子供部屋
「酒井さん、本当!?」
「はい。ついにですよ。しかも私と知佳さんが行くことに決まったんです。」
「私も?良いの!?」
「知佳さんもよく働いてくれるようになりましたからね。今から行きますよ。」
やったー。人間世界に行くなんて史上初だよ。酒井さんはコインタワーの番人で偉い地位の人だからルートが今期に見つかれば最初に行くと思ってたんだ。酒井さんの補佐役で良かった!!
「何をぶつぶつ言ってるんですか。さあ、行きますよ。」
あ、声に出してた?
「はーい。」
私は酒井さんに着いてルートがある場所に向かった。
「ルートがあった場所ってどんな所なの?」
「民家です。夫婦が2人で暮らしているのですが、いつまで経っても子供ができないと悩んで安藤さんに相談していたらしいんですけどね。」
安藤さんっていうのは、反絶対指導者の1人だ。気さくで面倒見の良いおばさんなんだ。私も何回か愚痴を聞いてもらったことがある。なんか、安心するんだよね。
「安藤さんがその夫婦を訪ねた時に違和感を感じたそうなんです。それは地下に子供部屋があったことでしてね。聞いてみたら、地下室は元々あったんだけど内装ができたのは16年前のことだったらしい。」
「、、、内装って?」
「知佳さんは妹や弟はいなかったですね。部屋に子供部屋のような内装が急にできるのが子供ができる兆候なんです。」
「へぇー。」
「おかしいと思って安藤さんが会議の時にその話題を出して、その夫婦に家を調べさせてもらえるように頼んだんですよ。調べはじめてからしばらくしたある夜、部屋の明かりを消した時、私たち以外に誰もいないはずなのにごそごそと何かをあさる音がしたんです。そしてどこからか床に写真が落ちてきました。その写真がこれです。私が預かったので。」
私はその写真を受け取って見てみた。そこには夫婦と一緒に知佳と同い年くらいの女の子が写っていた。
「一緒に写っている女の子は誰?」「わからないんです。しかし私たちが思うに、夫婦の子供でしょう。人間世界で何かが起きていて、この世界に来るべき子供が来なかったのでしょう。あの家には人間世界と非常に近い。これからその家とこの写真の力で人間世界へ行きます。」
「、、、なんだ。まだ推測の域を出ていないんじゃない。」
「いえ、絶対に行けます。あ、この家です。」
真っ白でかわいらしい家だ。玄関の表札には“牧野”と書かれていた。