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第4話『メンヘラ?!』

「…………殺してよ……」

「………………」


 なんだろうか、このワンシーンだけ見るとすっごい俺が悪い感じがする。

 これやられるの室内でほんと良かったわ。外でやられたら警察のお世話になるところだ。

 学校に遅れているというのに、割と余裕な俺はそんなことを思っていた。むしろ遅れているからこそ余裕なのかもしれないな。


「こーとーわーるー」

「あっ……」


 そして掴まれた服を振り払うように歩き出す俺。不審者に同情の余地なし。

 チラッと不審者を見れば、何故か絶望したような表情で俺を見ながら崩れ落ちていた。

 不審者はペタンと女の子座りになり、両手を地面につけてその長い金髪をバサァっと広げながら俯いている。その周囲は心なしかどんよりと空気が淀んでいる気までする。

 人形は操られなければただのゴミ、か。

 そう思うと、少しばかり憐憫でも感じたのか、俺は不審者に声をかけた。


「おいお前、ちゃんと帰れよ?」

「…………やる」

「おい、聞いてん……ッ!?」


 俺は既に不審者への関心は消えている。

 故に不審者がブツブツと呟いていたことなど、欠片も気付かなかった。

 そして…………いつの間にか、その手に刃渡り二十センチほどのナイフが握られていることにも、気付かなかった。


「もういいわよ! 自分で死んでやる!」


 不審者はそう叫ぶと、両手で持ったナイフを自分の首目掛けて突き出す。その行動は迷いがないためか、鋭く、速い。

 本当ならこんなこと俺には関係ない。しかしここで死なれることのリスクが俺を動かした。


「馬鹿っ!」

「っ! 離せ! 私は死ぬのよ! 殺してもらえないから死ぬの!」

「お前がこれから手を離せ! てか俺に迷惑をかけるなよ! メンヘラかテメェ!」


 何故初対面の不審者にこんなに迷惑をかけられるのか……メンヘラ怖い。

 ともあれ、俺の必死の行動のおかげで このメンヘラは自害を免れた。

 お互い荒い息を吐き、座り込む。俺の手にはなんとか奪ったナイフ。持ってみて分かったが、これはかなりでかい。どこに隠し持ってたんだよ……


「……ねぇ」


 やがてお互い息が落ち着いてくると、メンヘラが喋りかけてきた。

 また発狂されても困るので俺は会話に応じてやることにする。もう学校とかどうでもいい。


「んあ?」

「なんで私を、止めたの?」

「はあ? 俺に迷惑がかかるからに決まってんだろ。そもそもなんであの流れで自害になるんだよ。俺は帰れって言っただけだよな?」

「……ぅ、うん……で、でもぉ……わだし、がえる……ほうほう、しら、じらない、がらぁ」

「なんで泣くの?!」


 もうヤダこのメンヘラ。


「ああ! 分かった。俺が家とか調べるから。なんかいろいろおかしすぎて突っ込みどころ満載だけど、この際全部目を瞑って家を探すから、ほら、泣き止め、な?」

「う゛、う゛ん……ありがどう゛」


 ヒック、と可愛らしくしゃっくりをあげるメンヘラ。ホント、黙ってれば泣いてる姿でさえ完璧美少女なのに。皆優しくしてくれるぞ~。

 そしてなんやかんや待つことしばし、ようやく泣き止んだメンヘラに俺は尋ねた。


「よし、そろそろ大丈夫か?」

「う、うん」

「よしよし、それじゃお前の出身地とか教えてくれないか?」


 なんでここにいたのかとかそこらへんは全部無視だ。さっきまでの会話も全て無視。俺が今やるべきことはこいつを何とかして親元に送り返すことだ。出来ることならクレーム付で。

 目を真っ赤に腫らして正座するメンヘラは最初の勝気な態度はどこへやら、しおらしい態度で返答する。


「えっと、私の出身地は『悪魔界中央区皇帝城』です……」

「……ん? もう一度言ってくれない?」


 さて、どうしようか。呪文が聞こえたぞ。


「は、はい。私の出身地は『悪魔界中央区皇帝城』、です」

「…………………………おーけーおーけー。ちょっと待とうか」


 俺はまたも聞こえた呪文に一旦会話を切る。メンヘラは、コクッと頷いて口を閉じた。素直だな。

 そして俺は表面上は落ち着いて思考をめぐらせた。


 え? 悪魔界ってどこ? そんな住所あったっけ? アメリカでもそんな住所聞いたことないぞ……


 しかし考えても悪魔界なんて住所が見つかるわけがなく、すぐに思考は逸れていこうとする。

 と、そこで俺は先ほどまでの会話を思い出した。


 そういえばこのメンヘラ、悪魔がどうとか言ってたよな……てか今までの会話全部地球じゃおかしいことばかりだし……これってもう認めたほうがいいのかな……?


