どうしてこうなった…
刈り取った羊の毛をもって帰った練は、ルミナの服を急ピッチで作り始めた。
「では、初めましょうか 金子練の3秒間アルケミングのコーナー!今回はこのでか羊の毛が素材です!
『それではいきましょう!』
そして出来上がってたのがこちらです!
羊の糸を視認不可能なレベルに分解してつくった白いワンピース!肌触りもまるでシルクのよう…これもう別物だな。」
一応彼は、毛が舞ったりしても良いように外で錬金術を使ったのだが、余計な心配だったようだ。
「ルミナ~ただいま~」
『パパ!お帰りなさい!』
(あぁ心が洗われるようだぁ…っ!ルミナこそ…マイ、エンジェル…)
「ほら…服作ってみたよ〜!」
『わぁ!ありがとうパパ!』
(あぁ心が洗われry
『だーい好き!』
(あぁry
これが、主人公である。
「完全に俺のエンジェルが寝静まったころ…俺は秘密の特訓をすることにした…」
・異世界転移の特典その1
「俺のエンジェル」なんて気味が悪い台詞を吐けるようになります!
やはり異世界のロマンといえば…魔法ッ!なので、彼は魔法を練習することにした。
「うーん何をするべきか………ではテンプレに沿い…魔力を放出するところから始めようか!」
気分は完全に黒魔術師。
今時の学生らしく、電子図書で買った本の内容を思い出し、『テンプレ』を開始する。
「うーん ぬぅん! 魔力ッ!『出ろぉぉぉぉぉッッ!!』」
妙な手応えと同時にーーー
(あ、錬金ちゃった)
ーー手の上にちょっと冷たい紫色の謎物質が現れた。
かなり拍子抜けし、軽く意気消沈した彼は、錬金術の汎用性の高さに驚愕を覚えつつ口を開く。
「…『炎』」
すると手の上の謎物質が炎へと変わった。
何故か掌が火傷しないのかは不明だが、それも魔法なのかも知れない。
(よし!これを錬金魔術と名付けよう…そしてッ!)
練は自らの手を顔に当てて…そのまま目を覆いたくなるような厨二なセリフを放った。
「ふはははははッ!我は既に究極の魔術を習得したァ…刮目せよッ!我から『いでし』魔力よッ!我が手中にて!光をも焼き尽くす闇の焔と『成れ!』ダークネスフレイム!」
・異世界特典その2
✝️孤高の黒魔術師✝️になれます!
その光をも焼き尽くす闇の焔が樹に当たって燃えた。
「やべ!魔力『出ろ!』大量の水に『成って飛んでけ!』」
光をも焼き尽くす闇の焔は、適当な錬金呪文に鎮火された。
ロマンだけが溢れた行動に、合理性を突き詰めた行動が負けるハズが無いのだ。
「悲しいなぁ…あっ…!!」
そう、魔法が使えるとなれば…異世界ファンタジーに求められるアレ。
「魔法剣が使えるかもしれない!」
或いは属性剣。剣の刀身に魔力を宿し魔法と物理、両方からのアプローチで敵を滅ぼす。
超かっこいい!
「魔力『出ろ!』これを剣の刃の部分に塗って…なんかねっとりしてるぅ…ね〇ね〇ね〇ねのブドウ味みたい…」
「それじゃ、ゴホン 剣よ!風を『纏え!』」
これで風の魔法剣の完成だ。
なんか剣閃をぶっ飛ばして攻撃するが多いような、そんな感じの属性だ。
「いくぞ!くらえ!ウィンドスラッシュ!」
調子に、乗っていた。
さっきの✝️ダークネスフレイム✝️の余りの弱さに感覚が狂っていた。
面白いほどに木々をスパスパ切り取って行く緑の剣閃。
『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がry
急上昇するレベル。
「錬金ちまったぁぁぁぁ!!」
酷いことに、目の前は伐採された樹と真っ二つになった魔物でいっぱいになっていた。
(どうしようとてもまずいっ!この先にもし人がいたら俺は無差別殺戮者じゃないか!…ルミナを連れてこの先へいくか…?)
