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<悲報>災厄の時空神さん、この世に生まれてしまう。

頑張りました!この1話!

やっぱ強いぞ季ちゃん!

「その神にすら届き得る刃……狩らせてもらう!」


片手を突き出し、言の葉を紡ぎ出し、発動される効果は。


「『独自領域(パーソナル・オーダー)』。」


即座、世界が反転。彩度の落ちたその世界は『世界神』にのみ赦された『神の権能』の一つ。


「ここは……。」


魔力探知を限界まで広げるが、見知った地形、見知った家、見知った国が有るにも関わらず、生き物はここにたった二人。

神と、それに挑む自分自身しかここにはいない。


「虚像だよ。実世界のな。」


突如、不可視の横殴りが()()()()

()()()()世界中に張り巡らせた魔力探知を掻い潜って、だ。


「がッ……!?」


それは予測不能の一撃。突如発生する攻撃は時を止めようが、剣を構えようが、総てを貫通してダメージを与える。


「要するに、この世界でいくら暴れようが実世界にはなんの影響も与えんと言うことだ。

能力の性質上、世界を壊す物が多くてなぁッ!!」


瞬間、嫌な予感と共に空間を握り潰される。

……否、空間()握り潰したという方が正しいだろう。

季の代わりに捕まっていた空気が爆発と共に開放されるが、攻撃に使ったであろう空間は歪に拉げていた。


「……これが、神の本気……。」


一切の予備動作、無し。

一切の回避法、無し。

一切の手加減…………無し。


「ふん……恐怖で声も出んか。」


「………………の…………?」


「ん?」


実際には、その声を聞き取れない訳が無かった。

……だが、『世界神』であるクロノスは、そのような事を言われた事など一度もなく、また、そのような言葉を使う相手すらも居なかったので、咄嗟に意味を理解出来なかったのだ。


「………………その程度なの…………?」


「ん…………────ッ!?」


瞬。轟音。回転。苦痛。『疑問』。


(なん……だ?視界が…………『混乱』か…………?)


薄れ行く思考回路で、それができたのはほぼ奇跡と言う他ない。

不調を感じれば、世界に保存されている自分の肉体データを上書きする。

普段の癖、故の即決。


「…………ッは!?はぁはあ……今、何が……!?」


そして、気付く。『世界神』故に気付いてしまう。

世界に散らばった自分の肉体の魔力に、物理では破壊し切れない魔力のみが残った肉体に。

そして、ただ剣を振り抜いた姿勢で止まった季に。


「……ッ!?…………ば、ばかな…………。この我を破壊したというのか?しかも、魔法でもなく、ただの物理攻撃で?」


(まさか……狩られる側は…………!!!馬鹿な!()()()()!?)


一瞬、空気が変わる。ヒリつくような戦いの……死闘の空気に。


「……どうやら、認識を改める必要があったようだ。

貴様は小娘などではない。『敵』だ。」


それは、初めて『世界神』が取った真面目な戦闘体勢であった。

立ち姿こそ変わらないが、魔力の『質』が明らかに変わるのが分かる。


「『世界』の全力全開は、他の神にすら見せた事はない……いつまで持つかもすらわからん。

────よって。」


瞬間────世界の均衡が崩れる。


一瞬で(早めに)、決めてやろう。」


それは、陸、空、海。普段我々を支える『世界』だった。

それが3分割されて季を襲う。


「…………!」


脈動した大地からは絶え間なく炎が噴き出し、統率された空は自由を奪う、荒れ狂う海は雄大なその巨体で踏み潰し、切り混ぜる。


「まただ、まだこの世界を使え切れてていない……!!もっとだ!!!」


一瞬の静寂が訪れ、荒れ狂うそれらが隅々まで分割される。

それは、星、銀河、宇宙。普段我々が体感する事すらも許されない。未知の『世界』だった。


「くっ…………ッ!!!」


星は降り注ぎ、真空が足掻きすら奪い、新星の爆発は世界を灼き尽くした。


「これで……いやもっと。まだだ!まだ……ッ!!!」


灼熱のその先、最小単位すら通用しない領域の分解。

それは、時、方向、形、分子、次元。普段我々が『仮定』として持っている存在。それは究極の不確証、『世界の定義』そのものだった。


「これで…………終わせてやる!!!!」


その世界の定義が細く細かく分解される。それはまるで鞭の様にしなる刃。

それが凡ゆる方向から季に迫る。

…………しかし、


「『終わらせてやる』……?こんな攻撃で?」


しかしそれは、その究極の一撃は、今迄の攻撃と比べて仕舞えば余りにもスケールの小さい攻撃と言えるだろう。


「…………?」


だが、一瞬のラグがあった。

時を止め、自身を加速させていたハズの季が、最も『それ』と無縁の存在が、自らの動きに停滞を感じたのだ。


「……っ!!これは…………?!」


そして余りにも呆気無く、斬り裂かれる左腕。

最強のボスの攻略法が判明したかのように。

それは、彼女の絶対たる優位性が揺らいだ瞬間だった。


「汎ゆる形、汎ゆる方向、汎ゆる時、汎ゆる次元。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


『最小単位の攻撃』、例えるならば単分子カッターによる切断。

正確には『小さな世界で区切る』攻撃な訳だが、重要なのはそれが通用したという事。

…………つまりは、


「貴様はついに、世界を超える事は出来んのだッッッ!!!!」


「…………ッ!!!!」


身体が動かない、そもそも凡ゆる物体が存在する理屈で攻撃されているのだ。寧ろ季が人の形のまま存在出来るのも有り得ない事ではあったが、それが限界だ。


「消えろ……ッ!世界の為に!!!」


時間すらも彼女を斬り裂く攻撃と化したこの状況、一瞬という概念すら存在しないこの状況。

だが、しかし。そこに確かに一瞬はあった。


「……馬鹿な。時は……時間は我が分解し、掌握しているのだぞ……?

