信じる故に、手を離す。
空を切り、龍が飛翔する。
ツクヨミさんが、結界を張っているお陰で、風の影響を受けていないが、もし、結界が無かったらと思うとゾッとする。
「…もうすぐ、穴の近くに到着するよ!」
近くで見る穴は、遠くで見た時よりも数十倍大きく、深淵という存在のスケールの大きさを実感させられた。
突然、ガキンという硬質な音が響く。
「やっぱり、簡単には行かせてくれないみたいだね!!」
穴の内側には、何百体もの、夥しい数の深淵が待ち構えていた。
それぞれが、魔法や槍など、遠距離攻撃を放つ。
幾千と放たれたそれは、いくら賢龍の結界であろうとも、次々と破壊していく。
「ッ!!!マズイ…このままじゃ…!!!」
出来る事ならば、この身を犠牲にしてでも、背に乗る娘達を最期まで送り届けたい。
しかし、それは最悪の選択肢だ。
彼女達を護る筈が、彼女達を害する最悪の敵として、立ちはだかる事になる。
「ーーーッッッ!!!!多過ぎます!撃ち落とせません!!」
シルフィアが、戦闘機の放つフレアの様な魔法を周囲に展開するが、一部はどうしてもすり抜けてしまう。
結界は、もう持たない。
「ーーーお願いなのっっっ!!!!ママーーーッッッ!!!!」
ルミナが、叫んだ。
ルミナが、望んだ事を、理解した。
それ故に、一瞬迷った。
そして一言。
「ルミナは…本当に自慢の娘だよっ…!!!」
空中で、静止する。
慣性の法則で、前へと投げ出された練達を、その尻尾で、精一杯弾き飛ばす。
「ーーー私は…ここまでだ、頼んだよ…」
槍が、行き場を失った。
龍が消失したのだ。
空中に投げ出された練の首根っこを、誰かが掴んだ。
「うわぁぁぁぁぁ!!!ってルミナ!?」
「パパ!ママの分まで、頑張るの!!」
ルミナは龍人形態になっていた。
尻尾でシルフィアがグルグル巻きにされて、なんとか同行できている。
「うぅ…ハッ!お兄様!この地帯は後300メートル程で終わりです!」
思い出したかの様に、結界を貼り直したシルフィアが、そう告げた。
『ご主兄様!!後ろだよ!』
見れば、後ろに天使が数体追従していた。
まるで関係ないとばかりに対空砲火は止まない。
「お兄様!今ッ!!」
結界に一瞬だけ穴が開いた。
「くっ…『当たれ』ッ!!!」
バラ撒いた銃弾が天使に全弾ヒットし、拘束する。
「後もうちょっとなの!!!」
序の口まで、後少しだ。
いつも読んでくれてありがとうございます!!!
ノルマ不達成☆
すみません…




