百鬼夜行編 #5
ちょっと遅れました……ゆるして!!
バタバタと城の中が騒がしくなり始めた。タマモの号令に従い、続々と並べれられる馬車たち。
一方、対照的なのはこのタマモの部屋だ。脚を組んでソファに座るタマモを筆頭に、瑛理、練達一行はすっかりそれぞれリラックスしていた。
「…………っても、なんで馬車なんかで移動するんだ?もっと良い移動手段があるだろう?」
そんな他愛もない、だからこそ確信めいた疑問を練はタマモにぶつけた。
すると、帰ってきた返答は意外にもそれに賛同するものだった。
「うむ、確かに移動の速さに関して馬車は、お世辞にも速いとは言い難い。
極論じゃが、速さに関しては転移魔法にはどう足掻いても勝てんしな。」
「じゃあなんでなんだ?外の景色を楽しむ為って訳じゃないんだろう?」
「それは……来れば分かるのじゃ。」
準備が済んだという連絡を受けて、タマモは練達に「着いてくるように」と指で示した。
勿論、戦闘区域に連れて行くのは危険だという判断され、瑛理はお留守番だ。
……さて、タマモに着いていった先にあったのは、紫の布で申し訳程度の装飾をされた、普通……否、最早質素な馬車だった。
「…………?ただの馬車っぽいけど。」
「だからこそ、じゃ。」
そう含みを持たせるようにタマモが言うと、王と王女で通じ合うものがあるのか、シルフィアがその意を汲み取り、
「なるほど、奇襲を仕掛けるつもりですね。」
というと、タマモは「お前分かっとるやん……?」みたいなドヤ顔をして頷くのだった。
「その通り。」
「なるほど、普通の馬車に紛れて侵入するってことだね。」
「シンプルイズベスト……ってわけだ!」
「シンプルなの〜!」
「うむ、それが1つ目の理由じゃ。」
「……じゃあ2つ目は?」
「あぁ、それは────」
と、言葉を言い切る前にタマモは馬車の側面──少し不自然な場所に付けられた引き戸を開いた。
「──中で聞くのじゃ。」
その引き戸が完全に開いた瞬間、突如空気の渦が発生した。
「え?うわっ!?」
その渦は、まるで永遠に吸引力が落ちない掃除機の如く、その場にいた全員を吸い込み────
「うわああああああぁぁぁぁぁぁ────ッッッ!!!!!」
謎のお座敷の小部屋へとご案内した。
着地地点には丁寧に座布団が積み上げられていたが、一番に着地した練はその他全員の下敷きになったため、あまりその恩恵を感じられなかった。
「どうじゃ?外界からは完全に遮断された正真正銘の個室は!完全に無振動だから絶対に酔わない!完璧な乗り心地の馬車なのじゃ!!」
「……入り心地はもうちょい何とかならなかったのか?」
「たまにしか使わないんでな、貴様らには『今回だけ』と割り切って貰うのじゃ。」
さて、積み上げられた座布団を机に対して均等に並べ、それぞれが座り込んだ後、初めに口を開いたのは練だった。
「……で?こんな不便な乗り方しか出来ない馬車に俺達を乗せた理由は?」
すると、それを聞いたタマモは小窓をパタンと閉じ、年柄にもなく────否、見た目相応のテンションで、
「内緒バナシ……じゃ♪」
そう言って意地悪そうに笑った。
「…………まさか、内通者を疑っているんですか?」
「『念には念を〜』という言葉があるくらいじゃ。それくらいは想定しておかなければな。」
しぃん。部屋が一気に静まる。これから始まるのが戦いだと、ようやっと理解したのだ。
「……というわけで、じゃ。」
タマモはパンパンと、掌を叩いて静寂を打ち破る。
「目的地に到着するまで2時間。
敵の特徴についてはさっき説明した通りで、次は我々の能力について情報を交換したいのじゃが。」
そう、楽しい楽しいミーティングの始まりだ。
「じゃあ私から────」
シルフィア──最凶の魔法使いの証『魔導記憶』を使いこなす万能の魔法使い!
神咲季──最凶の脳筋!本気の強攻撃で銀河が消滅するぞ!!
ルミナ──かわいい!!かわいいかわいいかわいい!!!!
金子練──剣達と合体して戦うぞ!すごく強い!!
タマモ──神降ろしをして戦うぞ!!ちなみに神降ろしには神様の私物を触媒にする必要があるぞ!!
──というように、それぞれの長所や短所、得意技について話し合ったのだった。
その結論。
「…………お前ら強すぎんか?」
タマモは頭を抱えた。確かにやり過ぎだと思う。
「世界を救った英雄とかわいい仲間たちだぞ?
そりゃ強いだろ。」
「……正直相性もへったくれもないのじゃ。ぶっ壊れチーター共が!!!」
「そんなに言う?」
「正直に言うと我々十二支の中でタイマン張って勝てるのは辰か虎くらいじゃろうなぁ。」
あの頃は良かった……とでも言うように遠くの空(天井)を眺めるタマモ。
「それでも…………」
ふと、季が思い出すのは、さっき戦った『鬼』とその『眼』。
シルフィアも同じ事を考えていたらしく、
「……あの『眼』を使われたら。やばいですね。」
と続けた。
一方、練はといえば呑気にゴロゴロしていた。
「……まぁ、その『眼』とやらは置いておいて……その『辰』とやらも今回は居ないんだろ?じゃあ余裕かもな〜。」
そう、戦力差は歴然。助っ人が強すぎてこちらが圧勝。
「…………だといいんじゃが。」
しかし、獣の本能だろうか。嫌な予感がタマモの胸の中を占める。
「……そんなに心配なら、こいつをやるよ。」
そんなタマモを心配してか、練が掌サイズの何かをタマモに手渡す。
「……?なんじゃこれ。」
「幸運の御守り、特別に世界を救った英雄の加護付きだ。」
なるほど、確かにヘッタクソな字で『お守り』と書かれている。
普段ならこんなゴミは当然ゴミ箱に直行だが、今は藁でも縋りたい気分だったので、懐に仕舞ってやることにした。
「ふ〜ん……ありがたく貰っ────」
その瞬間、外界から断絶されているハズの小部屋が大きく揺れた。
つまりそれはは馬車に何か異常が発生した事を意味していた。
「おい!!これの何処が幸運の御守りなんじゃ!!?」
「うーん……災い転じて福となすって言葉があってな?」
「ちぃっ!話にならん。とりあえず出口を壊されるのはマズい、外に出るぞッ!!」
振動に身体を大きく揺らしつつも、タマモは引き戸を開く。
その瞬間、弾かれるように5人は馬車の外へ飛び出した。
「……んぁ?オイオイ……お前焚擁か!?なんッだよちゃんと生きてんじゃねぇか。裕彩のやつ俺にウソつきやがって……。」
聞き覚えのある声だった。少しアホっぽいが、ド真ん中に1本の芯がある。
そんな声と顔が一致する。
「…………大駕……!!」
「焚擁、聞いたぜ。お前がご主人を裏切ったこと。残念だが、もうご主人復活まで1時間もねぇらしいぜ?
ま、どうしても俺ら止めたいってんなら、登ってきな。」
そう言って…………150階はあるだろうか、雲を突くような高さの塔、その壁面を駆け上がる。
それと同時、ワラワラと兵士達が塔から次々に現れる。
「上等じゃ。お前ら全員ぶちのめしてやるのじゃ!!!」
さぁ、世界一壮大な喧嘩の始まりだ。
いつも読んでくれてありがとうございます!!!!!!




