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錬金術のおかげで生き延びました

「金子練…邪神の遣いの始末が終わりました。」


静寂を破り、騎士が台詞を吐く。

さっきまで、おっさんで賑わっていた部屋にはもう、2人しか残っていなかった。


「おおエティアルよ、よくぞ戻った。

…実は今日アビス様から神託があってな『もう一度召喚の儀を行えと』

……アビス様に刃向かう獣人どもをまた集めなければいかんなぁ?」


まるで、「やってくれるよなぁ」と言わんばかりのその台詞に、エティアルは目を閉じ、膝をついたまま答えた。


「お任せください、王よ。」


「おお!行ってくれるか、エティアルよ。」


非常にワザとらしくそう告げた。

多分こいつの支持率はとても悪いのだろう。

この世界に支持率という概念があるのかは不明だが。


「ハッ仰せのままに」


なんの嫌気も見せず騎士団長が答えた。

そのまま命令を遂行しようと、立ち上がり振り返った騎士に、更に王は声をかける。


「それにしても…獣人は馬鹿の集まりではないのか?アビス様を信仰せず、邪神である悪戯の女神トレイアばかり崇めおる……そう思わぬかエティアルよ。」


「王の仰る通りでごさいます。」


振り返らずに、エティアルはそう答えた。

王が目を細める。


「…そうか、それでは頼んだぞエティアルよ。」


「ハッ…全ては()()()()()()()()為……」


王の舌打ちに、エティアルは聞こえないフリをし、その場を後にした。




それは、高さ20メートルはあるであろう崖の下での出来事だった。


「眩しっ……って、ん?あれ?……もしかして俺、生きてる……のか?

どういうことだ?」


(俺は確か……あいつだ、エティアルに落とされて……。)


軽く首を振って、ゆっくりと目を開く。

そして、付近をを見渡すと自分を中心に周りが真っ赤に染まっていた事に気付いた。

比喩でもなんでもなく、()()()血の池に練はポツリと座っていたのだ。


「こ、これ、まさか俺の血?……でも身体は痛くないし、背中の傷も治ってる……?」


何故生きていたのか、どうして自分が五体満足なのか、しばらく考えたが、一切答えは出てこない。


「うーん……そんなことを考えても仕方ないか、とにかくここから離れた方がいいな」


そうして彼はこの場を後にした。

眩しいほど、練を照りつける太陽。

その太陽の位置は、練が落とされてからと()()()()()()()()()()



さて、時計の短針が少し動いた頃、


「おっ…アレはもしや!」


練は、遠くの岩肌に不自然に暗い所を見つけた。

どうやら、洞窟らしい。


「取り敢えず入ってみるか。」


小一時間程度歩き続けた成果の中に入ってみると、周りの壁がほんのり光っていて、ここが異世界である事を再度突きつけられたようだった。


「涼しくて快適ぃ!よっし、洞窟なら寝泊まり位はできるかな?」


涼しいというよりむしろ冷たかったが、外は暑かったので丁度良いくらいだ。

そのまま壁に沿って歩いていた練だったが、どうやらあまり広い洞窟ではなかったらしく、十秒程で洞窟の行き止まりに着いてしまった。


「ん?これは……」


そして、洞窟の奥には机と椅子、そして、大きな楕円形の卵のようなものが照らされていた。


「どういう状況だこれ……。」


よくみると机の上には手紙があったが、洞窟の明かりでは暗くて読めない為、練は外へ向かい、手紙を読み始めた。


「ええと、なになに……

『我が同族よこれを読んでいるとき私は死んでいるでしょう』いや俺人間や。

『奥にいる子の名前は決まっています、ルミナと呼んであげて下さい、月の女神ルナからとった名前です』……これもしかしなくても月の女神さん日本人だろこれ絶対!

『どうか大切にしてください』

……で終わりか、机と椅子と卵しかなかったけど……。」


そう言いながら洞窟に入りなおすと──

パキ!パキパキ!

……何かが割れる音がした。

「なんか聞き覚えあるんだよなぁ〜」と、呟きながら歩みを進めていたが、


「あぁ!卵か!」


それを思い出したのは洞窟の最奥にまで到達した瞬間だった。

呑気に「ぽん」と手を打ち鳴らし、そして逃げようとして盛大にこけた。

運動音痴の本領が発揮されてしまったのだ!雑魚gg。


「あいって!くそぅ!日頃から運動しとくべきだった!」


これ、遺言です。

バキィ!

