破壊神じゃなくて錬金術師です!
「練殿は破壊神か何かなのですか?」
彼は笑顔のままそう質問した。
もし本気で練を神様だと考えるならば、こんな無粋な質問は怒りを買うだけで無意味だ。
「いいえ、ただの錬金術師です」
しかし、ここに来て日の浅い練はあまり気にしない…
というより、違和感に気付かない。
「え?錬金術師?ご冗談を言わないで下さい。さぁこれでもどうぞ」
奥の方から密封された容器が運ばれて来た。
「これなんですか?」
薄々も感づかないようで。
鈍感系主人公でも『そういうの』には敏感なんですよ?
「お酒です」「俺未成年なんですけど」「え?ご冗談を」「本当です!」「冗談は止めてください練殿」
断じてNOという意思を示す練vs絶対に酒のますジジイ。
飲酒の強要は止めよう!
「いやいや本当に止めてください、俺この子のパパなのに率先してルール破ってどうするんですか!」
The 正論ッ!これで倒れねぇアホはいねぇぜ!!
「まぁまぁ」
いたぜ。
「チキショウっ!話『終わり!』」
話そのものを錬金して話を終わらせる。
どうしてこんなことばかりに頭が回るのか…そんな事を考えても無駄だ。
「それではお疲れでしょう、宿を手配しておきます」
「疲れたのはあんたのせいだけどな…」
ボソッと呟いたつもりなのだが、
「え?なn」
ここぞとばかりに獣人の凄さを見せつける猫耳爺。
本当に、需要ないです。
「それじゃあ、さようなら〜」
否応無しに退室する。
そして、どうやら猫耳の翁の娘らしい人が
「…お疲れでしょうから、宿に」
と、宿に案内してくれたので、楽に宿に辿り着けた。
「ふぅーなんか今日一番疲れたなー」
『パパ〜!!この四角の楽しい!』
ベットの上で何度も何度も跳ね続けるルミナ。
そういえばルミナはベッドに寝るのは初めてだった。
ルミナの寝床と言えば、余った羊の毛を錬金術である程度処理したものだ。
ベット程ではないが、割と寝心地は良い。
…といっても、生後2日なのだが。
「ルミナ?ここは寝るところなんだよ」
楽しそうとは言え、流石にベットを粉砕するのは本意ではない。
彼はちょっとの常識を備えたロリコンなのだ。
『へ?そうなの?じゃあこれ一つしか無いからパパと一緒に寝ないとね!』
びゃゃゃあ゛あ゛あ゛あ゛かわい゛いよおおお
はぁはぁ…あぁ……悶え死にそう。
結局一緒に寝ました。
ずるいな。全国のロリコン諸君が黙ってないですよ?
「じゃあ『寝るか!』」
『はーい!おやすみ、パパ!』
「ふふっ…おやすみ、ルミナ」
さっきまで元気だった娘が、一瞬で寝息を立て始める。それを確認してからやっと彼は眠りに就いた。
「ふぁぁぁぁよく寝た」
(練金ちゃったぁぁぁぁ!!)
「コンマ1秒以下も寝てないのになにがよく寝ただよ!ふざけるなぁ!!俺のルミナとの時間を邪魔しやがって錬金術めぇぇぇ!とてもお世話になってます!じゃねぇだろォォォォォォォォッッッ!!!!!!!!」
ルミナは奇跡的に起きることなくスヤスヤと寝息を立ている。
「あぁ、俺頭おかしいわ……違うッ!これが平常運転だったぁ!」
ぱっちり覚めてしまった目で、今日どうやってルミナと寝るか思考する。
「あ、あの」
…女将さんに聞かれてしまった。
こうなってしまっては、この主人公、金子練の評判はガタ落ちだ。
街を救った英雄から、街を救うレベルの力を持つ変態になる。酷い差だ。
「お風呂の準備が終わりましたが入られますか?」
(優しい、異世界の人本当優しい、優しすぎて泣きそう)
「あ、はいります」
「それでは…」
そういって宿よりホテルに近いこの場所とはミスマッチな女将が下がる。
(…さてルミナは寝てるし…どうしようか?)
