バレンタイン
僕には彼女がいない、だけどいつも一緒にいてくれる人がいた。
「お~い!大和~!」
本を持ちながら近づいてくる女の子に気づきながら、僕は本を立ち読みしていた。
「はい、ストーップ」
そう言って彼女の額に人差し指を当てると、ムッとした顔で睨んできた。
「ちょっと!この距離なに!?」
「これ以上近づくと君が何してくるか分かんないしね」
「ひっどーい」
お互い顔を向き合ったまま笑った。
凄く幸せだった。
このまま永遠に楽しい時間が続けば良いのになぁって、勝手な自尊心を持ちながら本を棚に片付けた。
今度は上に置いてある本を取り、椅子に座って読み始める。そしたら彼女は僕を椅子から落とそうとイタズラを始めた。
「恵、かまってほしいの?」
「遊びたい」
左肩に顔を近づける恵に、僕はどうしたら良いか迷った。葛藤の末見つけ出した答えは、イタズラしてあげることだった。
「恵?」
顔を上げる両頬をつねって変顔を作った。
「んー、ちょっと痛いんだけどー」
そう言うと彼女も仕返しに来た、僕よりもちょっと強めに。そんな事を感じると、僕の事は好きではないのかと思ってしまう。
席を立ち、本をしまってからまた違う本を出し、席に戻ってくると、彼女がいびりをしていた。しかも二席も。
流石の僕もこれには困った。手段としては強引だが、彼女を立たせることだった。とゆうかどかす。
「おい、立て」
「やーだね」
水面下に垂れ下がる怒りの水は徐々に上がっていく。ひとつの席は彼女の上半身が、下半身はもう1つの席に。つまりやることは1つだ。
作戦を1つ練った僕は少し怖いと自分でも理解している。考えも、行動も。
くつろいでる足をどかすべく、ある方法を取った、それは....
「あ!ちょっと!靴紐結ぶの面倒なんだからね!」
靴紐をほどくだ。
よっぽど困ったのか嫌な顔をして1つの席を解放してくれた。そうして空いた席に、満足した顔で座ると、靴紐を結ぶ彼女にどや顔を見せてやった。それに腹が立ったのか僕の腕を数発殴ってきた。すると、何かを思い出したのか、図書室を大急ぎで出で行った。何があったのかさっぱり見当がつかない僕は、再び本を読み始める。
すると、静かにだが誰かが図書室に入ってくる音がした。きっとマナーが分かっている人なんだと勝手に解釈し、本を読む。
段々その足音は近づいてくる、まるで忍びのような足音だった。どうも気にかかったが、変に思われたくなかったので知らない振りをした。以上にも近づく音が気になってしょうがなかったので後ろを振り返った、そっと。
視界に入ったのは恵だった。少し残念そうな顔をした。
「もう~、何で気づいちゃうかな」
その言葉にはさっぱり思い当たる節がない。
照れ隠しをしながら彼女は、後ろてに隠してあったある箱を僕の目の前に出した。
「はいこれ、バレンタインね!」