早めで頼む。
happy end!
「……ん?なんだ……妙にフラフラするな……?」
それだけじゃない、視界がグラリと歪んでいる。
それに、妙に身体が熱い。なんか胸に異物感もある。
……インフルだな!
「──────!!!!」
声が聞こえる。
だが、視界と同じ様に歪んだ音は言葉として認識ができない。
「ん?どうしたんだ?」
ただ、ルミナが手を握っているのは分かった。
頭が回り始める。
「──!?──!!」
「ちょっと待て?俺は確か…………」
視界の歪みが元に戻り、酷い顔をしたルミナが眼に映った。
「パパ!!」
胸に顔を押し付けるルミナの背中を優しく揺すり、嗚咽を漏らす少女に言葉を投げる。
「ルミナ……。俺は……?」
「ママが……ママが…………!!!」
少女が一方を指差してそう言った。
「何?ツクヨミさんがどうか……」
……だが、そこに倒れていたのは全く思いもしなかった人物だった。
「……華蓮?」
その少女は自分の分身。
……そして、この錬金術を使えるもう1人の人間でもある。
「おにーさん。おねーちゃんを……助けて。」
「おねーちゃんが、おにーさんが助けるって言ってた。
……おねがい……します。」
もう1人のダークとライトが彼女を抱き締めて言った。
いつもの無表情に、涙を浮かべながら。
「……そっか……そういう事か。」
「パパ……」
「大丈夫、バットエンドにはならないさ。」
その時、不意に頭に声が響いた。
『ん……私相当寝てたみたいですね。』
『ライト……私達が起きたって事は……!!』
ライトとダークの声が聞こえるが、辺りを見渡しても、ルミナと華蓮、あとはライオルちゃんとネスオルちゃんしか────
ババババババババ────ッ!!ズドドドドド────ン!!!!(魔法の音)
「私はここだァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!」
……あと、シルフィアがいました。
「シルフィア!!!最近作者が漫画とか読んでたらなんか同名の人が出てきたけど種族違うからセーフとか言われてるシルフィアじゃないか!!!!!」
ズドドドドド────!!!!(作者が魔法で捻り潰される音)
「ところで……ライト?ダーク?おーい!
一体どこに……」
「そこなの。」
バシッとルミナが示したのは自分の、金子練の胸だった。
「いやいや……2人は俺達の心の中に居るとかじゃなくて……へ?これマジです?」
白と黒の持ち手が思い切り胸から生えていた。
思わず背中を確認したが、どうやら刀身は貫通していないようだった。
『良かったー!!!』
『心配したんですから!!』
コイツら……直接体内に……ッ!
とか言ってる場合じゃなかった。
「痛い痛い痛い痛い痛い!!!!すげぇ心臓痛い!!これどうなってんの!?
ちょっちょっちょッッッ!!!!頼む!!頼むから動かないで下さいぃぃぃッッッ!!!!」
「2人がね、パパの命を繋いだの。」
「ごめん!!マジでアレなんだけど!!本当ごめん!!雰囲気壊して!!!でも痛いッ!!痛いんだよッッッ!!!!!」
「……いえ、華蓮さんを合わせて3人です。」
「本当にありがたいけど勝手にシリアスらないで!!!」
【シリアスる】(動詞)
シリアスな展開をすること。
「「おにーさん……」」
……流石にダークとライトも飽きたのか、それとも空気を読んだのか、それは分からないが動きが止まる。
ゼェゼェと肩で息をしながらその錬金術師は言った。
「……あぁ、大丈夫だ。華蓮もパッピーエンドにするから。
シルフィア、空島に飛べるか?」
「え…はい!『魔導記憶』!!」
一方こちらは空島。
季さんが落ち着かないようにうろうろとそこらを歩いていると、気配感知が反応する。
それと同時に魔法陣から人が現れた。
「練君っ!!無事…………?なの?それ……」
そりゃ胸に剣刺さってたらそうなります。
皆さん、知らないと思いますが、人は胸に剣が刺さってたら心配されるんです。
「一応大丈夫だ。」
「だ、大丈夫なんだ……?」
「……よっし、さっさとギャグに戻さないと、作者のメンタルが死ぬからな。」
「メタいの。」
「ところでお兄様、さっき華蓮さんが『良い方法』という内容を話してたんですが……」
練が待ってましたとばかりにドヤ顔を決める。
需要ねーのでルミナもドヤ顔します。
絶対きゃわわぁ"ッ!