そこであった。
ルミナが寝ているということは、結構危ない状態なのだ。
正直、悪漢に何されるか分からないと思う。
いや、こんな可愛い子が、何もされない訳がない。
…ということで、ルミナを守る為の何かを考え…
「えっと…魔力『放出』俺以外『通すな』」
家の扉の鍵を確かめるように、しっかり『試験』をした。俺以外通すなという命令をしっかり守り、服も通さなかった。
少し調整し「これでいいか」そう呟き風呂に向かう。
「この宿のお風呂『移動』」
まるでレーザー照射地帯に裸で突っ込んだかのように、周囲の視線が突き刺さった。
「…」「…」「…」「…」「…」「…」
どこを見ても、女性。女性。女性。
完全に女風呂です。ありがとうございません。
…そして、この凍てつく視線。
弁解は無意味だと悟った。
(俺、女に『なれ!』)小声でそう言う。
学ランの上半分が膨らみ始めた。
「ちょっとまって私こんな格好してるけど女だから!」
「……なにを……言ってるの?」
そっちじゃなかった。
何故か女湯侵入以外の行動で、凍てつく視線を食らった。
「す、すいません」
そのまま着替えて風呂へと入った。
(しかし称号のロリコンの力はすごいなー全然興奮しねーや。)
事実、この風呂に居る女性は、獣人だけには止まらず、パッと見ただけでも5種族位は居た。
しかし、20人位いるのに…何処を見ようが巨乳巨乳。
それに対して、全く興奮も何もない自分。
「…ははッ!悲しくなるわ、さてと風呂に『入ろうか』。」
「ふぅーすっきりしたー」
(学習しねぇなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!!!)
やはり周りの人の視線が練に向いてる気がするが…まぁ、大丈夫だろう。
…自意識過剰って奴だ…そうに違いない…そうに違いないんだ……クソがっ…!
…スッキリしてしまったものは仕方がなく、これ以上入っていると逆上せてしまいそうだったので、風呂から上がり……何故かそこらの巨乳よりデカイ胸を学ランに無理やり押し込む。
一部の女性から舌打ちを食らった。
練のメンタルはボロボロだ。
「…ははは……ルミナの近くに『移動!』
…できない!?なら部屋の前に『移動!』」
(できたか、多分結界が機能して、俺を弾いてくれたんだな。)
正解である。結界さん有能。
「私は『通せ』」
元々錬金術で作り出した結界だ。
それなら勿論錬金術で手直しもできるだろう。
「ふう、とおれた~結構この結界ガバガバだな、ザルだ、ザルぅ〜!
…でも何でも魔法に頼るのも駄目だなぁ…」
……と、大きな胸を揺らしながら伸びをする。
まぁ、彼はそれに全く気付いていないようだが。
「なんか疲れた寝れ…るように『なれ!』
……よし、一気に…眠、気が……おやすみなさい」
そして、ベットにそのまま転がり込んだ。
「ん?朝か?…またやっちまったよ」
日本なら学校に行っていた時間だ。
習慣付けされた行動というのは、中々抜け去らないのだ。
『ん、ん~むぅ』
意外と健康志向なのか、ルミナも練とほぼ同時に起きた。
「あ、ルミナおきた?」
『ん?パパじゃなくてママ?』
反射的に自分の体を見ようと下を向くと、
『ママがパパにもどった!パパー!』
(以外とママと呼ばれるのも有りかもな…)
『パパ大好きぃー!』
うん、やっぱ可愛いは正義だわ。
「アビル様!」
「おお、エティアルかどうしたのだ?」
「それが獣人共の国に進軍していたところ最上級魔法…又はそれに準ずる何かにより我が軍は…壊滅いたしました」
「なに!最上位魔法だと!馬鹿なッ!獣人共は魔法が使えん筈だ!」
この世界の魔法のランクは初級魔法→中級魔法→上級魔法→最上級魔法→神級魔法の順に強力に成っていく…
まぁ、メ〇→メ〇ミ→メ〇ゾーマ→メ〇ガイアーみたいなもんだな分かりやすいね!
