裕彩とタマモと百鬼夜行
遅れました……ごめんなさい!!
「燃えろ……ハートビート!!」
タマモが足を踏み鳴らす瞬間、更に幾つもの火柱が更に地を割り、2人を囲い込む。
その大規模な魔法に裕彩も思わず声を漏らす。
「これだけの炎を詠唱なしで一瞬……。」
そう呆気に取られるのも束の間、
「『灼炎・スパークル』!!!」
次々に火柱が渦を巻き、裕彩に襲いかかる。
「『神降ろし』……やっぱりすごい。」
そう言いつつも火柱は氷雪に阻まれ、裕彩には一切届いていない。
たらり、冷や汗がタマモの額を撫でる。
「褒めても炎ぐらいしか出ないのじゃ!!」
より激しく、より熱烈に炎が燃え上がり、裕彩に襲いかかるが、冷ややかな表情が崩れることはなかった。
「……なんのつもりじゃ。」
圧倒的差を見せつけられて、思わず口にしたその言葉。
「なにが。」
裕彩はあくまでシラを切るが、遂にタマモが叫んだ。
「お前、私を傷付けないように戦ってるじゃろ。一体何が目的なのじゃ!!」
「勧誘。」
裕彩は息をつく暇もなく、むしろ食い気味にそう言った。
「!?」
予想だにしない言葉を浴びせられ、思わず固まるタマモに、裕彩はまるで畳み掛けるように次の言葉をかける。
「焚擁、『百鬼夜行』においでよ。わたしたちでご主人様を蘇らせよう。」
それは、あまりに突拍子のない言葉だった。
「ご主人様……を…………?」
「さぁ、はやく。」
ほんの少し前のタマモなら、その問いに一切の思慮は必要なかった。
「わ……わたしは…………。」
しかし、タマモは知っている。主人の魂が地球へと還り、幸せな人生を送ろうとしているという可能性を。故に、ほんの数秒だけの葛藤。
「……そう。ならいい。」
対して、裕彩に一切の躊躇などなかった。
「そこで迷うような奴はいらない。」
味方でないなら排除する。そう言わんばかりの殺意に、タマモは目を見開いた。
その次の瞬間、裕彩の両手のひらからぞろぞろと白いうさぎが湧き出てくる。
「くっ……『ステージ・オン・ファイア』っ!!」
大量の火柱でうさぎの軍団を遮ろうとするが、
「喰らえ。『逝餓戯』。」
その火柱達に次々と孔ができる。
その孔からうじゃうじゃと、次から次へとうさぎが這い出てくる。
「私の雪はマイナスエネルギーの塊……触れるもののエネルギーを全て喰らい尽くす。」
(ふ、防ぎ切れな……!!?)
絶望のあまり、タマモがへたりこんだその時、燃え盛る炎の壁を突き破り、現れたのだ。
「錬金術……!!」
そう、鬼畜でロリコンな錬金術師が!
「『包め』ッ!」
瞬間、どぷり。まるで沼のようにうさぎ達の身体が地面に沈み、そのまま全身を包み込んでいく。
……そして、一言。
「『穿け』。」
そのまま地面に体を貫かれ、うさぎは周囲約1メートルの空間を巻き込み、共に消滅した。
そのデタラメな光景を見て、裕彩は溜息を吐いて踵を帰した。
「……錬金術師……なかなか厄介な相手。」
そのまま、生き残ったうさぎで火柱をこじ開けてその場をゆっくりと去る。
「ま、待てっ!どこに行くのじゃ!?」
膝を突いた姿勢のまま、裕彩に手を伸ばして言う。
すると、裕彩はチラリとだけ振り向いて、やけに哀しそうな瞳で言った。
「じゃあね焚擁。」
ひやり、背筋が凍る。
「…………え……?」
……ドスン。それは、とても人が倒れたとは思えない音だった。
すぐに練が異変に気付くが、時すでに遅し。
「……タマモ?タマモッ!!!」
すぐに駆け寄りゆっくりと体を起こす。
「…………ッ!」
左胸に拳大の風穴。心臓を半分以上抉られている…………直感で分かった、もう助からないと。
(あー、こりゃだめなのじゃ…………確実に死ぬな。私。)
「カフ……ッ!?ガホッ!!ガホッ!!」
口から血が止めどなく溢れ出る。それに伴い、視界も意識もどんどんとぼやけていく。
「ふ、ざけ……!!!『治れ』ッ!!『治れ』ッ!!」
必死に錬金術を発動するが、傷口が凍っているせいだろう、錬金術が発動した感覚だけが繰り返され、いつまで経っても結果に辿り着けない。
(……こいつ、もしかして泣いてるのじゃ?
……バカじゃのう。バカじゃのう。大した接点もないのに。)
「俺がもっとしっかりしていれば…………!!!」
もっと周囲を警戒していれば、もっと治療能力を鍛えていれば────浮かぶ『たられば』にはキリがない。しかし、目の前の命はゆっくりと、しかし容赦なく冷たくなっていく。
(ちがう、私がわるいのじゃ。私が、わたしばっかりがごしゅじんさまをひとりじめに────)
フッ。燃え盛っていた火柱が消えた瞬間、シルフィアと季が練に駆け寄り、
「お兄様!一体どうし…………!?」
「練……くん……これは…………!?」
同時に息を呑んだ。
「……シルフィア……季ちゃん……助けてくれ!俺じゃあどうしようもないんだ……!!」
情けなく、涙を流しながらそう懇願する練の姿と、血塗れになり、力無く練の腕にもたれ掛かるタマモの姿。
「練くん…………。」
(心臓を抉られてる……これじゃどうやっても……!!)
季はそう心の中で呟き俯いたが、シルフィアは違った。
「……治療開始します。」
無詠唱で魔法を発動。周辺を殺菌し、魔導記憶を発動する。
「シルフィアちゃん。」
季が暗に「助からない」と、そう諭すが、シルフィアは首を振る。
「魔法に、不可能はありません!」
考えなくても、目を見れば分かる。こうなったシルフィアは止まらない。
「分かった。指示を指示をちょうだい。」
流石に観念した季は、少し目を閉じた後、首を縦に降りそう言った。
「……ありがとうございます。」
そう言った後シルフィアは、テキパキと手を動かしながら、2人に的確な指示を出した。
「私は、凍った傷口を溶かしてみます。お兄様はそのまま錬金術を使い続けて下さい。」
「……わかった!」
「季ちゃんは『遅延』をお願いします!」
「……うん!」
「『死ぬな』……絶対に『死ぬな』よ…………タマモ!!!」
──チカチカと、遠くに見える光が目障りだった。
その光がこちらに近づくにつれ、その光が音を発しているのに気づいた。
(なんじゃ……もう、五月蝿い…………。)
ふと、自分の身体が揺らされている事に気付き、鬱陶しさのあまり、遂に目を開けた。
「…………──。大丈夫?──。」
……そこにいたのは。大好きな、大好きなお母さんでした。
「…………夢を見てた。すっごく長い夢。」
私は夢を見ていました。
……お母さんがしんで。運命の人がたすけてくれて。友達にころされる。そんな、とても非道く、楽しい、長い夢でした。
いつも読んでくれてありがとうございます!!
さぁ、クリスマスですよね!!アイムぼっちwww悲しくなったので、明日あたりにクリスマス番外編をやります!!……やります。




