初夏
風が吹き抜ける校舎。
誰もいない教室。
あたしは誰もいない教室が好きだった。
あたしの長い髪はゆらゆら風が吹く反対の方向へと伸びてゆく。
窓の外には朝練をしている部員がいて、声が筒抜けに聞こえている。
『うるさいな・・・』
ただ、そう思うだけで青春を送っている人を見るのは、すがすがしかった。
ボケ―っと見ているうちにあくびが出た。
誰もいない教室は好きだけど、朝は苦手で起きるのが毎日辛くて一時間目は殆ど夢の中。
今日は、少し早めだけど眠ってしまうか?と、心の中で自分に疑問を与えた。
少しだけなら・・・なんて、甘い考えで寝ようと腕を組んだ時―――
ガラッ
教室のドアが開く音がした。
あまりの勢いぶりに、あたしは驚いてドアのほうへ目をやる。
そこには、汗だくの野球青年が・・・。
きっと、外で朝練をしていた野球部員だろう。
でも・・・?
疑問が浮かぶ。
どうして、見たことの無い人がここに入ってくるのだろうか?
ここは、教室。クラスの人しか用は無いはず。
色々な考えが飛び交う中、彼は教室に入り手前の机の中に手を突っ込んだ。
『えぇ〜何してんのッ!!』
と、心の中で動揺してしまった。
きっと、知り合いの机なんだろうな・・・なんて、頭の中で色々描いた。
彼は、あたしの存在に気付き丁度目が遭った。
彼は軽く礼をして勢い良くドアを閉めていった。
あたしが呆気に取られていた瞬間、大きく風が吹いた。
そして、それと同時に笑みがこぼれた。
彼は風のように一風吹き、また一風のように流れ風は消える。
あたしは寝るのを止め、部活動に熱心な部員達を見る。
『青春も悪くないモンだね。』と、心の中で言う。
古臭い言葉も青春には関係ない気がした。
彼は、またいつ机の中を漁るのか・・・ちょっと楽しみにしている自分が変に思えた。
初めまして、紫陽花です。初の作品が書けました。小説なんて書くのは初めてで、文章が成り立っているのか不安です。この小説は、とても短いですが、偶然を感じた彼女の話です。
この小説の続きは読者さんに任せたいと思います。
読んでくださった方、ありがとうございました。