『夢』ってのは、大体万国共通。
「……全員分の力でも脱出出来ない…!?」
…と言っても、床ぶち抜いて脱出しようなんて方法、出来る奴の方がおかしい、現実的に実行は難しいだろう。
『…じゃあ端っこまで…走ってみる?』
ーーーーーーーー数分後。
「……端っこってどこ?」
走ったのは確かに数分間だけだった。
だが、全員が全員、レーシングカーを追い越すくらいの速さで走ったので、大体100kmぐらい走破した。
ーーーそこまで行けば、走るというより疾るなのでは…?
しかし、それでも風景は一切変わらない。
ーーーそう、一切変わらない。
「やっと確信が持てた…もしかしなくてもループしてるよね。背景変わってないし…」
面倒臭そうに肩を竦めたシアルは、完全にお手上げ状態といわんばかりに壁にもたれかかっていた。
アルズが溜息を吐いた。
「ならば、一体どういう仕組みでループを繰り返している?一体いつからこのループに囚われたのだ?」
アルズが苛立ちを隠せない程の乱暴さで床に座った。
確かに、誰もが苛立ちを感じていた。
閉鎖空間で同じ風景ばかり、そんな状況じゃ誰でも気が滅入るだろう。
『私は外に出られるよ!』
ディフォルメのそれが、こちらにアピールしてきた。
男衆全員が、紅一点の少女の肩を掴んだ。
日本ならセクハラで訴えられるが、ここは異世界だ。
「外に…出られるのか!?」
ホワイトボードがひっくり返った。
するとその面には、ディフォルメされたクレイズが焦った表情で「ちょっとまって!」
というセリフを発していた。
我に返った男共がそれぞれ壁にもたれかかった。
『私は、人の夢に入り込んで、その人の枕元まで移動できます。…それを使います。』
それはつまり、紅一点がこの場から離脱するという事であって。
それはつまり、この密閉空間が男衆だらけの空間に変わるということでーーーー!!!
「…じゃあ、早くお願い。んでもって頑張れー」
シアルが眠り始めた。
サボっている訳ではない、自身の休息とクレイズの避難所の作成を同時にこなしたのだ。
…それはつまり、赤の他人のエイトとアルズ、2人をそのまま放置するということで。
『では諸君!また会おう!』
クレイズの姿が消えた。
エイトが、口を何度もパクパクさせているが、言葉が出てこない。
アルズの首が、壊れた玩具のように左を向く。
エイトと目が合った。
…果てしなく、気まずかった。
「…………」
彼女の意思を翻訳するとすれば、
「チッ…んだァ?かったるいなァオイ」
ではなく、
「…こ、これはまさか!?」
表情筋を鍛えたのが効いているのか、表情が恐怖に染まっている(当社比)ように見える。
「ねぇねぇ!おねーちゃんが起きたよ?」
クレイズの背後から、聞き覚えのない声がする。
「ホントだホントだ!!おねーちゃんすごーい!出れたんだね!あそこから!」
それは、2人の少年だった。
双子なのだろうか、非常に似ている。
彼女が息を飲む。
「…………っ!!!」
だが、彼女が驚いたのはそこではない。
地面に、まるで死体のように転がるなにかに見覚えがある。
さっきまで話していた全員が眠っていた。
驚きは、既に恐怖に置き換わっていた。
いつも読んでくれてありがとうございます!
クライマックスは終わらねぇ!!