「あぁ。簡単に言えば錬金術を半分にして、使い易くしようって話だ。」
「錬金術を……半分に!?」
「そう、これはあの後トレイアから聞いた話なんだが、錬金術って魂に掛かる負担が高過ぎたり、強過ぎたりして何度か修正を受けているんだと。
……そして、俺達が今使っている錬金術が……その一番最初の失敗作だ。一番魂に負担が掛かるヤツ。」
「じゃあどうしてパパやママは無事だったの?」
「深淵の力だよ。アレって小さな細胞一つ一つに意識や魂のかけらが詰まってるらしくて、そいつらが優先的に消費されてたから大丈夫だったらしい。」
「なるほど……確かに最初の練くんは……言っちゃわるいけどアビスにそっくりだった。」
思い返してみれば、『面倒だから』爆破して軍隊を片付けたり、ちょっとサイコパスな一面もあった。
「確かにな……最初は俺もおかしかったからな。そういう意味でも錬金術に助けられてる。」
ま、今もおかしいんですけどね。
「本題に戻しましょう。それで、半分にするのにはどうすれば……」
「それで、必要なのはコイツだ。」
「さっき私が持ってきたアイテム?」
季ちゃんが首をコトンと倒して言う。
かわいいッ!
「そう、この宝玉にはグレイプニルの魔法が掛けてある。」
「え"ッ!?やばい魔法じゃないですか!?」
「まぁ禁忌魔法だし……そんでだが、この宝玉はスキル宝玉。
……アレだな、鑑定の水晶とかに使われる感じのアイテムだな。中にスキルを『一つだけ』入れておける。」
なんか嫌な事でも思い出したのか、練が顔を顰めた。
────────────
目の前に30歳は既に超えていそうなおっさんに四方を、いや八方どころか全方向、全くの隙間なく囲まれていた。
さらにそのおっさんは子供のように目を輝かせていた…
その状態で正気を保てる自信は俺にはない。
「ヒィギャーーーーッ!!」
────────────
「うぇっ……」
「……なるほど、つまりグレイプニルの能力で魔力ごと2人から錬金術を吸い取れば、丁度半分ずつ錬金術を吸い取れるという事?」
「正解!では早速。」
手に持ったそれを華蓮に押し付けて発動する。
縄そのものはヌルヌルしてはいないのだが、(人の体質によるが)ヌルヌルした魔力が一緒に吸われているのでその感覚のせいだろう。
「うぇぇぇ……やっぱ慣れないわこれ……。」
「う……ぐ…………。」
「おねーちゃん。」
「がんばって。」
しばらくして、宝玉が一色に染まり切った後。
「……ふぅ、終わったな。これで、錬金術のスキル宝玉の完成だ。」
満足気にその宝玉を眺める。
「……結構、あっさりしてましたね。」
「ホントあっさりなの。」
「そんなもんだよ。それで、華蓮はどうしようか、新しい錬金術を試すか?」
久し振りにステータス画面を開く、そこで錬金術の項目を確かめた。
久し振り!金子練のスキル紹介のコーナー!!
『錬金術/half』
錬金術を分割した状態。
「げっ…説明ないじゃん。まぁいいか、『治療』……あれ?」
「あの……多分ですけど、錬金術が半分になったから、効果も半減してるのでは?」
「……なるほど……でも魂とか意味の分からないものへの負担は無くなった。
成功じゃないか?」
「パパ!!良かったの!!」
『じゃあそろそろ大丈夫?』
『人に戻りますよ?』
「いやダメだろ!もう未来見えてるぞ!俺の胸にお前らの顔が浮かび上がるんだ!!絶対そうだ!!」
その時、ぽすっと背中に小さな手が当たった。
「……おにーさんのうそつき。」
「おねーちゃんをなおすっていったのに。」
「……ごめん。すぐ『治すわ』。
……あれ?手応えあるな?……もしかして連続で使えるのか?
じゃあ……『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』……………」
「……はぁ、死にかけても馬鹿は治らないんですね。」
「練くんらしいや。」
「パパらしいのー!!」
「『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!『治れ』!」
「うるさい……何?寝てたのに。
……あれ?今日何日?」
「「おねーちゃん!!」」
2人が華蓮に飛びつく。
少し驚きはしたが、直ぐに頭を撫でて言う。
「おぉっ!?ライオルちゃん!?ネスオルちゃん!?おはよ?!」
「パッピーエンドじゃないかな。これで。」
いつも読んでくれてありがとうございます!
投稿頻度上げるとはなんだったのか。