 だんだんと考えるのが面倒になってきた俺は必死に否定しようとしてきた事実を認めつつあった。

 その事実とは、今俺が体験している事が日本で大人気な小説、ラノベでよくある『非日常』なのではないか、ということ。

 まあようするに、このメンヘラが本当に悪魔か何かで、俺はその悪魔に関する何かに巻き込まれたって感じかな。

 …………ふぁ○く!

 どうしようもない感情をなんとか、心の中で罵声を吐くことにより、押さえつけた俺は、その事実を可能性に入れた上でまた話し始めた。


「よし、頭整理し終わった。んで、お前はその悪魔界から来たと」

「うん」

「その悪魔界はもしかしてこの地球上にはない感じかな?」

「うん」


 大丈夫だ、俺は受け止められる。

 地球上にない世界とか、凄い勢いで黒歴史が創造されているが、まだ耐えれる。


「じゃあこっちにはどうやって来たんだ?」

「お父様が地球にいる貴方のところに飛ばすから殺されて来い、って……」

「……なるほど、それでお前はここに来たと。なら飛ばされるときにどうすれば帰れるとか言ってなかったか?」


 なんか耐えるを通り越して悟りの域に入り始めた俺。今なら急に異国どころか、異世界飛ばされても順応出来る気がする。

 メンヘラは俺の問いに視線を宙に彷徨わせて考える。手は膝の上で固定されており、ちょこんと座る感じがなんとも小動物っぽい。割と背はでかいけど。

 メンヘラはやがて答えが見つからなかったのか、しゅんとした様子で首を横に振った。


「そうか……ならやっぱ帰る方法は俺がお前を殺す感じかな」

「そうだと、思う」

「てかその前にお父様とやらに連絡は取れないのか? お前って人間じゃないんだろ?」

「私はまだ全然強くない、から……世界を超えての通信は無理……」

「そうかぁ…………なんで来たんだよぉ……」


 もう諦めました。はい。

 俺はいろいろ諦めて上を見上げる。当然そこには何の変哲もない天井がある。異界の門でも開いとけやボケ(八つ当たり)。

 一頻り絶望した俺は、なんとか心を立て直し、これからのことを考える。

 取り敢えずこのメンヘラはこの家に住ませるしかない。警察に届けようにも『落ちてました』なんて言えないからなぁ……むしろ俺が警察のお世話になりそうだ。

 それを考えると俺は自然と気分が落ち込んでくる。


 ……………………なんで来たんだよぉ……


 俺は最後にもう一度この状況を嘆くと、『よしっ!』と気合を入れて前を向く。人生なんて、前向かなきゃ損しかない!

 俺はメンヘラの目をしっかりと見ると、重々しい雰囲気を出しながら、喋り出す。


「…………さて、お前に判決を言い渡す」

「え?」


 メンヘラはいきなりの話題についていけないようだ。

 まあ確かに、帰る方法話してたら急に判決とか言われるなんて、いきなりどうしたって感じだよな。

 だが俺はそんなの気にしない!だって俺だもの!


「お前はしばらくこの家で暮らせ。だが、その代わり帰る方法を探しながら家の諸々を行うこと。そして、お前は俺の母さんの友達の娘という設定だ」

「ぇえ!?」

「驚くな、順応しろ!あと家には妹もいるから、上手く誤魔化せよ。家の諸々とかは追い追い教えてくから。今はこれだけだ」

「う、うん。分かったわ!私に任せて!」


 メンヘラは俺の言葉に自信満々に頷くと、その大きな胸をぽよんと叩いた。すげぇ……波打ってる……


 さて、話はもう終わったわけだが……学校どうしよう。なんかもう行く気失せてんだけど。

 目の前のメンヘラはキリッとした表情で、グッと胸の前で両拳を握っている。さっきまでの泣きっ面が嘘みたいだな。

 取り敢えず時間を見れば十一時。え?嘘だろ?そんな時間経ってんのかよ……もうやだ…………………………寝るか。


「おやすみ〜」


 そう言って布団の中に入る俺。カーテンとか閉めて光はシャットアウト!

 なんやかんや考えた俺は、結局全てを諦めて二度寝に走りましたとさ。


「…………え?」


 最後に戸惑いに満ちた呟きが聞こえた気がしたが、まあ気のせいだろう。

 こうやって俺の少し変わった生活が始まった。






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