自分とは何か、
その問いは、最後まで完成させる事は出来ない。
何故なら、常に変わり続けるものであるからだ。
だから、自ら…ましてや他人に書き示せるものでも無い。
「離し…やがれっ!!!」
首を掴まれ、苦し紛れに放つ一言。
その返答は、意外なものだった。
「クククク……良かろう!」
「何…?」
一瞬、首を絞める力が弱まった。
チャンスとばかりにこの状況から脱却しようとする。
………だが。
「このまま喉を引き千切りィィィィィ!!!!!!!頭と胴を真っ二つに引き離してくれるわぁぁぁぁッッッッッッ!!!!!」
一瞬の緩みは、更なる威力を引き出すための準備だった。
どんどんと、細い首が絞められる。
「んんんンンンッッッッッッ!!!!!」
喉を絞められながらも、何とか体を捻り、蹴りを右腕に決める。
打たれ慣れていないのか、彼は思わず手を離した。
「ゲホッゲホッ……くそッ!!」
悪態をつきながらの後退、恐らくもう…次は無いだろう。
「くっ……中々良い一撃だが、幼女を狩りまくり、レベルアップした俺を倒すには……弱過ぎるな。」
その瞬間、起こったのは、激しい怒り。
体の感覚、観ている風景、発する言葉、今までの記憶でさえも、他人事のようにに感じていた。
だが、この瞬間、さっきまで、感じていた全てが、劇的に変わった。
「うぉらぁぁぁぁ!!!!!」
瞬間、放たれる飛び回し蹴り、それは顔に、吸い込まれるかのようにヒットした。
その一撃に驚き、顔を赤くし、仰け反った。
「ぐぉぉぉッッ!!!つ、強い!?なんだこれは…!!」
痛そうに、頰を押さえる、顔ばかり攻撃される不憫さ。
しかし、幼女を殺してきたので文句は言えないのだ。
「今までの強さは…オレの強さじゃ……自分の強さじゃなかった」
「何が…何が言いたい!!!」
顔を押さえたまま、立ち上がり、空いた手で此方を指差す。
練が…いや、彼女が口を開く。
「オレは、金子練を演じるピエロだ………
さっきまでの話だがな」
さっきまで、揺れに揺れていた感情、視線、行動。
全てを、一貫する柱が立った。
『オレはオレだ』
記憶の通りに、金子練を演じ続けた、金子練を、まるで本物の様に再現した。
「こっからは…金子練じゃない、オレの、全てだ。
オレが生まれたのは、さっきじゃない、今この瞬間だッッッ!!!!」
それに、呼応するかのように、脳内に世界の声が響く。
『称号:勇しき者 を獲得しました。
それに伴い、スキル:勇者 を獲得しました。』
その声を聞き、彼女はニヤリと笑った。
「魔王を倒せるのは勇者だけ……どうやら、役者は揃ったみたいだぜ?」
姿が変わるーーー白銀の鎧、光を放つ刀身、黒かった髪は白く染まった。
「勇者…だと!?」
しかし、答えは、確かにある。
自らに存在する心、立ち振る舞い、記憶。
それが、自分を表す。
いつも読んでくれてありがとうございます。




