです。)
夏休み終わってんだワ!!!ということで遅刻です。誠に申し訳ない。夏休みとは名ばかりの1ヶ月でした。まぁ、絵を描くモチベが高すぎたせいでこちらが疎かになってしまったのですが。という訳でモチベの行き先をご覧いただければ幸いです。こっちも頑張りますので。
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