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勇者として異世界転移したけど裏切られたので錬金術師やってます!  作者: HKmE
目眩く時空の消失=ロスト・クロノス編
374/438

番外編 タマモは出逢う。

来たぜ番外編!!今回はたまも!!

──それは、唐突だった。

普段どおり、城でゴロゴロと──勿論タマモは小国とはいえ国のトップなので、ある程度の雑務をこなした後だったが、タマモと瑛理はゲームをしたり、雑談をしたり。

つまりは思い付きのまま過ごしていた。

すると突然、


「ねぇねぇ、タマちゃん。」


「ん?どうしたのじゃ?」


その言葉は当然思い付きの産物だった。

そして彼女も兄と同じく、そんな思い付きの一言でその場をまるで竜巻が如く掻き乱す事ができる人間だという事を、タマモは思い知らされる事になる。


「日本、来てみない?」


タマモは絶句した。勿論、驚きもあったがそれ以上に。


「日本────」


ふと、考えがチラつく。

(もしかして……私のご主人様のことを気遣って?)

結局、その考えを言葉にはせず、タマモは


「……唐突じゃな。」


とだけ言葉にした。

──これは、アビスを倒した後の話だが、世界全体にとあるアナウンスが放送された。

曰く、「転生者の魂は全て開放され、地球に還った。」

概ねそんな内容の放送で、この異世界に住む全ての人間……勿論瑛理も知っている事だった。


「そうかな?僕だけがタマモちゃんの故郷の世界を見てるのは、なんかズルい気がしちゃってさ。」


「ズルい……か。」


ふと、タマモは故郷を思い出す。


(故郷…………私の()()()故郷は──)


厳粛で、規律正しく…………そしてどこか冷たい。


(────お世辞にもこんなに良い所ではなかったのじゃ。)


唯一の救いでもあった母の輪郭ごと、故郷の情景を記憶の奥へと葬る。


(でなければ今頃こんな所には居ないのじゃ。)


そんなタマモの陰鬱とした内心を汲み取ってか、更に瑛理が言葉を続ける。


「というか!見せたかったんだ。僕達の世界にも楽しい事は沢山あるんだよって!僕達の世界だって、この世界に負けてなんかないんだぜってさ!

魔法がない代わりに魔法みたいなことがいっぱいあるんだよ。例えば────」


瑛理が話すその思い出達は、鋭利な刃物が如く、タマモの心を切り開いた。


「……そこまで言うなら仕方ないのじゃ。」


実際、そう言ったのは自らの主人の故郷を見たいと、そう思ったのは事実だったが、それ以上に、


「私は瑛理の友達じゃからな。」


それ以前にタマモは瑛理の友達。実際、それ以外の理由はあんまり必要ではないのだ。


──そんなこんなで二人は日本へとやってきた訳だが、日本に渡る上で、印象的な狐耳と尻尾を隠す為に瑛理がタマモをコーディネートした訳だが。

選ばれたのは、ニット帽にオーバーサイズのパーカー、膝下まであるゆったりとしたスカートだ。


「地味じゃな。」


「うーん……女のコのコーディネートって難しいや。

女子力のなさを痛感させられちゃうね……。」


実際、ボーイッシュな瑛理のクローゼットから『スカート』という衣類は片手の指で数えられる程しかなく、耳を隠す為のニット帽も男物のデザインだし、今選んだ尻尾を包み隠す為のスカートも、母のクローゼットから拝借したものだった。


「これなら着物を持ってきた方が…………。」


「いやそれは絶対目立っちゃうって!

