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激闘のあと(前編)

今回は長くなったので分割です!

────同時に、まるで弾かれるようにお互いの身体が宙を舞い、同じように地面で一度跳ねてそのまま仰向けに倒れ込んだ。


それは、まさに嵐の後の静けさだった。

そこにはただ、倒れ込んだ二人の荒い呼吸だけがあって、誰もが黙り込んで、ただそれを見つめていた。


防御もない、回避もない、知性もない。

片や獣のように、片や災害のように、純粋な暴力と暴力のぶつかり合いの果て。

その静寂を切り裂くように、割って入るようにして、決闘魔術はプログラムされた間の抜けた音声と共に、勝敗の結果を高らかに宣言する。


『draw!』


「「「ど、ドロー(引き分け)?!!」」」


「蓄積ダメージも…………全く一緒…………?!」


そう練が呟くが、何も不思議な事はなかった。

何故なら────


「ったく、こんな3股野郎と同じなんて…………一生の恥だよ。」


──どちらも変態。似た者同士だったからである。


「それはこっちのセリフだ。お前みたいな変態と引き分けだなんてな。」


いつの間にか二人の心は、青臭い青春漫画を彷彿させるほどに通じ合っていて、結界の中には疲れ切った二人分の笑い声が響くのだった…………

しかし、そんな余韻も長くは続かなかった。


「そんなこと言ってる場合じゃないですっ!!」


一応、結界は中の選手を守り、回復させるためにしばらくは機能し続けるのだが、


「『魔導記憶:行使』ッ!」


そんなことは存じ上げない第2王女様は息をつく隙も与えず、巨大な機械の腕を構築し────


「──『機神の鉄拳(ブレイカー・フィスト)』────ッッッ!!!!」


一点突破。一瞬たりとも拮抗する様子を見せずに結界が音を立てて崩れ去る。

……これで腕相撲の腕は家族の中では3位らしい。


(腕相撲しなくて本当に良かった〜ッ!!)


と、練が心の中で叫んでいると、すぐにシルフィアが駆けてきた。


「お兄様!…………酷い……今治療します!待ってて下さいね。」


どうやら無理に動いた影響で一部の筋肉が断裂していたらしい。

ここが異世界でホントに良かったと、練は安心して溜息を吐くのだった。

そして、


「……どーすんだよ。決着、着かなかったじゃねーか。」


そうフィアルーンに対して投げかけた。


「…………ホント、どーすんのさ。三股男と二股なんて私はゴメンだよ?」


と、ふざけるようにしてそんな言葉を口にしてみるが、シルフィアの視線が怖かったので大人しく口を閉じた。


(まぁ……この差なら決着は着いたようなものだけど。

全く、我ながら酷く嫌われたものだね。)


なんて心の中で呟き、遠くの空を眺めていると、


「ほらお姉様、大丈夫ですか?大丈夫じゃなくってもすぐに元気にしてあげますよ!」


「…………シルフィア。」


突然の言葉に訳が分からなくて、フィアルーンは目を何度もパチパチとしているだけになっていた。

みっともない、行き過ぎた欲望が生んだ幻だとそう思い、何度も目を擦った。

しかし、


「ほら、あまり動かないで。あと目を擦るのもやめて下さい。治療箇所が増えるでしょ?」


手を握られて、ふと我に帰った。


(あ。これ、現実だ。)


ならばと、意を決した曇りなき瞳ごと、プイッとそっぽを向いてフィアルーンは言った。


「先に金子練を治療すればいいじゃないか。

もし私を治療したら……エッチなことしちゃうぞ?」


こいつ拗ねやがった────ッッッ!!!!!

大人気なさ過ぎだろお前ッッッ────!!!


「私は必要ないんだろう?私が邪魔なんだろう?

私のことが……嫌い…………そうなんだろ。」


そう言って溜め息を吐いた。

すると────


「うわっ……面倒くさい女ですね〜……。」


「ほらやっぱり──!!!!!」


やっぱりだった。


「あーうるさいうるさい…………そりゃエッチなところとかはちょっと苦手ですけど、」


「うぅ…………。」


追い撃ちの罵倒でアルマジロのように体を丸める姉に溜め息を吐き、一呼吸だけおいて、


「嫌いとか、思ったことないですよ。たった一人の、お姉様なんですから。」


少し恥ずかしそうに目を逸らしてそう言うのだった。

そして、その瞬間。


「し、シルフィア〜!三股男なんか捨てて私とラブラブちゅ〜〜~~~!!!!!!!」


フィアルーンはグルリと振り向きシルフィアに飛びかかった。

そしてムードもへったくれもない誓いのキスを────


「ちゅっちゅ〜!……あれ?なんか固くな…………い……?」


──シルフィアの鉄拳に捧げた。

シルフィアはニコリと微笑み、フィアルーンは顔を真っ青にした。


「──『機神の鉄拳(ブレイカー・フィスト)』────ッッッ!!!!」


「調子に乗ってすみませんでしたああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ────────………………」


この日、星が一つ増えた。


「……さぁ、治療の続きをしましょう。お兄様っ!

治療したとはいえ、まだまだ完治には程遠いんですから!」


「あ、あはは……そ、そうだな〜。」


(今度から絶対に……シルフィアを怒らせないようにしよう!!)


練はそう深く心に刻み込むのだった。

いつも読んでくれてありがとうございます!!

次のも頑張りますよ〜?

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