そして遂に殻が完全に砕け散った音がした。

ATK10で運動音痴の彼にはもうなにも出来ない!

あぁ一貫の終わり。あぁさようなら。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


──you are died──


『うぬゅう!』


さてさて、卵の上半分が消し飛び、そこに姿を現したのは圧倒的幼女!

卵の中で伸びたのか、その長い髪は洞窟の僅かな灯りの中、まるで自ら発光するように輝いていた。


「あれ?うぬゅう?」


書き慣れない声に主人公様は困惑していらっしゃるようだが、それはこの卵っ娘も同様!!


「『…………!』」


お互い、お見合いの場で二人きりにされた時のように黙ってお互いの事を見つめていたが、卵の殻から顔を覗かせたまま、この生まれたばかりの幼女は遂に、主人公の性癖を目覚めさせる、ある一言を放ったのだった。


『パ……パ………?』


ズギュゥゥゥゥン!! 練の心にクリティカルヒットした。つまり心肺停止。


『称号:ロリコンを獲得しました』


「な、なんて不名誉な称号だぁ!お、俺はロリコンじゃないぞぉ!……ちょっと前までの話だけど!」


否定出来ないのが悲しい所。

一応ここに再度記しておくが、やっぱり彼がこの作品の主人公だ。

誠に遺憾ながら。


『パパーパパー!』


そして彼は抱きつかれた。全裸の美幼女に!

はい、一貫の終わり。おまわりさーん!


(しかし!俺はこの子の…いやルミナのパパだ!

だから大丈夫!なんにも問題ありません。)


そう自分に言い聞かせているようだが、ダメな事はダメ、おまわりさーん!!!


「るみなぁ~!」


そうして練はルミナに抱きついた、全裸の幼女にだ。


(……児童ポルノ?果たして異世界にどれだけ地球のルールが適用されるのだろうか?この異世界では──少なくとも今は俺がルールだ。)


また、そう自分に言い聞かせる。

………おまわりさァァァん!!!!!!!


『るみな?』


「ルミナの名前だよ」


『るみな、るみな……パパ~ルミナ、パパだーい好き!』


(あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛悶え死にそう!)


そのまま死ね。あとルミナちゃん渡せ。

by素晴らしき紳士達


「パパもだーい好き!」


全裸の幼女に抱き付きながら「だーい好き」だ。

もう一度記しておくが、彼が主人公である。


「────!」


そして突然、練に電撃走る。


(そうだ服を作ろう、ルミナの身体を俺以外にも………俺にも見せてはならないッ!)


練は心の中でそう誓った。

この物語は、錬金術でつよい敵を薙ぎ倒す物語ではない。ロリを愛でる為に錬金術を行使する物語なのだ(嘘)。


「ルミナ、ここでお留守番できる?」


『ルミナ頑張る!』


ルミナ:ニコー!

練:ニチャァ!


(あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛悶え死ぬぅぅぅッッッ!!)


死ね。


(じゃ行ってくるね。)


遂に思ってる事と実際の言葉の区別もつかなくなったようだ。

……彼が主人公である。


『パパ~行ってらっしゃい!』


(あ゛あ゛ぁ゛ry


ふと洞窟を出たところで、練はある事に気付いた。


「あ、そうだ。武器無かったわ。」


そして、くるりと踵を返す。

今の練には、服の素材を集める為の武器、もしくは道具が必要なのだ。


「俺の今の攻撃力は10だからな…よーし錬金術の出番だ!」


洞窟入り口付近の壁に触れ、せっかく手に入れたなら使いたいランキング上位の錬金術を発動した。


「この壁でいいかな?『錬金術発動』!剣よ!我が手中に顕現せよ!!」


すると、見るからにヤバそうな禍々しい剣が出来た。

だがルミナの教育に悪そうだという理由でボツになった。


「うーん…さらに『錬金術発動』ッ!」


すると、テレレレーという効果音が鳴りそうな剣ができた。

これは著作権的には更にヤバそうな剣だった。


「『錬金術ッ!』」


さて、次は────


(ふむ白と黒で彩られた混沌を彷彿とさせるような剣か……シンプルで使いやすそうだ!)