今日だけ我慢して欲しいな。お願い!」


「むぅ……仕方ないのじゃ。」


──という事があり、二人は数分程度電車に揺られ、別の街にまで来ていた。

そして、玲音の話していた目的の店……喫茶店にまで来ていたのだが。


「……そういう訳でじゃ。」


タマモが大きく息を吐いて言う。


「──────は?」


「スターバーストアイスクリーム!!ディィィィヤァァァァ!!!!!」


「フハハハハハハハハハ!!!!!!お待たせしたな!!滅びのスターバーストアイスクリーム!!!!!!セットだッ!!!!」


ドンッ★という効果音と共にコーヒーとアイスがテーブルに置かれる。

湯気ともに芳醇な香りが広がるコーヒーとは対極的に、白い冷気を放出するアイスは荘厳な雰囲気を漂わせる程に巨大だった。

……そして、


「………………は?」


今度は瑛理の顔を見て言った。


「えへへ……。」


──ここは色々テンションがおかしい事で有名な喫茶店、『スターバースト』。略してバスト。もしくはス○バ。

一応喫茶店なのだが…………。


「いや『えへへ』じゃないじゃろ。おかしいじゃろ。なんで真っ先に連れて来たのがここなんじゃ。

いいのじゃ?私の日本の第一印象これになるんじゃぞ?ホントに良いと思ってここにきたのじゃ?嫌がらせとかじゃないのじゃ?私嫌われてないのじゃ??」


段々と卑屈になり始めるタマモ。

そして一方そう問い詰められた瑛理は、


「えと、その……一人で入る勇気が出なくて…………。」


もじもじとそう言いながら頬を赤らめた。

しかし、タマモは追撃の手を止めない。


「まさか最初からこの喫茶店に入る為だけに私を異世界(あっち)から連れて来たのじゃ?」


「ギクッ……!」


「……図星じゃな。

全く……友達が居らん訳ではないんじゃろ?その友達と来るとか、やりようは幾らでもあったろうに。」


タマモの態度は、正に「呆れた」と言外に示すようだった。

しかし、瑛理の社交性をよく知っているタマモは不思議に思った。

同級生の友人は両手の指で数え切れないほどいるだろう。適当にその中から見繕って来ればよかったのに。

『ここに居るのは私でなくてもよい。』つまりタマモはそう邪推したのだ。


「いや……。」


しかし、帰ってきたのは意外な答えで、


「僕ってクラブの後輩から結構クールなイメージ持たれてるらしくて、前こういうとこ友達と行ったらさ、『瑛理先輩って結構ミーハーなんですね。』……って後輩から言われてさ……。」


