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夫婦ともに37歳で新婚ですが、それが何か?  作者: Tora
大福さんの旦那さん
3/9

2

幸海(ゆきみ)、『漫画友のアキちゃん』って言ってなかったか?なんで男なんだ?」


 固まったのはそこっすか、社長!俺があなたの部下だってのは、いいんすか?


 そう、大福さんの結婚相手は、冷酷めがね…いや違った、俺の勤め先の社長だった。ここまで来て!ようやく無事を確保したと思いきや。ラスボスが味方陣営のはずの場所にいるって、どういうこと!てか、ここに来るまでの俺のドキドキを返して!!なにこれ、何の罰ゲーム?


「ん?私、女の子って言った?」


「男友達が来るのに、その格好か?」


 そこっすか、そこなんですか、社長。友達が男ってのは、いいんすか?


 まあ、大福さんと結婚した時点で色々諦めたのかもしれない。


 ちなみに、今の大福さんは綿麻混合生地の5分丈のパンツに、ゆったりとしたアジアンテイストのシャツ。揺れてるところから察するにブラはしてなさそうだが、コンビニぐらいには行って問題ない格好だ。襟ぐりが大き目だが、屈みでもしなければ胸の谷間も見えないだろう。


「私、朝はジーンズとサマーセーターだったよね。誰かさんが昼間っから盛るから、こんなことになったんじゃない?」


 うお、そりゃ、新婚で昼間っからシャワー浴びてたとなれば、それは連想していたけど、ちょっと独身恋人なしの男にはきついっす。てか、男に盛られる大福さん想像できねぇし。大福さんに盛る社長なんて、それこそ俺の想像のはるか彼方だ。


 だって社長、どんな女が色目を使おうと、顔色ひとつ変えねえんだもん。そりゃもう、『この人、女に興味ねえんじゃねえの?』ってレベルで。ひたすらストイックだ。


 ああ、なるほど。女をとことん極めると、大福さんに行き着くのか?奥が深いな。


「そういうことを、他の男の前で言うんじゃない。とにかく着替えろ。髪も乾かせ。」


 と、俺の視線から大福さんが隠れる位置に立ってそんなことを言う。顔立ちそのものが強面ってわけじゃないんだけど、あまり表情らしいものを浮かべない社長は、普段は冷酷というかひたすら怖い印象なんだが、今はその面影もない。


「いやいや、その前に、紹介ぐらいさせてよ。アキちゃん、固まってるじゃないの。」


「紹介なんかいらん。安城(あき)は俺の部下だ。」


 よかったのか?よくなかったのか?俺があなたの秘書だってことは認識してたんっすね。


「ん?アキちゃん、どういうことかな?」


 大福さん、なんか剣呑なオーラなんっすけど。なんで?


「えーと、大福さん、俺、去年から秘書課に異動になって、今年からは社長秘書の1人なんすよ。社長、ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。お邪魔しております。」


 大福さんにはいつもの砕けた感じで。社長にはピシッと話し、敬礼する。つ、疲れる…。


「へ~。那月(ナツキ)の秘書、男の人だったんだ~。」


 と、大福さんの刺々しい視線が社長につきささる。え?え?なんで?男の秘書の方が安心じゃね?


「そ、そんなことより、早く着替えてこい。」


 と、たじろく社長。ほんと、何で?


「うわっ、偉そ~。ま、話は後ででいいか。アキちゃん、着替えてくるからちょっと待っててね。」


 偉そ~って、実際偉いんですが。で、少なくとも大福さんに対しては、普段の一割も偉そうじゃないんすけどね。ていうか、社長と話って、なんすか?話のテーマは俺ですよね?


「あ、部屋で話すとかって、部屋に色々準備してたろ。こっちで話せ。」


「漫画の話だよ?那月(ナツキ)にはうるさいだけだよ。アキちゃんも気兼ねするだろうし。」


「気兼ねなんかしないよな?安城(あき)?」


 社長、笑顔がと~っても怖いっす!大福さんに対する弱腰な態度の一割でいいから、俺にも優しくして!


 俺はブンブン頭を縦にふる。


「もちろんです、社長。ていうか大福さん、旦那さんいるのに男友達と2人で部屋にこもるって有得ないですよ。」


 一般論をぶちかましてみる。いや、本当は、大福さんなら何でもありかと思っているんだけどね。


「旦那…。」


 社長がポカンと俺を見る。


 え、え、何、何っすか!?俺、なんか失言した!!?


那月(なつき)もアキちゃんも構わないなら、こっちで話すよ。アキちゃん、ちょっと待っててね。那月(なつき)も、アキちゃん苛めないでよ。」


「もちろんだとも、妻の友達だ、丁重にもてなすさ。」


 何故か機嫌が劇的に好転したっぽい社長の声に、俺は滅茶苦茶たじろく。


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