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百鬼夜行編 #1

タマモが起きた事は、練の爆音の叫び声によってたちまち建物中に広まった。

それと同時に人がわらわらとタマモに群がり、各々口々に「心配した」だの「身体は大丈夫か」だのを口にしたが、タマモにとってそれは騒音でしかなかった。


「だー!!うるっさいのじゃ!!1人ずつ喋れんのか!?」


その騒がしさが一瞬止んだとき、


「タマちゃん!」


そうタマモを呼ぶ声があった。


「……瑛理。すまんな、心配をかけたのじゃ。」


長い間泣いていたのだろう、瑛理の目の周りは真っ赤に腫れていた。

そしてタマモは、そんな瑛理をあやすような形で抱擁したのだった。


「本当だよ……タマちゃんが二度と起きなかったら僕……どうしようって…………!!」


「おややぁ、感動的だねぇ。」


そんな感動の空気を突っ切るように、声の主は部屋の扉を開け放った。


「この声、まさか……。」


その声を聞いた途端、タマモの表情が一転する。


「いや〜かつての仲間が息を吹き返してくれて、おばさんは嬉しいよぉ。」


自らを『おばさん』と称する作業着の女の登場に、タマモは思わず息を飲んだ。


「さ、佐来(さくる)……!?どうしてここに……!」


「おややぁ、命の恩人に向かってひどいねぇ。」


そう言って佐来はトントンと胸を指し示した。

それと同時にタマモは、裕彩の攻撃を受けて心臓ごと胸を抉られたことを思い出した。


「恩人……?まさかこの心臓はお前が…………厄介な奴に借りを作ったのじゃ……。」


「ま、その心臓が間に合ったのはあっちの3人のおかげだけどねぇ。

……本当にギリギリだったよぉ?」


すると、タマモは自分の頬を掻き「あーなんじゃ、その──」そして、こっ恥ずかしさに緩む表情を引き締めて言った。


「……礼を言うのじゃ。金子練、シルフィア、季…………ありがと。」


しかし、最後の最後に恥ずかしさが勝り、ぷいとそっぽを向いてモゴモゴお礼を言うこととなった。


「「「かわ…………ッ!!」」」


ちなみに可愛すぎた。


「うるっさいのじゃ!!!」


「おややぁ?おばさんには何もなし、なのかねぇ?」


そして、それを見た佐来は自分を指差してニヤニヤしながらそう言った。

その様はまるで親戚のおばさんだった。

それを受けて、タマモは溜息混じりに言葉を続けた。


「……お前が私の所に来たという事は、どーせ何か面倒な頼み事があるんじゃろう?内容次第で手伝ってやる。それで貸し借りはチャラじゃ。」


「おややぁ……バレてたか。」


──と、後ろの方で何やら騒がしいバカの声が上がっていた。


「はいはいはい!!!!!俺も!!俺も頼み事がいい!!」


それはもちろん金子練である。


「アホ!!絶ッッッッ対お断りじゃ!!!」


そしてもちろんお断りである。


「なんで??!!!!」


ただをこねる子供のように喚く練にビシッと指をさして、タマモは怒鳴った。


「お前が手に持ってるメイド服(欲望)が答えじゃアホ!!」


とは言うが、練の持っているメイド服は一般的なメイドカフェで使われるようなメイド服ではなく、安全安心信頼のクラシカルメイド服。

(欲望…………?)練はそう訝しんだ。


「いやいや!!ケモ耳にはメイド服(諸説あり)だろうが!!???」


更に練は逆ギレしてそう言い放つ。

その時、とある人物の鶴の一声がこの不毛な争いを止めた。


「じゃじゃぁーん、代わりにおばさんが着てあげたよぉ。」


怖いもの見たさという言葉があるように、人間の好奇心とは恐ろしいものである。

壊れたブリキ人形のような挙動で、練が振り向いた先にはおばさん────佐来の、いわゆる一般的メイドカフェのメイド服姿があった。

作業服の上からは想像も出来ないほど大きく実ったたわわと、少し油断気味のお腹がチラリ────


「──ヴォエッ!!ヴォォォ……。」


そしてそれは、練の精神に的確なダメージを与えたのだった。


「おややぁ、おばさんは嫌いかい?」


「うん!嫌い!」


「おややぁ、嫌われちゃったぁ。タマモの友人だから老け専だと思ったんだけど。」


「は?タマモはロリだが??」


この一瞬で何人が貶されたのだろうか。

その報いを受けるが如く、練の顔面で爆発が起きた。


「誰がロリじゃあ!!誰がババアじゃあ!!誰がぁ!!!」


その爆発の正体はタマモの放った魔法だった。

一瞬にして練の髪型をアフロに変え、更に地団駄を踏み鳴らす暴れん坊っぷりはむしろ微笑ましいことこの上なかった。


「おややぁ、タマモぉ。元気だねぇ。」


「なぁに人の友達を勝手に口説いてるのじゃぁ!!!あとババア違う!!」


「ふふ、スペアは幾つあってもいいからね。」


「なんのスペアじゃ!!」


「ん?オトコ。」


さて、聞き捨てない内容になり始めた会話に割って入るのはこの男〜〜ッ!


「おいおい……こんなおばさんにオトコ?はぁ〜〜ん?」


金子練!!帰れ〜〜ッ!!


「おややぁ、おばさんはスゴいんだよぉ?」


「シワが?」


「テクが。」


「ハハッ。冗談は年齢だけにしとけよババア。」


さぁ収集がつかなくなり始めたその瞬間、扉が勢いよく開け放たれた。


「パパ〜!!!」


「わァッ!!ルミナァァッ!!!!」


両手を広げ、ルミナを受け止めようと画策する練。しかし、その表情は笑顔から一変。苦悶の表情を浮かべることとなる。


「グゲェェェッッッッ!!!!!」


練の首にルミナの神速ラリアットが炸裂したのだ。更にそのまま腕と脚で首を挟み込み、絞め技へとシームレスに移行した。


「人に迷惑かけちゃダメッ!!」


「ご、ごべ…………ギブギブギブ!!!!!」


「おややぁ……大変だねぇ。」


「自業自得じゃな。」


…………と、


「……あ、終わりましたか?」


そうライトが言い、続けてシルフィアが、


「大切な話があるんですよね?お兄様が静かなうちに話しちゃいましょう。」


そう言って魔法で展開していた4人用のボードゲームを片付ける。

なんと、練が騒ぎまくっていた間、ダーク、ライト、季、シルフィアの4人はボードゲームで白熱バトルを繰り広げていたのだ。


「…………なんか、不憫じゃな。」


「お兄ちゃんが静かにならないと話が始まらないから……。」


そう愚痴るようにダークが呟き、


「練くんが悪いんだよ?」


垣間見える季ちゃんの闇。まぁ、この闇を育てたのは金子練だという見方もあるが、当の本人は自覚していないようで、


「ひでぇ。」


と、ルミナの下敷きになりながら呟いていた。

そして、完全にツッコミを放棄したタマモが改めて佐来に問う。


「それで、頼み事ってのはなんなのじゃ?」


「あぁ────『百鬼夜行』について。」


「奇遇じゃな。丁度その話をしたいと思っていたところじゃ。」

いつも読んでくれてありがとうございます!!


(追記)誤字発見したので直しときました。

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