イメージの問題
ここは、とある研究所。
休憩中、今日も今日とて、博士さんと助手君の無駄話が始まるのです。
「う~ん」
「どうしたの、助手君? じっと私を見て。なあに、惚れた? 気づいちゃった? 私の色香が、知らず知らずのうちに貴方を惑わせてしまっていることに」
「あと2㎝なんだよなあ」
「…えっと。何の話?」
「いや、博士さんの身長があと2㎝低かったらなあって。ちなみに博士さん、身長何㎝です?」
「ん? こないだの健康診断で測ったから、151かな。いやー、中学から全然かわらんねえ」
「やはりっ! やはり僕の目に狂いは無かったっ! さすが、マイアナログアイっズっ!」
「変態助手。どーでもいいから、そろそろ何のことか話しなさいよ」
「あ、すみません。いえ、ただの身長の話ですよ」
「あん? それってあんた、回りくどく、私のこと、チビって言いたいの?」
「いえいえ。それに僕は小さい方が…」
「日本人の平均身長は、男性が171㎝、女性が158㎝ぐらいね。あと、私は何も聞いてない」
「たとえ2㎝の差でも、153㎝と151㎝より、149㎝と151㎝の方が、かなり違う気がするのはなぜでしょう?」
「…まだひっぱるんだ、ソレ。まあ単純に、十の位の数字が変わっているからよね。ほら、29と30ってイメージ全然違うじゃない? ひと昔前だと、アラウンドなんとかー、なんて言ってぼかしたけど」
「そうですよねえ。アラサーの範囲は27~33歳ですし、アラなんとかは、●7~●3歳なんですよね」
「実際の27がアラサーなんて言わないわよねえ。そのままの歳言った方が全然武器になるし」
「全然の使い方が違う気もしますが」
「食品の産地偽装を思い出すわね」
「どちらかといえば、賞味期限の偽装を思い出しますけど」
「わざわざ言わないでおいたのに。でも、偽装してまで体裁を整えたい人の気持ちも、わからなくはないけどね」
「お見合いの写真とかですね」
「おい助手、今お前は、全人類の半分を敵に回したぞ」