ーーー時空消失ーーー
長めです。
止まっていた時空が、平常運転を開始する。
「うっ!?時間が止まってたのか!
でも、俺が無事ってことは……クロノスちゃん!!」
「馬鹿な真似を……時間稼ぎかしら?時空神?人の為に自分の命を使えるのは美しいけれど……この場合は無駄でしかないわよ?」
その声を聞き、振り向いた先に、『それ』は存在していた。
「な………っ!?……何を……?一体………何を……してるんだ……?…………クロノスちゃん…!!」
まるで、猛獣を捕らえる檻のように多重に展開された二つの魔法陣が、クロノスとアビスを捕らえていた。
それが良くない物だという事は直感的に理解できた。
「…………時空神を、この世から消すんだよ。」
「んなッ!?まさか…『アレ』を起動したの!?」
「……なんだって?どういう事だよ!!!クロノスちゃん!!説明してくれ!!!」
クロノスが閉じ込められている球体に駆け寄り、そう言った。
「時空神は、強過ぎたんだよ。
時を操る能力は、他の神を一方的に殺害できるし、世界を滅ぼす可能性を秘めていた。
だから、ステータスが異様に低いし、信者をまともに増やせないような仕事が回される。
時空神専用の安全装置だって存在する。」
「安全装置…………!?まさか……まさかそれって!?」
「そのペンダント……!!そうか…時空神!!!
そのペンダントを使って、通常なら時空神では発動できないその魔法を起動したといこと!?
だが……まだ間に合うわ!!私が時空神を解放すれば……時空神でなくなればッ!!!」
衝動的に剣を振るった。
しかし、通常ならば物体を貫通し、それを消去するハズの剣は、球体の表面で音を立てて砕けた。
「ごめんね……?練君…………私……勝手に……こんな事しちゃって…………」
「あ……あぁ………ぁぁ………クロノス……ちゃん………」
(俺が……あの時、手伝ってさえいなければ……クロノスちゃんがこれを使うことはなかった…?クロノスちゃんを犠牲にする事はなかった……?)
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
無意識で涙を流した。
非力で、愚かな自分を呪った。
「練君……ごめんね、」
その薄いのに巨大な壁に寄り添ったクロノスがそう言った。
「クロノスちゃん……クロノスちゃんッ!!!俺のせいで………俺のせいでッッッ!!!!俺が弱いから……俺が馬鹿な事したからッッッ!!!!」
「大丈夫だよ、この技は副作用で周りの時も少し戻っちゃうから……。
練君の冒険は最初からになっちゃうけど……私の事もさっぱり忘れてる。
冒険のお助けは出来ないけど……練君なら絶対上手く出来るよ!!」
「……やめろよ。」
「で、でもっ…ちょっとだけ、ほんのちょっとでも……憶えてくれてると嬉しいな………。
……でも、私の事思い出しちゃったら、弱虫な練君は泣いちゃうかな?」
「……やめろよ……!」
「心配しなくても、練君はきっとまたルミナちゃんと逢えるよ!」
「やめろって…!!」
「私が居なくて寂しくても、ルミナちゃんが絶対励ましてくれるからっ!!」
「やめろって言ってるだろ!!!」
「他にも、優しいみんなが居るから……だから!私が居なくても!練君は大丈夫だからっ!!だから……だから!!!だからっ!!!!」
「なんで……そんな自分に替わりがあるみたいな事言ってるんだよ。
ルミナはクロノスちゃんの替わりになんかならない!!クロノスちゃんは…………クロノスちゃんだけなんだよ。」
「それでも!!!練君は忘れるから……だったら…………もういいの。
練君が、苦しまないなら……練君がここで笑顔になれるなら!!!!!」
「じゃあ……クロノスちゃんは……どうなんだよ。」
ポタリ、ポタリと魔法陣の底に水が溜まっていく。
泣いていた。
必死に袖で涙を拭うが、涙は次々と溢れ出す。
「その涙は、なんなんだよ。」
「あ……あれ?……おかしいな。私、覚悟してたハズなんだけどな……!涙が止まらないよ……なんで…?止まってよ…練君の心残りになっちゃうよ!!止まって……止まってよ!!!」
「なんでそんな悲しい事言うんだよ!!!嫌なら嫌だって言えよ!!!!クロノスちゃんが消えるなんて、誰も求めてないんだよ!!!!!そもそも誰がこんな奴倒せないなんて言ったよ!!!!!こんな奴楽勝だッ!!!!……だから……だから!!!!
クロノスちゃんの、本当の気持ちを言えよ…ッ!!
俺がウザいなら……俺が嫌いなら……消えろって、迷惑だって言えよ!!!!」
そこに、一瞬の静寂が生まれた。
そして、クロノスが口を開いた。
「………いきたいよ……れんくんと……いっしょで………みんないっしょで………消えたくない……!!消えたくないよぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「勿論だ……!!!クロノスちゃんを……こんな所で死なせてたまるか……!!!!!
クロノスちゃんを救う為なら……悪魔にでも!!神にでも!!!!命だって魂だって…自分さえも差し出して見せるッッッ!!!!」
「ーーー待ってたぜ、その言葉。」
そう言ったのは、深淵の中の切り札。
いつも読んでくれてありがとうございます。
クロノスちゃんが救えるかどうかは、主人公サマに託されました。




