番外 実は学校でこんな授業してました。
お久しぶりです!!こちらは書き直しの方に掲載した、新しく生えた話になります。
積もる話は後書きに、まずはお楽しみいただければ幸いです!
────それは、とある生物の授業での話。
「今回は生物の中でも特に不可思議な生態を持つ、『魔物』について授業していくぞ。
メモは取らなくてもいいが、テスト前に泣くなよ。」
リカートはそう言って、板書を淡々と進めながら授業を進めていく。
「まず、基本的に魔物とはそこかしこに存在する『魔素』を糧にして自然発生した生物の事だ。魔から生まれた物で魔物と覚えろ。
余談だが──テストでこれを魔生物と書きやがるヤツがいる。だが、魔生物は人工的に作られている方を指す。生まれは似ているが、筆記テストでは別モンだから気を付けろ。」
そんな授業風景を前にして、練やクラスメイトの皆は、
(……なんか、ちゃんと授業してるな。)
少し心配になると同時に、「こういう授業できるなら最初からやっとけよ。」という気持ちでいっぱいだった。
後に判明した事だが、今回真面目に授業を進行した理由は、ダラダラと授業を行うと授業時間が足りず、後で補習をしなければならなくなる。その補習が面倒だったためである。
「そして何故、我々が魔物を定期的に駆除しなければならないかだが……基本的には『魔群暴走』を防ぐためだ。」
『魔群暴走』。練は、いつかの図書館で読んだ本の内容を思い出していた。
(『魔群暴走』……大量に増殖した魔物が都市などに押し寄せる現象……だったっけ?)
「『魔群暴走』の歴史は古い。1000年以上前から確認されている魔物による災害で、当時の魔物学博士の『ヘイゴロウ・ナナバヤシ』によって名付けられた現象だ。」
(あ、転移してきてる。)
どうやら、クロノスやエイトも同様の雰囲気を感じ取ったらしく、チラチラとこちらを横目で見てきていた。
「ちなみに『ヘイゴロウ・ナナバヤシ』はまだご存命で、大魔導帝国国営図書館の生きる魔物図鑑として24時間会話・相談することが可能だ。興味があるやつは会いに行くといい。」
そのセリフに練達がギョッとしていると、それを更に追い打つように、水槽の中に脳ミソだけ浮いているイラストが黒板に描かれた。
(……道徳と倫理終わってない?)
それはそう。
「話が脱線したな。なんについて話してたっけ……。」
「『魔群暴走』を防ぐには──です。」
そうティグ・イベルが答える。どうやら、今の授業形態には何か言うこともないらしく、大人しく授業を受けていた。
「あぁ、そうそう。ありがとうな。
それで『魔群暴走』を防ぐための基本は魔物を倒すこと。他にもあるが、基本的にはこれで充分だ。」
そう解説しながら、目がバツ印になったオオカミを描くリカート。
「だが、倒しすぎると良くない場合もある。具体例を出そう。」
突然、黒板の隣に白い幕が降りたかと思えば、そこに映像が投影される。
投影されたのは、禍々しい角を持つ羊の魔物。
「こいつはワイルド・ラムール。討伐ランク・優先度共にc級の魔物だ。」
(羊だからラム……加工された後の名前つけられてかわいそうだな。)
しかし、付けられた名前はどうしようもない。諦めるのみ。
さて、無意味に哀しんでいた練だったが、次の瞬間、予想だにしない出来事がクラスを襲った。
「どう転んでも一般的な魔物の域を出ない魔物だが……750年程前、布の素材となる植物、ポンポンワタポンが…………」
全員吹き出した。
「…………ポンポンワタポンが不作で、布が高騰した時期があった。」
リカートはそんな辱めを受けても、耳の端を真っ赤にしても尚、授業を強行した。
何故なら補習したくないから。授業時間内に授業を終わらせたかったからだ。
「そこで、同じく布の素材に使えるワイルド・ラムールの素材、『ひつじわた』がより高額で取引されるようになり、ワイルド・ラムールが乱獲され、一時期絶滅の危機に追いやられた。」
『ひつじわた』もだいぶヤバかったが、先の『ポンポンワタポン』と比べればマイルド。クラスメイトの皆はリカートの想いを汲み取り、吹き出すのを我慢していたが、
「────そこで、起きたのが『ロリ・ショタ化事件』だ。」
流石に全員吹き出した。
「…………しょうがないだろ。そういう名前なんだから。」
ため息混じりにそう言うリカート。しかし、普段のリカートからは想像もできない『ロリ・ショタ化事件』というその単語。皆の笑いを誘うには充分だった。
しかし、
(……興味深いな。)
金子練だけは、その話を真剣な眼差しで聞いていた。
「……もういいな?始めるぞ?
