目眩く時空の消失=ロスト・クロノス #12
ちょっと遅れました……。
じわじわと掌に力を込めるが、まるでそびえ立つ山の如く、クールは一切ビクともしない。
流石に苛立ちを隠せなくなった季は、クールを睨めつけて言う。
「…………私の邪魔するってことは、敵って事でいいんですよね?」
「ハッハッハッハ!!!そうさ神咲季!!!私は君の敵だッ!!!遠慮はいらないさぁ────」
まるでクールの余裕な態度を掻き消すように、神速の蹴りがクールの顔面へ叩き込まれた。
「──ふ、やっぱり貴方も……」
「この程度なんですね。」そう続けようとした季は、砂煙が収まると同時に目を見開いた。
「…………!?」
完全に原型を留めているどころか、完璧に無事かつ無傷。
「ハッハッハッハ!!!!!愉悦!!愉悦!!!やはり私の筋トレは間違いではなかった!!!筋肉 is best answer──ッ!!!!」
クールには、季の目の前でポージングを決めるほどの余裕があった。
それはつまり、今の季は相手にならないという一種の意思表示でもあった。
「…………面白い……!!!だったら!!!」
それに応えるように季が手元に魔法陣を展開し……直後、世界が揺れる。
「くッ……!来るか!!」
「私も相応の力で貴方と戦いましょう!!!」
その形を視界に捉えた瞬間、思わずクールは感嘆の声を漏らした。
「『デモン・ヴォーカー』かッ!」
砂漠で遭難した末にオアシスを見つけた時ほどの渇望の声色で、空腹で飢えた獣がようやっと獲物を見つけたような表情でクールはそう言った。
「そうッ!!そうでなくてはなッ!!!デモン・ヴォーカーを持った神咲季でなければ、勝ったところで意味がないッ!!!」
「これで……終わりッ!!!」
緩慢な動作──しかし、余波だけで先程の蹴りと同等。人間を殺すには十分な威力で横薙ぎの斬撃が放たれる。
……だが。
「しかしだッ!!!」
その余波を受けても尚、距離を詰める。
「なっ……!!」
互いの呼気が触れ合うほどの距離に接近したかと思えば、鋭角放たれた膝が季の顎に打ち付けられる。
「くっ!!」
クラリ、視界がぐらりと揺れた瞬間を逃さず、全身を使った右ストレートを放つ。
「ぬぅん!!」
「く…………『加速』ッ!!」
しかし、自身の時間を加速させて目眩を回復。
逆に圧倒的速度でクールの背後を取ってみせる。
(これならッ!!)
縦一文字の斬撃が背中に炸裂し、季は勝利を確信した。
「……そ…………そんなっ…………!?」
だがしかし!!クール、無事ッ!!!!
「……私はね。この数千年間、過酷なトレーニングを続けてきた。
そのデモンヴォーカーでねッ!!」
そのセリフに思わず季は小さく「は?」と声を漏らした。
「私の……剣でトレーニング……??そんな馬鹿な!!この剣は私の進化に合わせて進化した!!その私の剣でトレーニング……ましてや数千年間もできるハズがっ!!!」
「私は……神咲季、君に勝つために未来からやってきたのさッ!!!」
そう笑いながら、背中に乗ったままの『デモン・ヴォーカー』を持ち上げて見せる。
「くッ…………気持ち悪っ!」
「君に心を折られたあの日から、私はこの日をずっと待ちわびたッ!!さぁッ!!雌雄を決する時だッ!!!神咲季ッ!!!!」
一方その頃。
一筋の光がひたすら真っすぐ目的地へと進んでいた。
「ハァァァッッ!!!!」
右手から生やした黒白混交の剣で枝葉を切り払い進む。
『お兄ちゃん後ろっ!!』
「くっ!!このっ!!」
ダークとライトの能力で、切り口に継続ダメージを与え、再生を阻害しているというのに、触手の数は一向に減ったように感じられなかった。
『ご主人様!この枝、どうやら触れられると魔力を奪われるみたいですっ!!』
『触られないでよね!!お兄ちゃん!!』
「無理を言ってくれる……だけどそうでなくっちゃな!!」
一瞬目を閉じて集中。
微弱な魔力を自身の周りに展開し、探知網とする。
上質な魔力伝導体──ダークとライトをその身に宿すことで、魔力操作能力が格段に向上しているのだ。
「無理をなこともやって見せるのが錬金術師!!この俺金子練だッ!!!
ワンパターンな触手野郎共に!!俺の勇姿を焼き付けてやるぜ〜ッ!!!」
いつも読んでくれてありがとうございます!!
今月中に"ロスト・クロノス"終わらなさそうです……見通しが甘い!!




