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プロローグ
どうして人は物語を読むのだろう。
何年も何十年も何百年も昔から人は物語を綴り、届け、受け取ってきた。
食べなくては人は死ぬ、住む場所がなければ生活出来ない。 そんな風になくてはならないものというわけでは決してないのに、物語は昔から私たちと共にあった。
当たり前のように物語を綴りだす人。
心を受け取り影響され自らもまた紡ぎだす人。
物語を生み出さなければ生きていけない誰かはいつの時代だっていた。そうして生まれた物語を私たちは読んできた。
生きていくうえで物語が必要のない人もいる。そんなことは皆知っている。それでも。
物語を読まなくたって生きてはいけるけれど、物語がなくてはこの世界で息は出来なかったもしれない。
例えば、私は、そうだった。