魔力欠乏症
「馬鹿な……金子練…だって?アイツは魂の器に閉じ込めていたはずッ!!」
脱力感が更に増して行く、いや、それどころではない、身体を構築していた要素がどんどん喪われて行く
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!ばかな…馬鹿なぁぁあぁあぁぁ!!!!!!」
そして半壊した肉体に囚われていた龍、それは自由になった、自由を謳歌する様に、翼を大きく、何度もはためかせた
『教えてあげよう、【金子練】は私を依代にして召喚した異世界人だ、つまり、私が解放された時点で【金子練】はその形を保つ事は出来ないよ、そもそも、その膨大な魔力は元々私のだし』
その言葉はアビスに伝わらない、そんな『事実』なんてどうでも良いからだ、彼女が知りたいのはこの状況で、自分が助かる『方法』だ
「ぐぉぉぉぉぁぁぁあぁ!!!!私を助けろ!!錬金術ッ!!!どうした!!!発動しろぉぉぉぉぉ!!!!!」
しかし、その声は虚しく響くばかりで一向に錬金術は発動しなかった、これ程に助かりたいと願っているのに、『錬金術』は発動しない
「それは何故か、おかしいと思うよなぁ?『錬金術』の不具合?故障?いいや、断じて違う」
そして、彼はその大鎌を正面に構えて言った
「『収穫』したのさ、『錬金術』を、1つ残らず!!!」
あの行為、一見無駄に見えたが、しっかりと意味は有ったのだ
『そして、その『錬金術』を媒体に、金子練を召喚し直す』
アビスの外見が更に崩れる、既に言葉も発せない状態なのか、呻き声と叫び声の中間辺りの声で意味も無く喚き散らすだけだった
「………ただいま」
召喚されたのは、紛れも無く金子練だった
「………お帰り、練く……ん?」
「………お帰りなさい、ご主兄…様……?」
どちらも金子練だった、そうどちらも
「何故俺まで……」
そう、アナザー練とでも呼ぼうか、なんとそいつまで召喚されてしまったのだ
「………取り敢えず、彼氏候補君、錬金術は返そう」
収穫した錬金術を返す、側から見れば『無』を手渡しているのでかなり奇妙な光景だ
「グギャァァァァ!!!………そろそろ娘の所に行ってあげたら?」
突然、アビスが話し始めた、まるで今迄の痛みが、焦りが嘘だったかの様に、嫌な予感がした、それ故に、練とツクヨミは直ぐに『移動』した
「ククククク……行っちゃった、私が態々有利になる事を教えるお助けキャラに見えるのかなぁ……?まぁ、娘の死体を真っ先に見たいなら……アハハハハ……それもいいんじゃないかなァ………」
そう言った後、彼女は消え去った、その場にはシリアスは雰囲気だけが残った
いつも読んでくれてありがとうございます!!!
「ルミナちゃん……死んじゃうんですか…?」
(目を潤ませた上目遣い)
死にませぇぇぇぇぇん!!!!死なせませーーーん!!!もし死ぬ雰囲気でもギャグ補正掛けて生かす〜〜!!!!ざんねーーーん!!!
(それは彼の最期の言葉だった)