そんな理由で採用された剣が、後からああなるとは作者も知らなかった。

そう、この時は知らなかったのだ……!


(装備はステータスからだったな…じゃあついでにステータスも見るか。)


こいつ心の声と独り言多いな。という読者の皆様方のご指摘がございますでしょうが、暫くはこのスタイルです。ご承知下さい。


「『ステータス』そんで『装備』っと」


名前:金子練

種族:人族

職業:錬金術師

装備:白き剣-ライト 黒き剣-ダークネス

ATK:80(+70)

DEF:45(+30)

INT:195(+70)

MIN:135(+30)

DEX:200(+50)

LUK:50(+25)

HP:150

MP:375

スキル:錬金術 試練 言語理解 苦痛耐性 

称号:異世界人 悪戯神の加護 運動音痴 ロリコン



「うぉっ!?武器の性能すごいな!

……ちょっと詳細を見てみようかな〜」


そう言いながら、武器欄をタップすると、ステータスが何処かへ行き、代わりに武器詳細が投影された。


白き剣-ライト&黒き剣-ダークネス


ATK+70 DEF+30 INT+70 MIN+30 DEX+50 LUK+25


スキルポイント:0


(なるほどスキルポイントで強化できるんだな!進化する武器か!うーんロマンがあるな!

……あと見てないスキルとか称号もあったな…見ておくか。)


苦痛耐性:苦しみや痛みを軽くする


これは気分だけっぽいな。

先に欲しかったぁ……。


ロリコン:性癖の一種、見た目が少女から幼女でないと愛せない


…これはひどい、ちょっと悪意を感じるわ。

うん、とんでもない悪意を。



3分後──


「さぁてとぉ!一狩いきますか!」


ステータスに満足した練が立ち上がり、剣を肩に載せようとしたが、守備力を考慮してやめた。

セルフ袈裟斬りとか洒落にならんからね。

そして森の中を一歩きすると……


「へへへ……!いいモン持ってんじゃねぇか!!(主人公)」


大きな羊を見つけた。

『いいモン』とはそいつのモコモコの事だが……思想も行動も錬金術師ではなく強盗のそれである。


「ハァ!」


威勢よく切りかかったが、ダサくもギリギリ届かずに顔面ダイブ。運動音痴なので。

眼の前の羊も「なんかこけとるわい」とでも言うように徒歩で離れて行ってしまった。


「この!『当たれっ』!!」


姿勢を再度整え、剣を振り上げたが、勿論今度も空振る…………ことはなかった。

 

「え?」


スパーン。

そんな小気味のいい音がしたその時、届かない筈の攻撃で、羊は真っ二つに首を切られ死んでいた。

一番困惑したのは斬られた羊さんだろう。

だがしかし、当人の練も結構困惑していた。


「どういうことだ?…もっかいするか…当たれっ!」


しかし、なにも起こらずに虚しく声が響くだけで、暫く待って何度か剣を振ってみたり、コケてみたりするが、全く錬金術が発動する気配はなかった。


「どういうことだ?じゃあ、この樹を『切れ』。」


ズザァァ…という音を立て、樹が倒れる。

切り株がキレイな切断面になっているという事実は、やはりそれは偶然ではなく、なんらかの力が発動しているらしい、ということを練に推察させた。


「この感覚…錬金術と同じ……か?」


(羊に剣が届いたのは、羊に剣を当てるという現象そのものを錬金して完成させた…ということなのか……。)


さて、訳の分からない理屈だが、実際のところ練は一刻も早くルミナちゃんの服を調達したかったので、そんな理屈でもよかったのだ。

……案外間違いでもない考察なのだが。


(とにかくこいつの毛でも『刈る』か。)


そう思った時、


「……え。」


既に羊の毛は刈り終わっていた。

錬金術ってもしかしなくても勇者スキルよりチートなんじゃね?

練はそう確信したのだった。

勇者スキルとか使ったことないけど!!

二話目、見てくれてありがとうございます!


3/14日、文章を変更しました


が、更に文書を変更してやりました。


……が、更に文章を読みやすくしてやったぜ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定はおもしろい。 [一言] 話が飛び飛びなので倍位に肉付けを。
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