『眼』
もちべ〜!
数瞬の拮抗状態は簡単に破られる。
季が後ろに跳ねた瞬間、何十回と空間が爆発を起こす。
「むぅ……先程の妖術遣いか!」
「魔法使いですよ……その証拠に、魔法みたいな体験を貴方にあげます!」
魔導記憶を回し、選び取るその魔法は、
「……ッ!!面妖な…………!!」
季がひとり、またひとりと生み出され、遂には合計5人目の季が現れた。
「取り敢えず……突撃ですっ!」
その号令を受けて季軍団が剛哃へと突撃をかける。
「ヌオォォォォッッ!!!」
幻惑の類いと踏んでか、それらを横凪に一閃しようとするが、最前列の季がそれを受け止め、その他の季が剛哃の身体を斬り裂く。
「ヌゥッ……グゥゥゥ…………!!」
思わず膝を突く程の重い斬撃に言葉を洩らす。
「『D・C・Y』。全部本物です!!」
それは、魔力により対象とそっくりの肉体構造を持つ分身を創り出す魔法。最早創造神の御業だ。
「……強いですが、思ったよりも手応えがありませんね。」
「あのとき感じたプレッシャーは一体…………?」
思い思いそれぞれそう呟く。
…………その瞬間だった。
「「…………!??」」
また、あの雰囲気だ。心臓を小刀でなぞられるようなあの雰囲気だ。
「…………むぅ……!かくなる上は……主人より賜わった力を!!」
そして、剛哃は左眼を覆う眼帯を引きちぎった。
……瞬間、戦況は一変する。
「……!?左眼────」
驚く暇もなく、横凪。
「────ッッッ!!?」
一瞬にして分身は全て霧散し、季は街が豆粒サイズに見えるほどの距離まで吹き飛ばされる。
「と、季ちゃん!?」
信じられない。ここに来て初めてシルフィアが焦りの表情を見せる。
「く……この力は…………?!!」
十中八九、あの不気味に青く蠢く左眼が関連していると、そしてあのおどろおどろしい雰囲気はあの眼が放っていたものだと、理解する。
「フン……悪いがこちらも手段は選んで居られないのでな…………!!」
「くっ……ならこっちも出し惜しみは無しです!!」
魔導記憶を掴んで全力で回転させ、逆の手でその表面をなぞり、魔法発動の条件を一気に満たす。
「『魔導記憶・全弾発射』ッ!!!」
攻撃系の魔法の全て。あらゆる魔法を余すことなくその巨体へと放つ。
「……はぁ……はぁ…………!どうですか……?」
しかし、その砂煙が晴れた時、その鬼は五体満足でそこに立っていた。
「嘘…………」
それはただの平手打ちだった。
「────ッッ!!?」
しかし、精巧に作られたシルフィアの結界を悠々と破壊し、まるで塵を払うように風圧だけでシルフィアを吹き飛ばした。
「やはり虚しいな、この力は。」
そう独り呟き、鬼は跳躍して2人を追撃する。
その表情はまさに鬼────武人の面影はどこにもなかった。
いつも読んでくれてありがとうございます!!
特殊な眼ってかっこいいですよね!!写○眼とか輪○眼とか白○とか!!!ナ○トばっかじゃねえか!!




