本気で臨んだ親子喧嘩
「そうだ…リカート…それでいい…!!僕を超えて見せろォォォォォォォォ!!!!!!!」
さっきの会話は、本当に短い時間だったのかも知れない。
それも、死へと向かい行く父兄への、最期の時間。
「親父ィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!」
ステータスゼロやマイナス。
そんな子供騙しじゃない本気。
魔導記憶に記された魔法が、世界を埋め尽くす。
それを全くものともしない。
「バカなッ!?そんな…コトがっ!?」
黒い空間で神が机を叩く。
余裕をかまして飲んでいた紅茶が机から落下した。
「クソっ……クソっクソっクソッ!!!なんでうまくいかないッ!!!なんで…なんでお前らはそこまでして私を貶めようとするッ!!!!クソぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
超高速、振りかぶった拳が魔法を起動する前にいなし、弾く。
こんな芸当を…何故できるのか。誰も…世界すら、もっと言えばリカートですら知らなかった。
彼は、ゼロに近いステータスで動いていたのだ。
つまりは、普通に筋トレになっていた。
ゼロに何を掛けてもゼロ。
しかし、彼はゼロに近いそのステータスを『1』並みにする事が出来たのだ。
「リカート…やっぱりお前は天才だった…ッ!!!」
「ウォォォォォオオオアアアァァァァぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
世界が、許容量以上の力を与えられ、軋んだ。
まるで大気圏に突入する隕石の様に、拳の周囲が朱を放った。
ーーーこれが、正義によって覚醒した男の拳だ。
ーーーここは、洞窟周辺のテント。
「く…ぅ………」
何故か周囲は騒がしい。
頭も、体も重い。
「目を覚ましましたかっ!!良かった!さぁ!早くここを……」
彼は、皇子だった。
頭に巻かれた純白の包帯以外は、全ていつも通り……
いや、腰に剣が下げられていない。
逆に言えば、それ以外は全部いつも通りだった。
「そうか…僕は殴られて…」
頭の包帯に優しく触れ、直前の記憶を呼び起こす。
少女に剣でぶん殴られた。
防御が遅れれば即死だった。
「安心してくれ…僕は大丈夫だ。」
「…皇子…?皇子はその…いつから『僕』なんて言うようになったので?」
その皇子は、『皇子』がしないような儚げな笑みを浮かべ、簡易ベットから体を下ろした。
「さあね…僕はいつから僕なんて言うようになったんだろう。」
いつも読んでくれてありがとうございます!!!
この皇子…何奴っ!




