修行回!?修行回じゃないか!!生きてたんだな……死んだと思ってたぜ!!
投稿!投稿!!これまでサボってた分を取り返すぞ〜!!
閑話休題。
「さて、じゃあ本題に入ろうか。」
そう言ってレクスはゆっくりと、練と向き合う形になって座り込んだ。
「これから、この部屋の外の時間を約千倍早くする。」
千倍。練がそう心の中で復唱する。
「……元の歴史まで大体3年か……もっと早くは無理なのか?」
3000÷1000の単純計算で導き出した答えと不満。
そんな思慮の浅さに思わずレクスは顔を歪めた。
「……そんなことしたら死ぬぞ?」
「え!?」
……確かに説明はしていなかったとはいえ、多少も人の事を疑わない精神。
レクスは呆れを通り越してこの男が心配になった。
「『時の支配-加速』。俺がこの部屋に使おうとしている魔法だ。」
しかし、次に練が発した言葉でその思慮の浅さに納得した。
「あぁ、季ちゃんがよく使ってる魔法だろ?」
なるほど、母のせいか。レクスはそう心の中で溜息を吐いた。
「……本来は軽率に使っていい魔法じゃないんだけどな…………。」
「……ってことは何か酷いデメリットでもあるのか?消費魔力が多いとか?」
「あ〜それもあるが……デメリットは負荷の倍増だ。」
負荷、日常生活であまり意識したことがなかった単語だったからだろう。
「負荷……?」
練はあまりピンと来なかったらしく、口の中でその言葉を反芻する。
「そうだな……仮に10倍の加速を自分にかけたとする。
この場合、あらゆる負荷はそのまま10倍になって自分の身体を襲うことになる。」
「……その負荷が10倍ってのが上手く分からないんだが……ドラ○ンボールの重力室みたいなもんか?」
「大体はな。だが、日常に潜む負荷は重力だけじゃない。」
「というと?」
その言葉を受けてレクスは丁寧に解説を始めた。
「重力、まぁここでは物を運ぶのに必要なエネルギーと力、という事にしておくか。
この加速の中では今言ったエネルギーと力の必要量が加速した時間と同じ比で増えていく。」
「…………ふむなるほど、それが負荷か。」
単純に重力が倍々になっていくと考えていた練は、その説明に納得したように何度も頷いた。
「後は魔法を使う為のintとMP、生命・健康維持に必要な栄養とカロリー……というように、このまま1000倍加速をかけると、今言ったようなあらゆる負荷が1000倍になる。」
「え、死ぬやん。」
思い出すのは無詠唱で何度も加速していたあの子。
結構むちゃしてたんです。あの大食いさにも納得だ。
「その通り、だからこの場所を選んだんだ。」
そして、ようやく点と点が線で繋がり始める。
「…………月か!!」
そう、この部屋は月にあるのだ。
「この世界の月も重力は1/10程度だから、少なくとも重力に関しては……多少は大丈夫だろ。」
しかし、
「…………え?いや、1/10でも100倍重力なんだが。普通に死ぬが?」
人は100倍の重力に晒されれば死ぬ。よく考えればそうだった。
「だから死なないように徐々に倍率を上げていく。常に限界ギリギリの重力が父さんを襲うと思っていてくれ。」
そんな殺伐とした単語を好青年っぽさで包んだところで、全然マイルドになんかなりやしなかった。
「そんな軽い感じで言うなよッ!?死んじゃうぞ!!?」
……と、急にレクスが溜息を吐く。
「……なんだ、アンタの覚悟ってそんなもんなのか。」
冷めたような、見下げるような目で、心底軽蔑するようにそう吐き捨てた。
「…………ぁ?」
惚けたように口を半開きにする練に対し、追い打ちをかけるように一言。
「『どんな時でも助ける』。」
「ちょ……おま…………聞いてたのかよッ!!」
あまりの恥ずかしさに顔が赤くなる。思わず照れ隠しをしようとするが、
「五月蝿い茶化すな。」
────それは一瞬。
気付いた時には既に地面に組み伏せられていた。
(今……何が起きた…………?)
