選ばれしモノたち
ここは、とある研究所。
休憩中、今日も今日とて、博士さんと助手君の無駄話が始まるのです。
「最近ニュースで見たんだけど、ネット選挙が実現するらしいわね」
「いつ書いてるかバレますよ?」
「2013年の5月…」
「言わなくていいです。7月の参院選から実施するみたいですね」
「でもアレよね、いざ実現したら色々問題も起きそうよね。例えば、動画サイトに候補者のMADが大量にupされて、その人気で投票する候補者を決めるとか」
「なんですかその狂った投票者の決め方は。この国の未来を決める大事な選挙なんですから、もっと真面目に決めるべきです」
「いやいや、どうせ匿名掲示板はネガキャン祭りになるわよ? 候補者はあることないこと書かれて誹謗中傷の格好の餌食になるのが簡単に予想出来るわ。まあ、どうせ本人もテレビの前であること無いこと言うからおあいこだけど」
「ああ、本人がお母さんから巨額のおこづかいもらったのなんだの、って、何危ないこと言わせてるんですか!?」
「言ったのは助手君だけどね。あと、不人気候補者や空気候補者を一位にして当選させる運動とか」
「なんですかその、腐女子泣かせてやろうぜ、みたいなノリは」
「利益団体泣かせてやろうぜ♪」
「こらこら。…本当に、ろくでもないことばかり考えますね。もう少し真面目に考えないんですか?」
「まあ、投票率はちょっとは上がるんじゃないの? わざわざ投票日に投票所行くの面倒くさい人もいるだろうし」
「それなんですけど、ネットからは投票出来ませんよ」
「え~、意味ないじゃない。休日はごろごろ寝ていたいのよ、私」
「干物女め。さすがにそれは難しいんじゃないんですかね。投票数簡単にいじられそうですし」
「ちぇ。まあ、若い人の興味も少しは上がるんじゃない?」
「そうですね。最近の選挙だと、2012年12月に行われた衆院選の投票率が約60%ですし、その中の浮動票と無投票の票も合わせれば、もしかしたら当確が変わってくる候補者もいるかもしれませんね」
「せっかくネット選挙も解禁するんだし、この際だから、候補者の顔を焼いたせんべいでも作ればいいのに」
「何故せんべいなんですか?」
「割れるじゃない。なんかこう、むしゃくしゃした時に」
「こら。どうするんですか、ゴミ袋に大量にそんなのが詰められて捨てられてたら」
「わざと眼につく場所に置いたりしてね」
「どんな嫌がらせですか。でも、実際あったら、ありそうだなあ」
「ポスターに落書きしちゃ、いけないのよね」
「確か、法律で罰せられますね。せんべいは、どうかはわかりませんけど」
「せんべい十枚で、握手権が一枚もらえるとか、よくない? ああ、でも、小汚いおっさんの手なんて、誰も握りたくないか」
「これ以上無駄に敵を増やさないで下さい。あとそれ、どこのアイドルグループですか」
「衆議院議員、略してSGG480!」
「偶然にも数字が同じですね。桁が違いますけど。でも、それだと参議院議員も同じ名前になりますけどね」
「数字部分だけ変えればいいのよ。SGG242とかにして」
「ややこしい感じになりますね。でも、握手権とか付いたら、今以上に候補者がタレント化しそうですね」
「今だって、世襲とタレントがほとんどじゃない」
「まあそうですけど。でも、若い女性候補者と握手権とかなら、いいかもなあ。あ、通報は止めて下さいお願いします」
「ちぇっ」
「まあでも、ネット選挙が実現されて、投票が活発になればいいですよね」
「政治になんて期待せず、自分の身は自分で守るのが一番だけどね」
「それが締めの言葉というのも、どうなんですかね」