冒険とは、神の悪戯である。
『称号:002を獲得しました…貴方の魂の現在地を特定できません。別次元であると仮定します』
「…そうか、別次元………か」
俺は、内心歓喜していた。
彼女達が自分の命を狙う様な、人間でないという事が分かったからだ。
…と、耳が背後の草叢が動く音を捉えた。
「なんだ?またか?」
草叢の中から出て来たのは、蜥蜴…の子供だった。
上を見上げると…親なのだろうか、葉の隙間から巨大な龍の腹が見えた。
「マジかよ…」
龍が膝上に乗ってきた。そして、こちらを見たかと思うと、その細長い舌で顔を舐めてきた。
そして最後に「くあぁ」と鳴き、眠った。
「魔物は…基本的に、人を襲う。子供だろうが、大人になろうが、人語を話そうが、人を襲う」
だが、コイツは如何だろうか。
人を襲うどころか、まるで、飼い慣らされた犬、猫の様にじゃれ付く、上空の親が、ゆっくり降りてくる。
それにも関わらず、地響きが起こった。
そして、大きく口を開く。遂に本性を見せたか、今に俺を食うぞ!(ドM)
「すみません、ウチの子がご迷惑をおかけしていませんか?」
…なんて、フレンドリーな龍なんでしょうか。
そこには、既に威厳の欠片も無かった。
しかも、なんかすごく笑顔に見えてきた、目の錯覚かな?
「だ、大丈夫ですか!?ウチの子、重過ぎましたか!?」
子供の重量で人が潰れるのを心配する龍。
ものすごいパワーワードである。
生きてる内に使ったのは俺ぐらいだろう。
「だ、大丈夫です。いえ、寧ろ可愛い子を抱かせて(?)もらって最高ですよ!」
ロリコンちゃうやん。そう思う人もいるだろう。
しかし、彼はロリコンである前に、一児の父なのである。
「それは良かったです!…すみません、この子をもう少し寝かしてあげても……」
「あぁ、ああ!いいですよ!勿論勿論!」
そこで、やっと俺は理解した。
この世界では、好感度は逆転する。
元の世界での好感度が高い程、嫌われ、元の世界での好感度が低い程、好かれるのだ…
そうなると、世界の声さんは俺の事が嫌いだったり?
「…この世界の事、誰かに聞かなきゃならない……一番親身に教えてくれそうな奴……つまり…俺の事が一番嫌いな奴に会いに行かなきゃいけないって事か?」
俺の事があの世界で一番嫌いな奴、俺は一瞬で思いついた。
取り敢えず、この龍の子が起きるまでは、ここにいよう。
いつも読んでくれてありがとうございます!!
世界の声さんが『称号:001を〜』とか言うのは、エマージェンシーコードで、それを介さないとある程度自由に話せないからです。
つまり…世界の声さんが自由に話せるのは、残り…997回……