「恐らくアーティファクトを使ったのだと」
アーティファクトとは神が創りし伝説の魔道具で、その8割、いや、その10割が神の悪ふざけによって創られた代物である。
「成る程、アーティファクトか…それならあり得る話だ…
しかしながら…アーティファクトならば簡単には撃てん筈!それならば?」
「はい、この隙を突けば獣人共の国を…落とすことができるかと」
騎士団長が握り拳を小さく作る。
剣が揺れた。
「ならば、我が国の兵を招集せよ!国獲りの時間じゃぁ!」
↑急に変な言葉使いになる奴
「ハッそれでは失礼させて頂きます」
↑華麗に無視する騎士団長
「…王よ、それは本当にアヴィエラの為なのですか…?」
対照的に此方はベットに転がりながら。
「レベルが上がりました~つってうるさかったしステータスでも見ますかね」
名前:金子練
種族:人族
職業:錬金術師(+37)
装備:龍魔の胸当て(白き剣ライト 黒き剣ダークネス)
ATK:185
DEF:340(+100)
SPD:287
INT:1725
MIN:1635(+100)
DEX:2150
LUK:25
HP:3525
MP:8955
スキル:錬金術 試練 言語理解
称号:異世界人 悪戯神の加護 運動音痴 獣人を救いし者
ーーーれんくんのステ紹介のコーナーーーー
(力自慢とも言う)
なぁにこれぇ。うわぁ…俺、人間じゃねぇ!
あ、そうだライト&ダークネスは形だけ胸当てに変えてます。
こっちのほうが楽だからね…
それにしてもこの称号は?
獣人を救いし者:獣人を救った上で認められた者に与えられる称号
(運動神経がかなり良くなる)
あぁ!そういえば猫耳のおっさんの話をスキップしたな、その時か?
…でも運動神経が良くなるっていいな、運動音痴の効果を消せるのか?
「練殿ッ!」
「ウェァッ!」
異常な程の存在感を放つ猫耳。
このジジイ…はっ倒してやろうか…?
「……」「…なんですか?」
「それがまたアヴィエラ王国が我が国に攻めこんできて…お願いです!どうか我が国を救って下さい!!」
何か引っかかる。
この猫耳は『また』と言った。
「今またって言ったか?」
「はい、一回目は練殿が…」
「え?俺」「はい」「本当?」「本当です」「うっそ~」「嘘じゃないです」「え?」「いや、風の魔法剣ですぱーっと」
「えぇ…本当」「はい」
「…うっわぁ練金ちゃった」
顔を両手で押さえて膝立ちになる。
いつもやらかしてんなこいつ。
「それではもう一度お力添えを…」
何がそれではなのか一切分からないが、結構良い人な練はお願いを聞いてしまうのだ。
「仕方ないですねぇ…なんたって獣耳は異世界のロマンですからッ!!ねッ!!!」
獣耳はロマン。
そうは思わないかねっ!!
「は、はい?」
「すいません、反省しています…しかしッ!後悔はしていなぁーい!やってやろうじゃないですか!」
異世界はお前を呼び込んだ事を後悔しているぞ?
「は、はい…」
かなり困惑気味に返事をする。
やはり今までの人達は、偶然スルースキルが高かったのだと理解した。
(うっわぁ絶対引かれたね…まぁいいか)
そして、何故か振り向き、襟を正してこう言った。
「さぁて防衛戦、始めますか!ケモ耳ロリっ娘を守る為にッ!」
ソレが本音か。
見てくれてありがとうございます!
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ーーーが、更に文章を変更しました。