長い時間は短く、短い時間はもっと短く。
すみません。
超遅刻しました…!!!
ーーー俺が、錬金術の使い過ぎで死にかけた日から、大体1ヶ月が過ぎた。
そして今、空の向こうが、黒色に染まり始めた。
「あの深淵…嘘言ってなかったんだな…もっと遅くても良かったんだけどな」
完全に使いこなせる様になった、錬金術は暴発しない。
窓枠に手を掛け、飛び降りる。
「行かなきゃ…ダメだろ」
みんなには、毎日空を見る様に言っている。
恐らく、あの空の色を見た全員が、戦場へと向かっているだろう。
彼も、朝陽と逆の方向に走り出した。
ーーー戦場に、到着していたのは、珍しく彼だった。
「…………」
タッチと同時にシャンシャンと、軽快な音が流れる。
真剣な眼差しは、全て小型端末の画面へと注がれている。
「おや?ゴミ屑クソニート、誰か来ましたよ」
アルズと、そのメイド、蛍が同着1位だ。
練は、自分が一番早かった事と、アルズが早く来ている事に驚いた。
「よう、二人共!早いな!」
手を挙げて、挨拶をする、アルズは寝転がったまま、蛍が代わりに完璧な礼をする。
「…恐らく、決戦までは時間があると思われますので…紅茶は、お好きでしょうか。」
そう言いながら、彼女がスカートをたくし上げると、ゴトンという音と共に、机と何らかの箱が落ちてきた。
「いや、紅茶好きだけど!……それどういう仕組み?」
「メイドパワーです」
「は…?」
「 メ イ ド パ ワ ー で す 」
「 な る ほ ど ぉ 」
彼女は紅茶を淹れる、箱の中身はティーセットだったようだ。
「…紅茶か……戦いが終わったら…執事さんに………え?ヤバイ、無意識だった。なんで死亡フラグ立ててんの?怖怖怖怖ッ!!」
彼は考える、もしかして、世界の声の仕業だろうか?
だとすれば、菓子折りがアレルギーで食べられなかったに違いない。
「死亡フラグが生えるのはよくある事です。特に大きな戦いの前は…」
紅茶を注ぐ音、荒野の風の音、音ゲーの音。
しかし、今、命運が決まろうとしている、この世界は静かだった。
この先の運命に抗わず、俺達の選択に身を任せる様に静かだった。
「パパーー!!!!!」
紅茶を持つ、一瞬手前にその声が聞こえた。
反射的に振り向き、ルミナを抱き締める。
更に地を蹴り、紅茶に当たらぬように進行方向を右にずらす、更に転がり受け身。
「ルミナぁぁぁぁぁ!!!!!おはよぉぉぉぉぉ!!!!!!」
決戦当日にすら、この親子は変わらない。
流石と、言うべきだろう。
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