その事件を経て、魔物の姿・生態の変化についてよく研究・理解されるようになった。例を5つ示すぞ。」
そう続け、リカートは黒板にチョークを走らせる。
「1つ目、個体数が過剰に増加した時、その他の生存競争相手を排除し、生息圏を増やすための個体に進化する『狂化』。
この状態の個体は複数生まれやすい。その上、同種族以外には見境なく攻撃してくる。討伐優先度は高いな。」
今にもガオーと唸り出しそうな羊がポップな画風で描かれ、その上に狂化と書かれる。
「2つ目、同じく個体数が過剰に増加した時、生息圏を広げられない場合に起こる、群れを統率する個体が生まれる『群化』。
この状態の個体は中々生まれない。だが、知能が非常に高いため、かなり厄介だ。こいつとの戦いはほとんど人間同士の戦争に近い。」
次は、メガネをくいっと上げたインテリそうな羊が描かれる。どうやら、これが群化個体のイメージらしい。
「3つ目、別の魔物同士が交配することで、互いの性質を持った個体が生まれる『分化』。通常起こりえないが、群化個体が複数生まれた際、コミュニティが合わさって生まれる事があるそうだ。
キメラだとか、ハーフだとか……呼び方は色々あるが、戦闘においては前情報のない相手と戦う必要がある。充分注意することだ。」
今度は、「メー」と鳴くフワフワのドラゴンが描かれた。どうやらドラゴンと羊の合体……分化個体らしい。
(……どういうユーモア?)
しかもポップな画風で描かれているため、やけにかわいい。
「4つ目、絶滅の危機に瀕した際に、同情を誘う形態に進化する『弱化』。さっき話した事件の個体がこれだ。
この形態では、倒してきた相手の種族に自身の見た目を似せてくる。特にスライム種はこの形態になりやすいな。皆、ニュースなどで見たことがあるだろう?」
そして、練は立ち上がりスタンディングオベーションした。
「ブラボー!!ブラボー!!!」
理由は当然、そのイラストの素晴らしさだった。
カートゥーン調の羊娘の姿。日頃から神絵師だと思っていたが、本当に神絵師だったとは。
練は満足するまで拍手を続け、そのまま一礼して祈った。
「ロリコンきっしょ、」
ふと、どこからかそんな声が聞こえた。
「は?」
一瞬で沸点がMAXに到達する練だったが、そんな練を遮って授業が再開する。
「コホン!次が最後。絶滅の危機・個体数の以上増加などの非常事態から脱した場合に元の魔物の姿に戻る『純化』だ。分化以外はこの現象で元に戻る事が多いな。」
そして、分化を除いた先程描いた絵達に矢印が付けられ、いつか羊に戻ってしまう事が示された。
「ウァ…モトニモドッチャッタ……。」
「きっしょ。」
再びどこかから声が聞こえる。
「は?」
さて、ブチ切れた練を無視して授業は進む。時間がないので。
「また、純化以外の変化は複数重なって起きることもある。どれも条件が『非常事態であること』だからな。」
要は、分化個体がそのまま弱化個体に変化したり、狂化かつ群化状態の個体が生まれたり……という事らしい。
「……さて、お前らがメモを取っている間にこの……例の事件について話すぞ。」
そうして、リカートは板書をそのままにして、映像を再び垂れ幕に投影する。
「まず、このワイルド・ラムールだが、『弱化』し始めたのは、世界規模の乱獲により素材の高騰が落ち着いた頃だな。」
そして、映像に年毎のワイルド・ラムール全体数と弱化個体数のグラフが表示される。
こう見るとなるほど、最初はほとんどゼロに近かった弱化個体が、全体数が減ることに反比例して増えている事が丸わかりだった。
(……異世界にグラフって概念あるんだ。)
そりゃナナバヤシ博士のおかげでしょ。
