異世界で気ままに余生を過ごすハズが話がややこしくなってきたんだが
遅れてごめんなさい!!
前回のあらすじ。レンとウサは初夜を迎えた。
「おい、言い方あるだろ。」
……前回のあらすじ。えー、レンとウサは初めて2人きりの夜を迎えた。
「……はぁ。」
夫婦となるものの初めての夜にしては、非常に重苦しい初夜。2人とも寝付けない夜が続いたが、レンの説得によってウサは久しぶりにベッドで眠りに就いた。
「ややこしいことになってきたな……。」
そう呟きながらレンは椅子に腰掛け目を閉じる。
ただし、周囲の細やかな動きを視覚以外の全てで捉える。
(懐かしいな……昔夜警をした時ぶりか。)
とはいえ、その精度は一切衰えていない。その証拠に────
「全く、これ以上事をややこしくしないでもらえるか?」
レンはため息混じりにそう告げる。扉の先の気配の正体の名前を呼ぶ。
「明神宮天華。」
「ふっ……婚約者を放って私と相瀬だなんて。悪いお方。」
まるでレンの神経を逆撫でするかのような天華の言葉。レンは苛立ちを隠すことなくぶっきらぼうに言い放つ。
「それはお前だろ……ウサを起こしたくない。外で話そう。」
「えぇ、本調子でないあの子を倒しても意味はありませんもの。」
まるで『自分は本調子でなくとも問題ない』とも取れる言葉に、レンは鼻を鳴らした。
「────で?何の話だ?」
さて、この継承戦における助っ人────婚約者の2人が遂に直接対面した。
「改めて自己紹介するまでもないだろう。簡潔に言え。」
「眠る前に貴方の顔が見たくなった……なんて理由はどうかしら?」
それは、天華なりに場を和ませようとしたのか、それとも本気で言ってるのかは不明だが、
「くだらん、却下。」
レンはそれをくだらんと一蹴。天華は肩を竦めた。
「本当にそう思っていたのだけどね。」
そして、こう続けた。
「きっと、陰鬱そうな顔をしているでしょうから。」
(────見透かされている……?!)
レンの心臓がまるで鷲掴みにでもされたかのように跳ねる。事実、心臓とまではいかないが、心境は完全に掌握されているようなものだった。
「あの子は若い……身体も、精神も。無理に今、当主を継ぐ必要はありませんわ。」
その言葉は、裏なんて一つもなく、ただ少女の身の丈に合わない夢を案じているような声色で、
「それはつまり、戦いから降りろ……と?」
ありもしない、あるハズがない答えを口にしてしまう。
「まさか。」
しかし……いや、当然と言うべきか。
「私の口から、そんな甘い言葉が出てくるとでも?」
そんな甘い考えを、面白みの欠片もない夢を、見下すようにして天華は地面を指し示す。
「『生意気にも逆らってしまい、申し訳ありません。この身の代わりに彼女だけはどうか。』そう言えば棄権してあげますわ。」
その言葉を耳にした瞬間、
「つまんねぇこと言うなよ。お前。」
レンの堪忍袋の緒が切れる。
……分かっている。自分が下らない事を言ったから、その寝ぼけ眼を覚ますべく、あえて強い言葉を使ったのだと。
「そのつまらん冗談を本気で言っているなら────」
しかし、その言葉を看過することはできなかった。
「────今ここで叩きのめしてやる。」
思えば、哀れな一生だった。アビスに捻じ曲げられ、都合のいいように振る舞う……まるで人形だった。
(俺は、二度と自分の意思を手放さない。自分の意思で償いを続ける。『誰かのため』を続ける。)
自己中心的な自己犠牲。それが、レンの新しい生き方だった。
レンの眼からその意思を受け取り、天華は満足そうに笑った。
「…………ふっ、それを聞けて安心したわ。」
そして、改めて宣言する。
「貴方はやっぱり私の見込み通りの男だった。
────必ず貰うわ。貴方の人生を。」
我儘で、自己中心的なその求婚。
「できるものならな。」
レンはそれを宣戦布告として受け入れるのだった。
いつも読んでくれてありがとうございます!!
課題が終わらないよ〜(泣)




