目眩く時空の消失=ロスト・クロノス #11
「ダーク!ライト!来いッ!!」
ユグドラシル目掛けて駆けながら、練はダークとライトを腰の鞘に召喚する。
……と、召喚されるなり、二人が驚愕の声をあげるよ。
『はいはーいってどうしたのその怪我!!』
『止血は…………できてるみたいですけど!!これ以上の無茶は……!』
二人から制止の声が上がるが、
「やるぞ……共進化形態だ!!それでしかユグドラシルを突破できない!」
練はそんな声達を無視して流れるように自己犠牲を宣言する。
その瞬間だった、二人が剣から人へ変身し、練を仰向けに押し倒した。
「無理だよ!!ただでさえヤバい怪我なのに、共進化形態なんて使ったら……!」
ポトリ、微温い雨が降ったが、練はそれに気付かないフリをして反論する。
「出来なきゃどうせ死ぬ。だったら試してみるしかねえだろ……!」
「…………じゃあ、死ぬまで。死ぬまで一緒にいましょうよ!!私達と最期を過ごすのは……嫌ですか?」
それは卑怯な質問だった。
そんな彼女に練は少し考えてから言葉を返した。
「確かに、俺は世界なんかよりもみんなの方が大事だ。このままみんなと最期を過ごすのも、悪くないと思う。」
「なら……!!」
「でも……シルフィアと季ちゃんが居ないとみんなじゃない。」
「……ッ!!」
「それに、約束したからな。助けるって。」
そう微笑う練を見て二人は、一瞬哀しそうな表情を浮かべたが、直ぐにニコリと笑って言った。
「……あ〜あ、しょうがないなぁ。力貸してあげるよ。」
「……仕方ないですね。私も力を貸しましょう。」
そして立ち上がり、練に手を差し出す。
「「だって大好きなお兄ちゃん(ご主人様)の頼みだから。』』
「……ダーク、ライト。ありがとう。」
その二人の手に右手を伸ばし、言の葉を紡ぐ。
「行くぞ!!『『共進化形態』』!!!!!」
一方その頃。
神々と原初の魔王との戦いは膠着状態になっていた。
ただ、それは神々が善戦しているという訳ではなく、誰も彼もがただ、魔王の気紛れにより生かされているに過ぎなかった。
そして、その魔王の気紛れが今、終わろうとしていた。
「ふーん、来ないんですか。じゃあこっちから行きますよっ!!」
「待てィッ!!!」
しかし、神々はまだ生き長らえることとなる。
「ん……?」
季の遥か頭上から、筋肉の塊が落下する。
「とうッ!!!……ハッハッハッハ!!!久し振りだな!神咲季!!いや……そうでもなかったかな?!ハッハッハッハ!!!!兎も角……この時を、待ちわびていたぞ!!!!」
そして、その筋肉の塊は神々を背に負うかのように季の前に立ち塞がった。
「あっ!クールさん?!お久しぶりです!なんか、筋肉増えました?」
「うむ、鍛えたからな。」
そんな平凡で平穏な会話を切り裂くような鋭い目で、季がクールを睨みつけて言う。
「というか…………さっさと退いて貰えます?」
だが、クールもそれに少しも怯えず、一歩も引かない構え。
「ならば、この私を退かせてみたまえ。」
「言われなくとも……ッ!?」
瞬間、ざわりと神々がザワつく。
闘神は触れただけで型抜きにされたというのに、この男はよろめきすら、微動だにすらしない。
「ふふ……どうかな?退かせそうかい?」
全く信じられないが、神々にとってはこんな筋肉の塊が最後の希望だった。
いつも読んでくれてありがとうございます!!
今日は特にないです!!