「しかし、当時は奴隷制が大きくバッシングを受けていたせいもあって、倫理的に問題のない『クリーンな商品』として奴隷商達がこぞって『弱化』個体の買取・販売を開始したんだ。これが『弱化魔物ビジネス』の始まりだな。」
さて、どんどん倫理的に終わっている話になって来たが、700年前なんてどこもそんな状態だろう。
「初めはワイルド・ラムールの『弱化』個体のみが販売されていたが……「同じように乱獲を行えば、その他の魔物でも『弱化』個体が生まれるのでは?」……と、他の魔物も計画的乱獲が行われるようになってしまった。」
映像が進み……他の魔物が乱獲され、弱化個体がどんどん隔離されていく様子が映される。
「……勿論、倫理的に問題があるので、乱獲自体はそれぞれの国家で禁止令が出されたが、ペットを保有すること自体は禁止されないのが殆どだった。『弱化』した魔物は何者かの庇護を受けないと簡単に死んでしまうからな。」
映像には通常個体と弱化個体のステータスの差が映し出された。なるほど、全ての能力が3割程減少している事が見て取れた。
「しかし、しかしだ。何事も上手くいかないことはある……それは、とある成金貴族の家宅で初めて起きた。とある朝、貴族の1家が突然虐殺されたのだ。『弱化』したハズの魔物に。」
もちろん、成金貴族の家に護衛が居ないハズもない。要はその護衛が打ち破られる程の存在が現れたというだけだった。
「その家宅では、複数種の『弱化』魔物が愛玩動物として、何体も飼われていたそうだ。
……そして、それが悲劇の幕開けとなった。」
リカートは、少し間を置いてから話し始める。
「……結論から言うと、『狂化』『群化』『分化』『弱化』の全ての条件を満たしてしまい、未曾有の存在────魔族を生み出してしまったんだ。」(…………魔族。)
練は、過去に読んだ書籍『種族について』の内容を思い出していた。
(あの本に書かれていた内容とは少し食い違ってる気がするけど……。)
その内容を聞くに連れて、練はその内容の乖離に苦しむ事になるのだが……その最後、魔族の結末を聞いて練は全てを納得せざるを得なかった。
「この魔族が生まれた経緯だが……複数種の弱化個体の魔物を、長期間同じ空間に存在させてしまったのが原因だった。」
そうリカートが話し始めると同時、当時の飼育環境が映像で映し出される。
綺麗な服を着せられ、好きな物を食べ、抱き着いたり簡単な言葉を話すだけで褒められる。
────一見、何も問題ないように思えたが、それこそが人間の傲慢な性だった。
「閉鎖空間というストレス環境下、食料は枯渇せず、常に規則正しく与えられ、天敵である人間はこちらを殺しには来ない。
野生という牙を抜かれ、その生態も理解していない人間の思うように甘やかして育てる。それは魔物にとっては恐ろしいストレスだった。」
そして、リカートは少し間を空けて言葉を区切る。
「その負荷によって生まれた特殊進化個体、それが人類との戦争を宣言し、とある自治区を奪い取った……魔族だ。」
羊や蝙蝠や牛や豚や────数多の生物を継ぎ接ぎにした遺伝子、しかしその形状は歪ではなかった。
「………………悪魔。」
誰かが言った。そして、その言葉はまるでパズルのピースがピタリと嵌るようだった。
そうだ、悪魔だ。見るからに────見れば見るほどに────それは悪魔。それが魔族だった。
「俺は先程、魔物の進化を5種類に分けたが……この進化は分類なんぞできないと俺は思う。
これはもっと仕組み的ななにかではなく……怨念や恨み憎しみが形を成した何かなんだとな。」
ゴクリと生唾を呑む。その恐ろしさ故に、自然と。
しかし、その恐ろしい存在は…………
「しかし、この魔族だが……強くなりすぎて天敵がいなくなってしまったせいで『純化』が起こってしまい、高い知能を持つ魔物が生まれなくなって絶滅してしまった。」
