そして今
そして今こうして千尋さまとお話ができている。
「、、、知佳?」
「え?あ、はい。」
「どうしたの?」
「あ、すみません。いろいろと思い出していたもので。」
「そうだろうね。表情がクルックル変わってた。」
「そ、そうですか!?」
「でさっ、知佳が敬語なんて違和感があるんだけど。こっちの知佳ってね、全然敬語できないんだよ。」
「私もですよ。千尋と話すために猛練習したんです。」
「別に良かったのに。無理してるんだったらタメ口で良いよ、普通に。」
「、、、酒井さんが怖いから遠慮します。それにせっかく頑張って練習したので。」
ずいぶん長いこと思い出に浸ってたみたい。酒井さんがそばで資料に目を通している。それにしても、、、もし千尋が、千尋の影がこの世界に来ていたら友達になれていたのかな。私、同世代の友達っていないんだよね。仕事上、職員の人としか関わらないから。でも、違った立場だったら私は絶対指導者の人とは話す機会もなかったんだろうな。そう考えると嬉しい。
「ところで、私はこれからどうすれば良いの?」
「うーん、どうすれば良いんでしょう?」
「え、決まってないの?」
そう、千尋を連れてきたは良いものの具体的にこれからどうするのかは決まっていないんだ。
「あらあら、疑問符ばっかりね。」
「紀美香さん!!」
「林先生!!」
「「えっ!?」」
「ウフフ。若い子は良いわね。活気がある感じがするわ。」
「林先生がどうしてここに?」
「紀美香さんが先生?」
「うん。英語の先生だよ。見てたのに知らないの?」
「見たことありませんでした。何ででしょう。」
「林先生は新任の先生だから他の学校に出張することが多いんだ。てか、ここにくる直前が林先生の授業だったんだけど。」
「そうなんですか?それどころではなかったんですよ。」
なんだって!?紀美香さんが先生だなんて、見たかったー。てか授業の内容に目がいかないなんて、私としたことがっ!!いや、勉強に興味があるわけではないけど人間世界の様子全てには興味津々なのに。あの時は相当テンパってたってことなんだろうな。
「ウフフ。私が先生なんて、柄じゃないわね。」
「どんな先生なんですか?」
「教え方は上手いと思う。けど、うん、まあ、男子に人気だよ。」
「やっぱり!!紀美香さんは美人だもんね。」
「うん、でもいつも思うんだけどやっぱり、知佳と林先生って似てる。」
「千尋もそう思います?この世界でもそんな風に言われているんですよ。クールビューティーなんです。」
「あはは。こっちでも言ってる。」
「そうなんですか?」
「うん。よく言ってる。」
「えー、本当ですか。」
こんなたわいない会話が私には本当に嬉しかった。