伊達に時間支配してないよ。
今日はちょっと長めですよ!
その時計の針のような剣を携えた少女が目の前に現れた。
「ば、馬鹿な…!!いつからここに居たの……!!!!いや、それよりも……何故私は気付けなかったの?」
突然、クチュンという音を立てて天井から真っ黒な粘着質な物質が落下した。
「内通者だよ、アビス……いや、タイプAと言った方がいいか…?」
その黒い水溜りから人影が現れた。
それは、ただの少年だった。
だが、この場においては、この瞬間には彼が一番のジョーカーだった。
「15番……!?貴様ァァァァ!!!!私をその名で呼ぶなァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
超音速の刺突が少年に迫るが、少年は動じない。
その少年も同じく深淵であるからだ。
「あははははっ!!!そうだ!そうだよなぁ!!タイプAは失敗作だもんなぁ!!そんなゴミみたいな名前嫌だよなぁッッッッ!!!!!!」
「練君っ!これっ!」
そうして、鞘ごと剣が放り投げられた。
剣だけを受け取り、鞘を投げ捨てる。
「…コレは……!!エクスブレイカー!?」
なんの装飾もないその剣は、触れた全てを消し飛ばす能力の象徴だ。
「ううん、『X-ブレイカー』もう1人の練君……ええっと、神様の方が作ってくれたの!」
思い出されるのは、無口なクラスメイト。
「ラン……よし、これで戦える!!」
「………ねぇ。」
アビスの攻撃の手が止まる。
そして、ゆっくりと練を覗いた。
さっきの15番と呼ばれた深淵が練の左腕に巻き付いた。
「私と、戦う?じゃあ、交渉は無しで良いんだよね。
そこの子も、あの子達も、どうしても良いってことだよね。
それが、君の選択なんだよね?」
そして、眩しく歪んだ笑みでその女神は言った。
「じゃあ、みんな食べちゃうよ。
まずお前を食べてから、お前にみんなを食べさせるよ。
良いよね。だって、どうなってもいいんだもんね!
交渉を切り捨てたのはそっちだぞ?後悔するなよ…ッ!!!」
「そんな事…『させてたまるか』ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
意思の強さに反応し、錬金術が発動した。
………だが、それは無意味に終わった。
「ねぇ、勘違いしてない?私の事を、無限に再生する木偶の坊か何かとさぁ?」
彼女は、幼い声でそう答えた。
「ば、馬鹿な……ルミナだと…!?」
彼を表す言葉の一つ、『ロリコン』。
そして、ルミナ達を守りたいという、強い意思。
それが自動的に攻撃を不能にしたのだ。
「……れ、練君………?練君が、2人…!?」
時空神がそう言った。
全く状況が理解できない。
何故なら、ここには、ルミナの姿をしたアビスと、練、そしてクロノスしか存在しないからだ。
「『色欲』の能力だよ。相手が最も望む姿を見せる能力。
ま、誰の事を一番に考えていたかだね。」
「そして、」と彼女は更に続けた。
「『魔導記憶』-『勇者』」
全てを喰らい、光しか残さない勇者の力の記憶が断続的に放たれる。
「く………うおおぉぉぉぉ!!!!!」
全ての弾幕をX-ブレイカーを消失させる。
クロノスは時を止めて逃げ回る。
「『試練』」
その瞬間、弾幕が変更される。
「『地神』、『水神』、『風神』、『暗黒神』。」
突如、回転刃が虚空より現れ、飛来する。
切り裂き、消し飛ばすが、
「ぐッ!?」
消し飛ばす前に針に変化して発射される。
更に、漏れ出した血が操作され、追撃がかかる。
それを錬金術で切り裂き、消失させる。
「練くっ!?」
だが、アビスは助け合いすら許さない。
暗黒の能力で、クロノスの陰に隠れていた深淵が、足を引っ張り、それごと風神の能力で切り裂く。
「うぁっ……くぅっ……!!」
「わかった?1人2人分の能力で勝てると思わないで欲しいわ。
だってこっちは……千数百年分の死人の能力を、全部使える。」
いつも読んでくれてありがとうございます!!
アビス、やはり強敵。




