酒井先生、驚き
もう、今日の授業は全然集中できなかったよ。でもようやく昼休み。ご飯は早弁しちゃってるからたっぷり時間はある。
「知佳、レッツゴー!!」
「オー!!」
確か酒井先生は普段社会科準備室で昼ご飯を食べているんだよね。
私たちの教室は2階にあって社会科準備室は3階にある。私と知佳は全力で階段を駆け上がって社会科準備室に向かった。
「先生っ!えっと、私の名字珍しいと思わない?」
「んあ!?なんだ、いきなり!!ノックくらいしろよ。」
「で、どう?」
「“瑠璃垣”か?そうなのか?昔の知り合いに同じ名字がいたからそうは思っていなかったが。」
「それです!!」
「牧野、お前もいたのか?」
「いますよ!!で、その知り合いって?」
「なんだ。お前たちに言ってもわからないだろ。」
「「ふふふ」」
「気持ち悪いな。、、、俺は昔教師になる前に普通の会社にいてな。その時の同僚に瑠璃垣ってやつがいた。」
「その人、瑠璃垣和宏って名前じゃなかった?」
「ん?ああ、そうだ、、、ってまさか。」
「私のお父さんなのー!!」
「!?そうなのか!?」
「はい。昨日お母さんに馴初めを聞いたんだけど。そしたら先生の話が出てきたんだよ。もう、びっくり。」
「本当に?和宏と知世ちゃんの子供だったのか。」
「うん!!それで、家に呼んでくるようにって。」
「そうだな。しかしここからじゃずいぶん遠くないか?」
「?なにが?」
「お前の家はここから遠いんじゃないのか?」
「ううん、地元だよ。てか私、引っ越したこともないし。」
「そうなのか?あ、ああ。これから生徒が質問にくるんだ。」
「あ、そうなの?じゃあ今夜はどう?」
「ずいぶん急だな。、、、しかし今日は予定はないな。8時で良いか?」
「うん。良いよ。」
「じゃあそう伝えておいてくれ。」
「うん。待ってる。」
「じゃあ失礼します。」
「ねえ、知佳。私も行っていい?」
「もちろん良いよ!!」
――千尋、私たちも良いですか?
――あ、知佳。忘れてた。
――また忘れてたんですか?ひどいですー。
――ごめんごめん。でもいることはわかってたし。
――しかしなんだか疑問があるんですが、、、。
――え、酒井さん。何がですか?
――いえ。大丈夫です。また今度で。
――わかりました。
「千尋?どうしたの?」
「え?」
「黙り込んじゃって。」
「なんでもないよ!?」
「そう?じゃあ教室に戻ろ。」
「そうだね。それにしても知佳の先生に対するタメ口、いつ聞いても違和感があるよ。」
「そんなことないよ。」
「そんなことあるんだよ。知佳も見習って敬語できるようにすれば良いのに、、、。」
「見習うって誰を?」
「誰ってもう1人の知、、、。いや、なんでもないよ。」
「ああ!!お母さんを?そうだよね。私のお母さんも社会人になっても敬語できなかったんだもんね。」
「そ、そうだよ!!おばさんはいつから敬語で話せるようになったの?」
「社会人1年めで上司に怒られてからだって。その上司が親切な人で練習に付き合ってくれたんだってさ。」
「そうなんだ。じゃあ知佳も、さ。」
「私はなにも都合が悪いことないもん。」
「だからって、、、。」
「まあまあ。昼休み終わっちゃうよ?戻ろっ!!」
「あっ、まあ、良いか。」