元より後悔出来るような身分ではないのだ
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#03 元より後悔出来るような身分ではないのだ
というわけで、僕は現在このクソのような惑星の大地で、相棒と敵地のただ中にいるわけだ。
後悔してるかって?
冗談じゃない、そんな物は訓練期間に嫌と言うほどしたさ。
まさか括弧のない宙兵隊がそのままずばり宙兵隊歩兵の事だとは思わなかったけどな。
まぁいい、どうせ僕のような公共福祉都市出身の人間は艦隊勤務は無理だったらしいと後から知った。
元より後悔できるような身分でもないのだ。
ビラルが項垂れながら帰ってきた、少し離れた場所に落ちた支柱の所へと行っていたのだ。
「どうだった?」
僕の問いにビラルが半ばからひん曲がった壊れたライフルの残骸を僕に見せた。
あの高さから落ちたのだ、原形を保っているだけまだマシだろう。
「ちょうど支柱の下敷き、ついてねぇ」
とビラルがもう片方の手に持った拳銃を見せた。
そちらの方は動作に問題は無いようだ。ライフルとサブアームの拳銃とでは、どちらがついてたかは言うまでも無いが。
僕のライフルは、僕が飛び出す前に多脚装甲服のAIが素早く支柱から腰部マウントラックへ移してくれたので無事だ。
部隊からはぐれて武器はライフル一丁に拳銃二丁、あとは開発部がジョークで付けたともっぱらの噂である近接格闘用武器が二つ。
冗談みたいな状況だ。
「通信でも送ってみるか?」
というビラルの提案に僕は首を横に振る。
今はもう頭部装甲ユニットに覆われて見えないがビラルの声が不安そうだった。
当然、僕も不安だ。
だがそれでも部隊に通信を送るわけにはいかなかった。
「あの森みたいな場所から対空砲火が上がっていた」
と僕が指さすとビラルも顔をそちらに向ける。
「距離が近すぎる、無線を傍受される可能性が高い」
そうなればあのヒトモドキ共の大軍とご対面である、それだけは御免被る。
ではどうするのか、と言えば取れる行動は二つだ。
移動するかとどまるか、だ。
だかそれを決断する前に確認する事がある。
「AI、現在地から集合予定地点へのナビゲートは可能か?」
AIが即答する。ビラルの反応を見るに彼にも聞こえるようにしているようだ。
〈測位用ドローンが衛星軌道上の物も含めて全て撃墜されており正確なナビゲートは出来そうにありません〉
ビラルがあからさまに落胆する。
〈ですが直前までの測位情報がありますのでおおよそでのナビゲートは可能です〉
良かった、これで移動するにしても当て所なくさ迷う事にはならなさそうだ。だが、衛星軌道上の測位用ドローンまで撃墜されているとは思わなかった。
だがそれでも一応は一安心だ。
〈すいません〉
――と、ひと安心した所で更にAIが言葉を重ねる。
〈私の落下時の記録によりますと、降下艇もかなりの回避機動を取っていた事が確認されています。降下予定地点にどれ程の降下艇が無事に着陸できたかは現時点では予測不可能です〉
成る程、最悪は辿り着いたとしても、という事か。
だがそれでもここで救助を待つという選択肢よりはずっとマシだろう。例え少数であってもそこには仲間がいるはずだ。
僕は移動しようと決意した。
後はビラルの同意を得るだけだが……。
「決断はお前に任せるよ」
ビラルは僕が何か言う前にそう言った。
僕はそうか、とだけ答えてそれを了承する。
二人だけとは言え、決断を下すリーダー役を任された事に急に不安を覚える。
初の実戦で敵地に孤立、あげくにリーダーか、なかなかに馬鹿げた状況だ。忘れていた不安が心の中でかま首を上げかけるが、それを奥歯で噛みしめ押さえつける。
数瞬の沈黙に何を思ったか、ビラルが僕を真っ直ぐ見つめる。いつでもお前の命令を受けるぞ、と。
「よし、行こう。AIナビゲートを頼む」
僕は自分でも滑稽だと分かっていたが、出来るだけリーダーらしく聞こえるように言った。
次でドンパチだーーー




