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夢殺人日記  作者: 私
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エピローグ

気がつくと、冷たい床の上でした。怖い、たすけて、暗い、息ができない、たすけて、お母さん、たすけて、私のお母さんはどこにいるの?




ー2009年8月ー

母が出ていった。小学4年生だった私は捨てられたのだ。

大好きだった母に、あのぬくもりに。


これからは父と生活をしなければならない。父は酒を飲んでは暴れるような人だった。でもこれからは父と二人、不安しかなかった。


だけど私は信じていた。

母はきっともどってくる、また、私に会いに来てくれる、と。






ー2011年4月ー


「これから、貴方達は我が校の生徒です。その自覚を持ち、勉学に励んでください。」

校長のあいさつが響く。あぁ、今日はいい天気だなぁ。ぼんやりと外を眺め、この長い入学式が終えるのを待った。私はあまり人付き合いが得意な方ではなかったが、クラスメイトもいい人ばかりで、これから始まる学校生活に期待で胸をふくらませ、ご機嫌のまま家へ帰った。


すると玄関には知らない女の人用の靴が一足。

誰か来ているのかと思いリビングを覗くと、そこには母がいた。なぜ?という疑問より先に、私は喜びに包まれた。やっぱり、信じてよかった。私に会いに来てくれたんだ、やっと会えた。だが、その喜びも束の間、母がここへ来たのはー


「お金貸してよ、お金なくて困っててさー。10万でいいから!」


父へ金を借りるためだった。私のために来たのではなかった。その時私は、あの捨てられた日に覚えた海のそこへ沈むような感覚を思い出し、吐き気がした。



それからというもの、母は頻繁に家を訪れお金を借りていった。一年が経ったある日、私は、こんな生活が我慢ならなくなって母に言った。

「なんで今更家に来るの?!捨てたくせに!!しかもお金を借りに来るなんて!!!もう私の生活を邪魔しないで!!」

母は、驚いたような顔をしていたが、すぐに床にへばりつくように座った。そしてー


「ごめんね…ごめんねぇ…寂しかったね…もう、一人にしないから…お母さんが守るから…」

泣き崩れ、呟くように繰り返すその言葉は、わたしの心の中に深く染みていった。


そしてー


「はやく、一緒に暮らしたいね。」

母がこう言ったのだ。


母は私のことを愛してくれてる。いつか、母と暮らせるかもしれない。酒を飲んでは暴れるような父から、解放されるかもしれない。深い深い海の底にいた私に、一筋の光が刺したように思えた。地獄から救い出してくれる、一筋の光。



でもまたもや、その希望は打ち砕かれた。

母には男がいた。


父の出張中をいいことに、男は母と家へ上がり込んできた。見ず知らずの男のとなりで腰をうねらせ甘い声を出す母。私にとっては地獄絵図だった。私と暮らしたいって言ってくれた母が、こんな男と一緒にいる筈がない。そう思い聞いてみた。

「お母さん、私と暮らすんでしょう?まさか、あの男も一緒に住むの?」


「いいえ。」


「そうだよね。まさか、あんな男となんて-」


「あなたと住まないのよ」


私の言葉を遮ってはなったその言葉。また嘘をついたの?お母さん。守るっていったのに。一緒にいるっていったのに。なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?


また、裏切ったの?ねぇ、お母さん。また捨てたの?ねぇ、お母さん。お母さん。お母さん。そんな心の声も虚しく、母は家から出ていった。




その時私は、殺人鬼となった。

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