「……え、こわ。」


なるほど、社交性が高過ぎても困る事はあるのか。

それはタマモにとって新しい価値観だった。


「そうなんだよね〜。

だから、タマちゃんだけだよ。僕とこんな所来れるの。」


いや瑛理(コイツ)、社交性が高いんじゃないわ。ただの天然タラシなだけだったわ。


「……そうか。それは〜なんというか……よかったのじゃ。」


実際、瑛理の微笑みを不意に受けたタマモは頬を赤らめ、照れ隠しに顔を逸らす。


「あはは!照れてる〜!」


「う、うるさいのじゃ!!そんなことよりさっさとアイス食べて、他の場所も見て回るのじゃ!」


「はいはーい……ん?」


ふと、違和感に気付く。


「ちょっとこれ……硬くない?というか硬すぎじゃない?」


普通冷凍庫から出したてのアイスでも、金属製のスプーンで突けば、少しは先が沈むなり溶けるなりする筈だが、このアイスは違う。

スプーンをぶつけたとき、バーストしないベ○ブレードがぶつかり合うみたいな音がしたのだ。


「ねぇ、タマちゃ…………。」


……と、の方を向き直した瑛理がフリーズする。

アイスだけに。


「ふがふがふが……。」


恐らく、照れ隠しの為にアイスを一気に頬張ったのだろう。


「いやそうはならんやろ。」


そのアイスは実際見た目は可愛らしいので、噛み切れないほど硬いとは思わなかったらしい。

結構ヤバめな領域までアイスを喉に突っ込んでしまっている。

具体的には涙目になるくらい。


「フフ…これぞ最強の殺人コンボ!!」


「食ってもいいアイスなんてヌルすぎるぜ。」


おい店員、お店としてどうなんだその対応は。


「……アホなのかな?」


「ふぅん。当店のアイスクリームには専用のコーヒー、ドリンクをかけてお召し上がり下さい。」


確かに、明らかに飲めそうな温度じゃなかったので、飲むのを後回しにしていたが、


「それは先に言ってよ!」


実際気付く訳もなく、初見殺しもいいところだ。


「そんなの、ネットで攻略法を調べながらゲームをするのと一緒じゃないか。」


「デザートに謎解きアドベンチャー要素はいらないと思うよ!?」


ふと、タマモがふがふがとアイスを咥えたまま呟く。


「ひ……『狐火(ひふねひ)』……。」


どうやら、入れ歯の外れたご年配の方のような発音でも魔法は問題なく機能するらしく、豆電球よりも小さな灯りがタマモの口腔を照らし、大玉のアイスを僅かに融かす。


「む…………ぷはっ!危なかったのじゃ……。」


「タマモちゃん。よかった、大丈夫だった?」


そう言いながら覗き込んだ。

その表情は、


「いや最悪じゃよ!!ずっと頭キーンなりっぱなしじゃったわ!!」


言葉の通り、最悪。

それは目も逆ハの字に吊り上がる程(本物のキツネっぽくてちょっとかわいい)だった。


「ごめん、僕がこんなところ連れてこなきゃ……。」


だが、タマモの表情は『最悪』とは真逆の晴れ晴れとした晴天のような笑顔に変わる。


「……しかし、アイスの味は認めてやらんこともないのじゃ。

日本は良い所じゃな、瑛理!」


それは、紛れも濁りもない本音で、

それは、瑛理の迷いも後悔も、その全部をいとも簡単に吹き飛ばした。


「……!でしょ?これ食べ終わったら、もっと楽しい所に連れてってあげるからね!」


そこからはもう、まるで飛ぶように、まるで湯水のように時間が過ぎた。

ゲームセンターで対戦ゲームをした。瑛理の圧勝だった。

コインゲームをした。タマモがジャックポットを当てて、帰る迄に使い切れるか不安になった。

プリクラも撮った。目が盛られ過ぎて笑った。

駅を乗り継いで着物屋にも行った。試着を我慢していたタマモが印象的だった。

そして、タマモが楽しみにしていた遊園地は流石にまた今度になったが、


「ふぅ〜満足じゃ。」


その表情だけで、瑛理も満足だった。


「それじゃあ、また来てくれる……?」


「それは……。」


どうしようか。だなんて言おうとしたその時、カランコロンと、そんな音がした。

それは、タマモにとって聴き慣れない音だったが、瑛理は直ぐに気付く。


「あっ、幼児(子ども)用のおもちゃだ。

落としちゃったのかな。」


瑛理の言う通り、音の正体はタマモの足元に転がる玩具だった。

続けてガラガラという音を鳴らしながら、落とし物の持ち主らしい母親が、子どもを乗せたバギーをこちらに推し進めるのが見えた。


「すみません〜ウチの子が落としちゃって。」


そう言いながら拾おうとする母親を手で制してタマモは言う。


「ん、大丈夫。私が拾────」


いや、正しくは『言いかけた』だ。


「………………。」


ふと、屈んた時に見えた。

よく見ればそれは、その子の姿は、自分の慕っていたあの人に、『ご主人様』に似て──否、瓜二つだった。

分かる。だが理解(わか)らない。


「有り得ない。」


ポツリと、タマモがそう呟く。


「……すみません。大丈夫、ですか?」


動きを止めたタマモを心配するような口調で、母親はそう言った。


「ぁ……うん、大丈夫…………なのじゃ。」


立ち上がり、玩具を手渡しながらタマモはそう言った。

その時、


「あ〜う〜?」


それは何気なく、なんの訳もなく行われたのだろう。

ただ、スカートを引っ張った。可愛い子どもの悪戯だ。

ふつうなら笑って済ませてしまえただろう。

しかし、そのスカートの中にはタマモが妖狐である証拠、ふつうの人間ではない証拠の白銀色の尻尾が隠されていたのだ。


「…………あ。」


不思議だった。

妖狐(わたし)はこの世界にとっての異物だ。』

簡単な理屈で、頭では理解(わかっ)ていた事。だから隠していたのに。


(嫌われる…………。)