ドドドドド
「おい、何か聞こえないか?」
「いいや?」
ドドドドドドドドドド
「やっぱり聞こえるよ!」
「やっぱ俺も聞こえたわ」
唐突な爆発音に似た何かが目の前の大木をザワザワと揺らした。
そして二人の衛兵をウィンドスラッシュの残り風がなでた。
「「へ?」」
目の前の、丁度二人の間の大木が受け止めてくれたお陰で助かったのだ。
目の前の薙ぎ倒された木々、もしこの大木が目の前になければ…?
「ほ、ほ、報告だ!」
「そ、そうだ報告しよう!」
そうして二人の獣人の衛兵は報告するため夜の道を走り抜けるのであった。
「それじゃいくぞ、手を繋いでくれる?ルミナ?」
『はい、パパ!いつでもおっけー!』
「よし!じゃこの先へ『移動!』」
これは考案者俺、使用者俺の素晴らしい技だ!その名も練金転移!ある程度の情報…見えてたり、地名とかが有ればそこまで移動可能ッ!!!
(戻れちゃったんだよな…日本に)
「では、ゴホン日本の我が家に『移動』!!」
(あ、あれここは…ま、まさか!また練金ちゃったのかっ!?)
「でも…俺の部屋…戻ってこれたのか。」
取り敢えず、練は外へ出る。
暖かな食事が置かれたままの家には、何故か誰も居なかったからだ。
「こんにちは」
仲が良かったとは言い難いが、悪くも無かった先生からの一方的な無視。
「ちょっと!先生!」
スカッ、そんな擬音が正しく似合う空振り。
死んだ事に気付かない少年のような状況。
練の手は先生を貫通し、結果的には
「…そういうことか」
チートを手にしても無理なことなんてあるんだ。
そう心の中で呟き、俺はため息をついた。
「……かーえろっと、異世界の我が家に『移動!』」
『どうしたの?パパ』
「いいや今回は成功したって思ってさ」
『変なパパー』
昨日出来た道で二人が笑う。
すると……
「おい!そこの貴様らァ!急に現れて!何をした!」
獣耳のお姉さん。詳しく言うと犬耳のお姉さん。
獣人らしく(?)露出が高いビキニアーマー。
そして短いスカートから漏れた尻尾がピンと立っていた。
後ろにいる部下らしい男は、それに慣れているようで、そそくさと門の後ろに隠れた。
「え?錬金術使っただけ…」
だ が き か ん 。
ロリコン。幼女を至高とする者。
「冗談はもういい、では聞く!これをやったのは貴様らか!」
「…本当に、すいません」
「ん?もう一度聞く!これをやったのは貴様か?」
「すいません!反省しています!すいませんッ!!」
「え?これをやったの?どうやって?」
「え?錬金術ですぱーっと」
「え?」「え?」「錬金術で?」「はい」「本当に?」「はい」
「…嘘をつくなぁぁぁぁッ!」「嘘じゃないです!」
「じゃあやってみせろ!」
「責任とって下さいよ!」
「良いだろう!」
「じゃあ遠慮なく… 我から『出し』魔力よ!我が剣に風となりて『宿れ!』 『翔べ!』ウィンドスラッシュ!」
ルミナの前なので、カッコつけました。
スパパパパパパパパパパパパパパパパパーーン!!
「進め!そして獣人を捕らえるのだ!」
現在、丁度エティアルがアビルの命令を受け進軍していたとき。
「ん?何の音だ?」
スパパパパパパパパパパパパパパパパパーーン!!
「ッ!総員伏せろッ!!」
エティアルが的確な判断を行うがもう遅い。
「なっなに!」
半分こ、又は風圧に吹き飛ばされ木々に激突。
既にエティアルの部下の半数以上は天界へと旅立っていた。
「そんな、馬鹿な…くっ総員撤退!」
『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がry
「ふふふ、責任とってくれるんですよねぇ?」
一応、被害を少なくする為に縦切りにしたのだが。
「くっ………わ、私の身体でよければ…」
答えは、一瞬だった。
「あ、いいです、大丈夫です、そういうの。
ホントにいいんで、はい。
あとルミナの教育に悪いんで、やめて下さい。」
ロリコンは
どこまでいっても
ロリコンだ。
「アッハイ」
「ありがとう、練殿、本当にありがとう!」
どうしてこうなったのか。
俺は今、猫耳のおっさんに泣きながらお礼を言われている。
(どうしてこうなった……それより…猫耳のおっさんなんで需要ねーんだよ!どうせなら女の子にしろッ!)
三話目、見てくれてありがとうございます!
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だが更に変更する。