…………何故、止まる。何故、我の攻撃を止められる……?」


最小単位に変貌した世界を構築する単位達が、ある一点で停止する。汎ゆる攻撃が一点でその動きを止めてしまう。


「あのね。」


少女が呆れたように溜息を吐き、切断されたばかりの左腕を、ペン回しの様に右手の指の上で転がし、徐にその切断面同士をくっ付ける。

瞬間……傷、完治。


「────ッ!!?!」


それは、有り得ない現象だった。

前述の通り、この世界は『神崎季に対して攻撃する』という現象に全てリソースを使っている。

つまり、少女が動くのに必要なリソースは存在していないのだ。少女が動く、話す、考える、生きる。そんなことすら肯定できるリソースは残されていないハズなのだ。

……なのに。


「私が、いつ、()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「…………まさか。」


『世界よりも強い』。あの時突発的に吐いた言葉、本当にそうだなんて万に一つも思ってはいなかった。

……だが。


「私もいままで世界を気遣って本気を出してなかったけど。

()()()()()()()()()()()貴方に手加減していたけど。

ここは何をしても良いんでしょ?ここで何をしてもお兄様は迷惑しないんでしょ?」


その時、世界神は背筋が凍るような悪寒を憶えた。

勿論それは錯覚だろう。

…………無いものは冷えない。


「ぐッァァァァァァァアアアアア────ッッッ!!??!!」


一瞬の復元と同時、後悔。

己がしてしまった事は血に飢えた獅子を檻から解き放つ事と同義だったと…………否、獅子程度ならどんなに良かったか。


(ま、敗けてはならない……私は『世界』だ…………世界の規律そのものだ。

…………では、私が負ければどうなる?規律の内で生きる者共は、どう足掻こうとこの……規律の外にいる化け物には勝てん…………!!)


『蹂躪』『殺戮』『絶望』。そんな言葉が脳裏をよぎる。


「……また、修復。そろそろ諦めたらどうですか?早くお兄様に会いたいんです!さっきはちょっと怒ってしまいましたけど、その力を渡せば、復讐はここで終わりにしてあげますよ?」


兄を殺されて、『ちょっと』……?


「…………はっ。抜かせ。」


そんなもの、人間(ひと)ではない。人間(ひと)の心など持ってはいない。誰も理解しない。誰も理解できない。


…………世界神は、恐怖を恐怖と知らぬまま、ただ恐れていた。

蹂躙される未来を脳内で何度も描き、神の使命など忘れ、逃げてしまいたかった。


「……そうですか。じゃあ。」


また、来る。


(耐えろ……耐えなければ…………!)


技量無しの力任せ。また復元する身体。


(もう少し……あとちょっと…………あとちょっとだけだ……!!)


ただ、着々と。世界神もただ死ぬだけではなく、()()()()を着実に構築していた。

目の前の少女が自分を殺し損ねている合間に。


「届いた……『完全封鎖(エンドオブオーダー)』…………。

我が生涯を賭けた至高の封印……!!」


誰も、封印を施していた世界神すら、意識しなければ何かが変わったようには感じない。

誰も気付く事は出来ず、世界神にしか解けない封印。


「……元の世界との繋がりが途絶えた……?

…………なるほど、力尽くで出られないように、ですか。」


……だが。


「………………な……に…………?」


まさか、そんな事ある筈がない。

何度も何度も、最悪の形をループする思考が捻り出した言葉は、


「……()()()()()()()()()()?」


ただの、疑問。

しかし、知って何になる?分かって何になる?

もう、とっくの前に。


「あっ、もしかしてまだ何か話してました?

……それ、走馬灯ですよ?」


「。」



既に、『世界神』の原型はそこにはなかった。

そこに有った、確かに存在自体はしていたそれは、ただ魔力の粒子に宿りし残滓。

謂わば、この世界すらも彼の『走馬灯』。


「『時空の爪痕(ワールド・レコード)』。今の攻撃を()()()()()()()()()()()()()()()()。」


一撃で全身が消滅する攻撃を、その総てを一度に。

過去にて発生し、『世界神』が受けたダメージは数にしておよそ490垓。

それは『世界神』の最大体力の実に5736倍だった。


「さて。」


そして、それをなんでもないように、少し崩れた髪型を気にする程度の反応で処理し、


「あはは。」


少し、笑った。

そして皮肉にも、世界で既に起こった事象の辻褄を合わせる為に『世界の強制力』が働く。

そう、使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「来た……『世界神』の力。」


閉じていたハズの世界の扉が開かれる。

それは、人類にとって。いや、この世界にとって最悪の扉だった。


「待ってて下さいお兄様!今行きます!」

いつも読んでくれてありがとうございます!


季ちゃんの強さは、

クロノス<現在季<過去季<過去季(原初の魔王)

って感じですよ!!


そして過去編はここで終わりです。季ちゃんありがとうね!!

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