ペタリ。意図せずタマモは呆然と力無く座り込んだ。

あの人の面影に、嫌われるのが恐ろしくて、怖くて。今すぐ逃げ出したいのに動けない。


「ッ!タマちゃ……」


しかし、その言葉は異変に気付いた瑛理が駆け寄るよりも早く、簡潔に告げられた。


「──たまも!」


ふと、日が差すように、世界が晴れる。

その子どもの表情は、彼が……主人が最期に見せた笑顔と瓜二つで。


「…………ッ!」


信じられなかった。主人と瓜二つの子と逢えた。それだけでも奇跡なのに、名前を。その優しい声で呼んでもらえるなんて。

こんな偶然が、奇跡があっていいのか?私だけがこんな幸せを受け取ってもいいのか?そんな自責の念じみた思いも、明るく笑う赤子の前ではバカバカしい。


「……タマちゃん、大丈夫?」


瑛理が差し出した手を取り、立ち上がる。


「ううん。大丈夫なのじゃ。」


それは突き抜ける青空のようなその笑顔を見れば一目瞭然だった。

今までのどこか詰まったような、気後れしたような笑顔は曇天だったのだろう。


「すみませんうちの子が!こら、お姉ちゃんのスカート触っちゃだめでしょ?めっ!

……すみません、普段はこんなことする子じゃないんですけど……。」


そんな焦った口調で母親が謝るが、それよりも慌てた様子でタマモがあたふたとする。


「いえ、大丈夫な……大丈夫です。あの、ただ…………。」


大層な言葉遣いも、愛しくなる程の高圧感も、今の少女からは全てが抜け落ちていた。

まるで憑き物が落ちたように……いや、実際それらは憑き物だったのだろう。亡くなった主人の代わりを務めなければという呪いだったのだろう。


「ただ……ここに来て良かったなぁ……って。」


笑顔のままにポトリ、ポトリと涙を零しながら……少女は、あくまでも少女らしくそう告げた。

それは、瑛理の知らない表情、瑛理の知らないタマモだった。


「……ハンカチ、お貸ししましょうか?」


ふと、申し訳なさそうに女性がそう言った。

女性の目にタマモは『泣くほど恥ずかしいのに無理して笑ってくれている』というように映ったようだ。


「……借りておくのじゃ。」


嬉しくて嬉しくて仕方がない。拭いても拭いても止め処なく涙が溢れる。

こんな思いは()()()()()()()()


「あの……これ、住所です。いつでも、ポストに入れて下さってもいいので……。」


女性はスケジュール帳の切れ端に苗字と住所を書き、タマモにそれを手渡した。

そしてタマモは、ギュッと、ハンカチと花の香りのする小さなメモを握り締め、噛みしめるようにそう言った。


「……ありがとう。必ず、必ず返すのじゃ。」


…………タマモは、暫く呆けていた。借り物のハンカチとメモを交互に眺めて、その匂いを嗅いで、空を見て、また眺めて────


「ねぇ、タマモちゃん!」


──突然背後から抱き着かれ、思わず肩が跳ねる。そうしてようやっとタマモは意識を取り戻した。

そんなタマモに瑛理は、明るく跳ねるような声で確信めいた質問をした。


「さっきの答え……決まった?」


「それは…………。」


その答えはもう、決まり切っていた。


「また来なきゃ。」


このハンカチと……今まで受けた恩を返さなくちゃいけないから。


「じゃあ、待ってるね?」


「うん。また来るのじゃ。」


そして二人は笑った。これからもこんな日々が続くと、そう無邪気に信じながら。

いつも読んでくれてありがとうございます!!

いや〜2年間温めた甲斐あって長いですね!!なんでこんなに温めてたかというと、イラストを一緒に出したかったんですが、そのイラストを描くのが面倒くさかったんです。ホントです。本文は半年前にできてました。

……といことがあって時系列的にほぼギリギリのここにこの話を挿し込むことになったんですね。

そんなタマモの絵です。背景適当ですが見てやってください。

https://twitter.com/HKmE18/status/1580716254947848192?t=6x3vRHakBKzWSH0XVT4NBA&s=19


タマモのお父さんが蒸発したので、一部描写を変更しました。

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