百鬼夜行編 #9
めっちゃ遅れました……ごめんなさい!!
相対する2人と1人、来未は煽るようにちろちろと舌を揺らし、タマモと練は互いに臨戦態勢を取る。
「へぇ。アンタがこっちに来ないなんてって感じだったけど、ガチで私たちとやり合うんだ。」
来未はため息を吐きながら髪の毛をくるくると弄り、そう言った。
「そうじゃな、何度か喧嘩した事はあるが…………今回ばかりはガチじゃ。」
「へぇ、ガチ……ね。」
そして、蛇足のように言葉を付け足した。
「アンタ、主様ラブ勢じゃなかったっけ?」
「────は?」
言葉は更に、まるで決壊したダムのように加速する。
「まさか……他のオトコができたとか。まさかオトコってその隣のヤツだったりしないわよね?いや〜やめときなさいよ。そのオトコより主様の方が────」
その言葉の波をせき止める様にしてタマモが声を荒らげる。
「いい加減黙るのじゃ!!昔っからお前のことは気に食わんと思ってたのじゃ!!」
「それは私もよ焚擁。」
(だから何もかも奪ってあげる。優位も……新しいオトコも……主様の寵愛も……全部!)
しかし、タマモは燃え上がる炎のような激情を押さえ付け、今1度冷静になる。
(私の力は未来との相性は悪くないが…………)
そこまで考え、練をチラリと見る。
(裕彩との相性を考えると、私が先に行くべき…………いいや、自分に嘘をつくのは辞めじゃ。)
「……悪いが、金子練!ここは頼むのじゃ!私は裕彩と戦いたい!!」
それは、心底から出た本音だった。結局のところ自分は悔しかったのだ。国を壊され、負けて、完膚なきまでに敗けて…………そのままでいい訳がなかったのだ。
しかし一方、金子練は動かない。
「…………。」
「……ん?どうしたんじゃ?おーい金子練〜!」
ぼぅっとした様子でただ1点、金子練が見つめているのは来未だった。
「裕彩と戦いたかったの?それは残念ねぇ。」
金子練が釘付けにされているのは、憎たらしげな表情で笑う来未の、その妖しく光る双眸だった。
「魅了。まさかこんなところでお披露目だなんてね。」
『魅了』。異性を自らの下僕へと堕とし、意のままに操るスキルだ。
「なんじゃと…………!?」
「無駄よ。そいつはもう骨抜き。私の命令に忠実な下僕と化したわ……!」
その言葉の通りになってしまったのか、タマモが手のひらで目の前を遮ったり、ビンタしたりしてみるが、練は反応を返さないままだ。
「く……こんな時にこいつ……!!」
「悔しがってもムダよ!さぁ、行きなさい!!」
さぁ、傀儡と化した練は命令に逆らえずに、タマモを襲────
「は?嫌だけど?」
──襲うことはなかった。
「………………はぁ?」
「てかこっち見んなババア!」
それどころか来未に対して敵意を丸出しにしていた。
「だ、誰が…………ッ!!!」
「何が『魅了』だ!そんなのに引っ掛かるのはフケ専だけだぜババアがよォ〜ッ!!!」
「…………何故、私の『魅了』が…………!」
来未は必死に全身が震えるほどの怒りを押さえ込み、あくまで冷静な態度をとるが、
「そろそろ小ジワが気になるんじゃねぇのかババア!!その点タマモはふかふかだし!可愛いし!なにより一途だしな!!対してお前はババア!!」
練はといえばそんな事はお構いなし、罵詈雑言のパーティ開催。
「ロリコン……!」
キラキラと、タマモは目を輝かせる。勿論、珍しくこのロリコンが良い方向で役に立っているからだ。
「俺なら断然タマモ派だね!!お前とは比較にならんわ!!ババア!!」
「な…………ななな…………?!?!!!!」
「ロリコン!!」
「よーしタマモ、ここは俺に任せろ。
……絶対負けんなよ。」
その言葉と同時、2人はハイタッチを交わす。
「じゃあの。恩に着るのじゃー。」
「……情に厚くないのは、減点ポイントかな。でもお前よりマシだババアァァァ────ッッッ!!!!!」
「『魅了』とかもうどうでもいいわ!!!!ブチ殺すぞキモカスロリコン男がァァァァァァッッッ──!!!!!!!!」
「かかってこいやババアァァァァァァ────────ッッッッ!!!!!!!!」
変幻自在の幼女至上主義vs無限進化の蛇の女王────今、戦いのゴングが鳴り響く。
「ん?あれ〜?」
一方、ルミナは1人で辺りをきょろきょろと見回していた。
いつの間にかはぐれてしまっていたらしい。
「大変なの……!!もしかしてパパたち迷子なの?!早く探してあげないと、きっと迷ってて不安なの!」
さて、そんな使命感を胸に抱きながら、駆けだそうとしたその時、ルミナの背後から声がかかる。
「君、どうしたでありますか?」
薄汚れた軍服を着た少年────にこやかで人当たりのよい少年だった。
「えっとね、パパが迷子なの!」
「何か知ってるかも」という期待を込めた目の少女に、少年は笑顔のまま応える。
「なるほど、それは大変であります。じゃあ、我が君のお父様のいる場所に連れて行くであります。」
「え?いいの!?」
「大丈夫であります。すぐに、送るであります。」
それは、一瞬だった。
「────意外と、素早い。予想外であります。」
一太刀────左腰に提げた刀での抜刀術。
ルミナが反応し、回避できたのは偶然か、それとも才能故か、もしくは…………。
「どういうことなの?」
ルミナが睨みつけてもまだ、まるで取って付けたようなその笑みを崩さず言葉を続ける。
「いやあ、きっと君のお父様はもう死────」
その続けた言葉を噛み千切るように、一瞬で龍人形態に移行したルミナの爪撃が少年を襲う。
「──嘘をつくのは、良くないことなの。」
少年は、ルミナの地雷────家族との別れを踏み抜いてしまったのだ。
「嘘をつくとバチがあたるの。」
「はは、当たるといいでありますなぁ。」
しかし平然と、少年はその貼り付けられたような表情を崩さない。
ルミナvs博苗────戦闘勃発。
いつも読んでくれてありがとうございます!
すみません!来未の名前間違えてました!




