目眩く時空の消失=ロスト・クロノス #10
「ぐ…………クール…………!!!!お前…………!!!!」
『クールならなんとかなるかもしれない』『クールでもどうしょうもない』『どうしてこうなった?』『俺のせいだ』『季ちゃんを殺すべきだった?』なんて希望や後悔たちと、そしてそれらを否定する感情論たちが織り混ざり、練の感情は雑に丸めたティッシュのようにぐちゃぐちゃになっていた。
そんな練をクールは軽く平手打ちした。
「あまり興奮するな、血を流すと思考が鈍るぞ。」
その後、クールは自らの上着を破り取り、練の半分しかない腕をきつく縛り上げ、止血した。
正直、その平手打ちのせいで思考が鈍るどころか意識を失いかけたが、頭はスッキリとした。
「あぁ?興奮?してねェよんなもん。」
ゼエゼエと呼気は荒くも意識ははっきりと保っていた。
そしてこんな状況でもそんな風に強がる練がおかしくて、クールは思わず噴き出した。
「ハッハッハッハ!あくまで冷静なつもりか?しっかりしてくれたまえッ!」
「いいや……俺は今、間違いなく冷静さを欠いている。間違いなくだ。」
そういう練の瞳は怖いくらいに据わっていたので、クールは練に対して『異常事態下で動揺しながらもしっかりと状況を理解できている』との評価を下し、内心感心していた。
「…………ハッハッハッハ!!それだけ自己分析できていれば結構ッ!!!では本題に────」
「──いや、聞け!!!今度は正気を失うぞ!!俺が!!!!」
……しかしどうやら、その評価は間違いだったらしい。
「………………はっはっは。」
「前提から言おう。俺は巨乳ロリアンチだし、巨乳ロリはこの世の摂理に反するから存在してはいけないと思う。存在が邪道だ。解釈違いだ。」
「は?」
遂にクールが笑うのを止めた。
「そして正直に言おう。俺は興奮していた。
普段奥手でモジモジしがちな季ちゃんが、魔王になると必然的にあんなエッチな格好しなきゃいけないんだ〜!きゃっ!大胆〜!!
…………ってな感じでな。」
事実、現在季が着ている服は、様々な局部をしっかり隠しつつも、まるで水着のような肌面積で、背中に至ってはマントを付けているのにそのマントに楕円形の穴が空いていて、肝心の背中を隠せていなかった。
うなじ丸見え。腋も丸見えだった。
そして、それらを熱く語る練に対してクールが抱いた感想は、
「キモいな、貴様。」
その通りだった。
「だが、現実は非情。季ちゃんが振り向いた時に、やっとそれに気付いたよ────」
そう言って胸の前に手の平で球体を描いた。
「──おいおい、なんだあのたわわは。」
「一語一句キモいな貴様。」
まったくその通りだった。
なんなら直接言葉にしない分一段とキモかった。
「今俺の心は!!いい感じの表紙の同人誌のジャンルを見たらN○Rだった時ぐらい哀しみに満ちているんだッッ!!!」
「本当に何を言うとるんだ貴様は……とりあえず、現状は理解できているか?」
「万事オッケーだ。
……まぁ、正直万事休すって感じだな。」
そう言って座り込んでしまう。
そんな練をちらりとも見ずに、クールはただ前を、季を見据えて言う。
「おいおい……それでも世界を救った英雄か?」
「いや、その英雄ってやつになるには俺だけじゃダメなんだ。せめて華蓮が…………!!!」
その時、思い出す。
(錬金術を封印したスキル宝玉……!!!)
そう、このスキル宝玉には完全な錬金術……つまり破壊神の半分の力が詰まっていることになる。
「3/4でもいい!破壊神の領域にちょっとでも近付ければ……勝機はあるかもしれない。」
なにせ、あのアビスを一瞬で消滅させた破壊神の能力だ。
最低でも善戦くらいはできるだろう。
「どうやら時間が必要そうだな。」
「あぁ!ここは頼んだ!!」
「任されたッッ!!!!」
そうして練はユグドラシルへと駆け出した。
いつも読んでくれてありがとうございます!!
今日は間に合いましたね!!