まるでそれは、お化けが見間違いだと科学的に証明されてしまったかのような、悪夢は悪夢でしかない事を理解してしまったかのような…………そんな味気ない結末だった。
「一応他の人族と子を成した事によって、その血を引く子孫も残ってはいるが、血が薄くなりすぎて、今はほとんど他の人族に統合されてしまった。」
要は、全ての魔族が全ての人間を嫌っていたという訳ではないし、その怨念や恨み憎しみが形を成した何かはもう、歴史や創作の世界にしか存在しないという訳なのだ。
「因みに、因子検査を受けて魔物の因子を10%以上持っていれば、種族として魔族を名乗ることはできるぞ。」
「なんじゃそのシステム……。」
────補足────
・第一次人魔戦争
人類と魔族が13年間に渡って争い、数千万単位で死人を出した戦争。
魔族は1人で人類の兵士100人程度を同時に相手取れる力を持っていた。この値は魔族の一般兵の平均の値であるため、上位の魔族ともなればその万倍は優に殲滅できる。
当初人類は、数で劣る魔族を物量差で常に押し潰し、食料や物資を枯渇させる作戦を取っていたが、魔族は食事を採らずとも空気中の魔力だけでかなりの時間活動できるため、愚策に終わった。
中期になると、兵士は領地防衛に回して、召喚した勇者や、人類の中でも上澄みの戦闘力を持つもののみが前線に立つようになった。
しかし、戦いの中で勝手に和解したり、戦いを放棄する者が現れ、人類は常に苦境に立たされていた。
結果、魔族を人類の一種と認定し、魔族に15万平方メートルの領土を明け渡し、互いに基本不可侵とする事で和平を結んだ。
……と、基本的には知られているが、一部の国はいち早く魔族と交渉や協定を結び、戦争に参加してすらいなかった事実もある。
・第二次人魔戦争
150年間不可侵だった魔族の領土が侵攻された事が発端となって始まった戦争。ただし戦争は1年足らずで終わっており、死者は数千ほどで、規模自体は第一次よりも小さい。
人類は数十人の勇者とそれらが率いる兵士、魔族側は魔族の血を引いた者、魔族の同盟軍、魔族の盟友達がその領土を守る為に戦った。
結果、魔族軍はその領土を守る事に成功し、国際的扱いとしては集落に近かった領土には、周囲に周知される形で国の名前が付けられた。
『リベド』と。
────後書き────
さて、読んで下さりありがとうございます。HKmEこと薄明です。
だいぶ更新が滞っていたこの作品ですが、エタった訳ではございません!!実はこの1年の間、カクヨムでこの『勇者として異世界転移したけど裏切られたので錬金術師やってます!』の書き直しをいちからずーっとやっていました。
本編でスキップされたり描写がなかったものも描写しており、具体的には、練の分身がシルフィアの快復祝いで何を仕組んだのか〜とかが描写されています。
また、全体的に地の文が追加されています。序盤は特にオリジナルキャラでなりきりチャットしてる状態だったので。
あとは、伏線として分かりにくかったものはより強調したりしています。
今は63話相当まで書き終わっていて、文字数は約36万文字です。そう、この作品の半分以上ですね。63話でこれです。(多分)成長した僕の書き直しをどうぞよろしくお願いします。
Q.なろうには投稿しないのか
A.しまぁす!!でも書き直しがひと段落してからになりそう。
Q.なんでカクヨムなの?
A.友達に触発されたから。勝てないから助けて。あとPV数でお金がもらえるから。僕の財布も助けてくれ。
勇者として異世界転移したけど一瞬で裏切られたので錬金術師になりました!?/中学生の頃に書いた黒歴史小説を書き直す - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16817139556105245109