自分が強くなった気がしていた。本気で神咲季をこれから守り続けられると思いこんでいた────そんな自分が馬鹿みたいだった。
強いのは金子練じゃない。破壊神の能力だ。それも金子練の1万年分の未来を消費して、ようやっと神咲季に負けを認めさせられる。その程度の能力。
「こんな体たらくで母さんを助ける?可笑しい事を言うな。こんなんなら…………」
それは、きっと優しさなのだ。
レクスなりの優しさなのだろうと、練は理解している。
「……俺が母さんを貰ってやろうか?」
だけど、ここで食い下がらなければ、本気でレクスは季を奪いに来るという確信もあった。
「…………これが、1000倍の修行の成果なのか?」
ポツリ、練が確かめるように呟く。
「いいや?まだ100倍しか試してない。
……つまり俺はこれからもっと強くなる。父さんはどうかな?」
それは、まるで試すような口調だった。
誘っているようにも、お前にできるのか?そう問いかけているようでもあった。
対する練の答えは────
「…………そうだな、まずはありがとうだ。俺を助けてくれたこと、見守ってくれたこと、この世に……産まれてきてくれたこと。」
──絶対に諦めない。ギラギラと練は瞳を輝かせる。
「だけど、それとこれとじゃ話が別だッ!!」
ブワリ、レクスの身体が萎縮する。
そしてその一瞬、気圧されたレクスの隙を突き、錬金術を発動させて拘束から抜け出し、改めて大きく息を吸う。
「子供と母親を守るのは父親の仕事だろうがッ!!!!」
それを聞いてレクスは、笑った。
嗤ったり、嘲笑ったりせず、まるで「それでこそ」とでも言うように、ただ、母を想起させるような屈託のない笑顔で笑うのだった。
「ただいま〜ってえぇ!?」
……と、そんな間の悪い時に二人が帰ってくる。
「もしかして…………ご主人様、この歳になってゴネるのはダサいですよ!」
この光景を傍から見れば、修行をしたくなくてゴネた挙げ句、息子を吹き飛ばしたゴミ親。
……最悪だった。
「ゴネてないわ!!やる気に満ち満ちてるわ!!100倍だろうが1000倍だろうが何だって来いよ!!!」
……と、そんな悪いイメージを払拭する為か、練は声を荒らげてそう言う。
しかし、ダークとライトの中では『そういうことする奴』としてのイメージが確立してしまっているらしく、全然無意味。
「ホントですか〜?」「強がっちゃって〜。」
……前述の通り、金子練は煽り耐性皆無である。
「うぬぬぬぬぬぬぬ…………!」
幼女に煽られて唸る姿はものすごくカッコ悪いという事を誰か教えてやってくれ。
だが、思わぬ所から助け舟が出され、練は顔を上げた。
「なぁ、父さんをあまり悪く言わないでやってくれ。決断は結構すぐだったぜ。」
「…………レクス。」
「ホント煽ったらすぐ。めっちゃ単純だったわ。」
助け舟じゃなかった。全然追い討ちに来た。この船、溺れてる人に向かって轢き逃げしに来やがった。
「レクスッ!!お前ェェェェェェ────ッッッ!!!!」
前述(ry……兎に角、練は力いっぱいキレ散らかした。
それはもう火山の噴火の様だった。
「…………ま、母さんを守るとかほざく父さんが弱いと俺も困るんだよな……っつーことで、修行してもらうぜ父さん。」
ビシリ、練を指差してレクスはそう言った。
「修行〜?」
さっきの決意はどこへやら。練はやる気のなさそうな態度で返事を返した。
しかし、レクスには分かる。この男は一度決意した事は曲げない。曲げられないのだ。
「あぁ、身体慣らしの期間も含めて5年の間。
俺の1万年分のありとあらゆる戦闘経験を……父さん、アンタに叩き込む。」
「5年間で1万年分を…………?!」
ゴクリ、思わず練は生唾を飲み込むが、そんな練をレクスは嘲笑う。まるで煽るように。
「おいおい……今更怖気づいたりしないよな?」
一拍おいて。
「…………当然ッ!!」
意気込みや良し。しかし、どうやら女性陣からは不満点があったようで。
「なんか間がありましたね。」「ダサ。」
「斬れ味が鋭いよ〜…………。」
剣だけに。なんて呟く気力もなく、精神ダメージで倒れ臥す金子練。
「さぁ、修行編だ。覚悟しろよ?父さん!」
練はげんなり、ダークとライトは呆れ顔。レクスだけはやる気に満ち溢れていた。
……おい、修行編の開幕だぞ?これでいいのか!?
いつも読んでくれてありがとうございます!
結構サボってた分、きっちりと(?)一話一話がボリューミーに!なっております!!
ということで修行編の開始〜!




