百鬼夜行編 #14
遅刻しちゃいました……ごめんなさい!
一方、季と音子の戦況は────
「…………ちぃッ!!一体なんなんやコイツはッッ!!!!」
──まさに一方的だった。
夢幻に、無限に止めどなく幻覚の物量を生み出し続ける音子に対し、季はブォンブォンと剣を振るうだけでその全てを蹴散らす。
「あれ?数が減ってきたんじゃない?もっと沢山出してもいいんだよ?!」
「く…………!!勝手にほざいとけやボケェ!!!!」
焦りからか、生み出す幻覚のクオリティも少し落ちているように見える。
勿論実際、音子は焦っていた。
(こいつ……ハッタリやない!幻術で生み出したとはいえウチを百万数体を殺しとして、その上でこれを言っとる!!)
焦っていなければ、それが悪手であることに気が付いたかも知れない。
「そんなら、コレや。」
その悪辣で悪趣味で悪魔的行為に、季の攻撃が一瞬止まる。
「……………………は……?」
幻覚の姿を金子練の姿に変換したのだ。
それは音子の奥の手であり、
「流石に仲間姿した奴を殺──────」
神咲季の地雷でもあった。
「────………………なんでやねん。」
季の一閃で音子の幻術が崩壊すると同時、現実の季の表情に笑顔が戻る。
「冒涜だよ?それは。」
首に死神の手が掛かるような幻覚。死のイメージだ。震えてものも言えなくなりそうなそれを抑えるため、叫ぶ。
「お前は無敵かドアホ!?」
「うん!無敵だよ?練くんが私を守ってくれるから!!」
その無邪気で恐ろしい笑みは、
「…………クソ。」
音子に恐怖ではなく、
「クソクソクソクソクソッッッッ!!!!!」
「……!」
むしろ、怒りを湧き迸らせた。
「お前みたいな!!「私幸せです!」って感じの奴に負けてたまるかアホゥッッ!!!!」
ぱんッ。軽快な柏手と共に言葉を紡ぐ。新たな幻術を発動する。
「『夢幻錠・錯誤』ッッ!!!」
(なに……?この違和感……!)
ぐわわあああぁぁぁぁぁんんんんん。
音も、景色も、感覚も、何もかも。自分以外の全てが自分から遅れるような感覚。
「身体が……重いッ……?」
季が突如受けた攻撃に適応しきる前に、追い打ちをかける。
「鼠妖術────『鼠花火』ッ!!」
地を這うネズミ型の妖術。属性は爆発。そしてその目的は────
(視界を塞いでもっかい幻術をかけ直すッ!!)
しかし、その目論見は失敗に終わる。
「『招来過多・V』。」
一瞬、瞬きの瞬間に季が5人に増え、全ての妖術を素手のままにそれぞれ破壊し、その内1人が音子の鳩尾に蹴りを放つ。
「な…………にィ…………!!??」
これは幻覚じゃない。ゴロゴロと地面を転がり、血と唾液が混ざった液体を吐き出す。
(圧倒的格上+それと同じ強さの分身…………こんなん……無理ゲーやろ……?!)
「降参しなよ。そうすれば半殺しにせずに済むからさ。」
その言葉を聞いて、感じたのは安堵か、諦めか。
ごろんと地面に仰向けになり、肺の中の空気を全部吐き出す。
(あー、稼げたのは20分くらい。ウチにしては頑張った方か?命あっての物種。ここで死んだらご主人にも会えんし、これ以上頑張る意味なんか…………)
チラチラと、どうしてもチラつく。十二支のみんな、その中心にご主人がいるあの光景が。
「…………あークソッ。」
「……まだ、立ち上がるんだ。」
気付けば、また立ち上がっていた。無意味だなんて分かっているハズなのに。
不思議だ。でも不思議と悪くない気分だった。
「あぁ、なんでやろうなァ。ウチにもわからんわ。」
「何が理由でも、私の邪魔はさせない。」
「勝手に言うとけ!!死んでも足止めしたるわ!!!」
『死んでも』その言葉に嘘偽りはない。音子が操る幻術のうち、最も拘束力の強い幻術。
音子が意識を失ったことを発動条件とする、音子の意識が回復しない限り解けない幻術だ。
(『夢幻錠・凶謀殺』──ッッ!!!)
しかし、音子は死ぬことも、気絶することも、半殺しになることもなかった。
「…………遅かったか?」
その巨大すぎる背中に、思わず笑いが溢れる。
「当たり前や。死ぬ覚悟キメたウチがアホみたいやんけ。」
「…………すまない。」
さぁ隻角の牛獣人、京宮の乱入により、戦況は5vs2。依然季の有利であることに変わりはないが、
「謝んなや。こっからがクライマックスやぞ!!」
戦局は大きく変わる。
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