夢じゃない?
「ねえ、酒井さん。昨日の酒井先生の夢、どうゆうこと?」
「それですが、確かに私のご主人さまが言ったようなことは私たちコインタワーで働く者は心得ています。昨日帰って知佳さんの両親に確認して話した結果、ご主人さまは夢を見たのではなく私たちの世界に来たのではないかと――。」
「心得てる、、、って。結局酒井先生がうろ覚えだった酒井さんの言葉ってどうゆう意味なんですか?」
「私は生まれてからずっと“意のままに動く”ように生きてきました。本能でそうすることが使命だと思ってきました。それによって離れていてもご主人さまに忠実な影に育っていったのです。ですからコインタワーでの仕事の実体を調べ就職したのです。私と同じような性質を持った者たちが集まってコインタワーの職員は成り立っているのです。ただ、知佳さんのように代々コインタワーの仕事をしている人もいます。そして私たちがご主人さまの生き方を見ることはできませんが、ご主人さまと影で本質が同じなので私たちが意のままに、動いていればご主人さまと比較的近づいた人生を生きることができるという考えをコインタワーで働く者はしています。大昔の記録には『いつの日か私たちともう1人の私たちが協力する時がくる。』と書かれています。ですから私たちはできる限り本能で動くようにして、いずれご主人さまと協力する時に考えのズレや生き方のズレが生じないようにしてきたのです。私のご主人さまは私たちの世界にやってきたということは何か意味があるのかもしれ
ません。私たちの推測ではコインタワーで動く者のご主人さまは皆人生の不安定な時期に私たちの世界にやってきて私のご主人と同じように何かを得て人間世界に戻っていくのではないかと思います。」
そう話してくれた酒井さんはなんだか嬉しそう。
「どうしたんですか、酒井さん。」
「いえ。その推測が正しければ私たちとご主人さまが繋がっていたんだと思えて嬉しいのです。」
「そうですね。それにしてもこっちの人間にとっては酒井さんたちの世界で聞いたことが自分の心の声って感じなんでしょうね。」
「私たちの性格はご主人さまの持って生まれた性格ということです。自分に迷いを感じた時に私たちの言葉を聞くとそうゆう風に捉えてくださるのでしょうね。」
「ところで、、、。その記録っていうのには私たちと酒井さんたちが協力するって書かれているんですよね。だったらこっちの知佳や酒井先生にも影の世界のこと、言わなくちゃいけないですよね。」
「はい。でもどうしましょう。ご主人さまを全員見つけるのも大変ですね。」
「ていうかそもそもこんなこと全員が簡単に信じるとも限らないですよ。」
「そうなんですかっ!?」
「私だって最初は全然信じてなかったよ。次の日学校で知佳たちを見て現実なんだって思ったもん。」
「ええーっ!!本当に?」
「そんなに驚くことじゃないでしょ。普通に自分の影が別の世界で生活してるって可笑しな話だもん。あ、私のはないんだけど。」
「それはそうですね。ではその2つの件考えておきます。」
「はい。今日は時間があまりとれなくてすみませんでした。」
「いえ、いいんですよ。」
「じゃあ千尋、また明日っ!」
「うん。バイバイ。」
知佳たちは自分たちの世界に帰っていった。今日は私、英語の小テストですごい点数とっちゃって放課後に補習だったんだ。だからテレパシーで酒井さんに家で待っていてくれるように伝えて、補習の後私の家で話し合いだけやった。
それにしても、、、。もうだいぶ慣れてきたみたいで知佳ったらたまにタメ口になる。本人は気付いていないみたいだけど。私としてはやっぱり知佳に敬語使われると違和感があるからタメ口にしてほしいや。
でもまあ、明日はいろいろと進展しそうだな。