力を欲する無の象徴
「これで……やっと……!! 『時空神』の力も……私のものに……!!!!!」
「くっ……!『斬』ッ!!!」
脚が動かないのならと、錬金術で無理矢理動かす。
錬金術の能力により、瞬間的な移動と攻撃が終了した。
「…………本当に邪魔しかしないね、この男は!!!『時の支配-停滞-』ッ!!!」
この瞬間、時間が練を排除した。
そして、彼は停滞する。
彼は神ではない、時間に逆らえない只の人間だ。
そして、時に囚われた結果を予測するのは、
「…………!!!!練君!!!」
とてもかんたんなことだった。
「ところで、この魔法陣…私も使えるのかしら?」
「ッ!?」
彼女が、パラレルタイム、その魔法陣を指してそう言った。
「平行時間-12-」
その瞬間、パラレルタイムにより存在していたクロノスの時空に、アビスが現れた。
「さてと……」
ギュン!という音が鳴る。
能力が上昇していなければ、戦うはおろか、姿を捉える事すら不可能だっただろう。
しかし、目で追えるだけなのだ、今度は身体の向き変更が間に合わない。
まるで、こちらが0.1倍速になったかのような現実に、クロノスはただ立ち尽くすしか出来なかった。
「錬金術師が居なくなった途端にこんなになっちゃってさ……。
なんの面白味も無いんだけど。ちゃんとやってくれる?
こんな弱い奴の為に、こんなに頑張っちゃったって、思いたくないんだよね。」
首が万力のような力で掴まれ、そのまま持ち上げられる。
他の時空のクロノスも同じ様に掴まれ、身動きが取れなくなっている。
「ぅ……ぐ……ぅ………!!!!」
なんとか逃れようと対抗するが、その行為は完全に無駄に終わる。
力量が違いすぎるのだ。
「ま、いいか。この力は便利だし。
でも、代わりに時空神サマには……金子練惨殺ショーを特等席でご覧頂こうか!!!」
抵抗する力が更に強まった。
全身を使って必死に暴れるが、アビスの腕はビクともしない。
「そうそう……雑魚なら雑魚らしく、そうやって最後まで抵抗してくれよ!!!!ほら!ほら!!ほらッ!!!」
涙を浮かべる時空神をニンマリとした笑みで見つめた後、それはそう言った。
「頑張ったね!!最期に私からのとびっきりのプレゼント!」
首を締め付ける力が緩んだ。
なんとか気道を確保したクロノスが暴れるのをやめ、ゆっくりと口を開いた。
荒い呼吸音が空間に響いた。
「さぁ、言いなよ、お別れを。
もしかしたら……その言葉で愛しの練君が覚醒して、私に勝つかも…………ね?」
クロノスはゆっくりと、言葉を投げかける。
「……練君…………ごめんね……?」
その声は震えていた。
そして、全てを振り切った表情でアビスをにらめ付けた。
「お別れはもう良いかな?」
「……平行時間零」
銀色のペンダントが鈍く光った。
いつも読んでくれてありがとうございます。




