ザックの話
気づいたら五ヶ月も・・・・・・orz
しかも最後がグダグダな気が・・・
「この世界についてはわかった。俺をこの世界に呼んだ理由は?目的は?」
「そ~だね~、目的は簡単。この世界を破滅から救ってもらうためだね~」
ザックの言葉で落ち込んでいた二人の顔が驚きに変わる。
そのままザックはこちらに口を挟ませることなく話し始める。
「驚くのも無理はないと思うけど~。……ん~、この世界にあんたが介入しなかったらっていうもしもの話をしよ~か」
サラビエラ王国の魔王が死に、その娘二人が勇者の手に落ちる。その結果、同盟軍は調子づき北上政策を開始。初めは同盟軍VS一国という形だったので、同盟軍が躍進を続ける。しかし、何か国かが落とされ、魔人が非道な扱いを受けていることに反対した残りすべての魔国が、そして同調した人と魔人の混成国(以下混成国)が連合軍をつくり全面戦争へと発展。数年の歳月を経て連合軍は同盟軍を南へ押し戻すことに成功。さらに南下を続けノイリアスを残し同盟国は制圧される。
追い詰められた勇者と同盟軍は狂気の沙汰を起こす。
開発されていた魔力増幅器を使って連合軍を巻き込み自爆。
その爆発の影響で世界が不安定になり、十数年で世界が崩壊し始める。
ザックの話はこんな感じだった。
「と、言う感じでこの世界は滅ぶはずだったんだけどね~。前に言った神……まあ、正確には神よりも偉くて、まったく神らしくない人がとある人のためにこの世界に干渉してるんだ~。ちなみにあんたを選んだのもその人だよ」
へらへらしながらおどけて話しながらも少し興味のなさそうな顔でザックはそばに置いていたと思われる缶コーヒーを飲んだ。
「その神より偉い人ってのは誰だ?それに誰のために干渉してるんだ?」
説明が随分と適当なのでほかにも疑問が浮かび上がってくる。その疑問の中でも特に気になることをまず口にした。
「これは……ん、まあ話しても大丈夫かな」
ザックは少し悩んだように首をひねったが、すぐにこちらに向き直った。
「詳しいことは省いて、尚且つわかりやすいように話すから実際には異なる部分もあるって理解しておいてね~。まず、神様よりも偉い人っていうのは、分かりやすいように神と比較してるけど全くの別物でね、簡単に言うと僕みたいな、数多の世界に干渉できるもののことなんだよね~。でも、神様っていうのは限られた一つから三つ以内の世界にしか干渉できない存在のこと。だから、あんたたちの言う神様とかとは全く似ても似つかないってわけ~。で、今回あんたを選んだのは僕の上司みたいな人。でもって、その人は思い人が記録するのに慣れるために書きやすい世界を選んだらこの世界になったってことだね~」
一旦話を止めたザックは先ほどの缶コーヒーを飲み、言葉をつづけた。
「ちなみにその人がなぜ君を選んだのかっていうと、僕たちみたいな存在の中で一番偉い人、もとい一番強い人の若いころに容姿も性格も名前も一緒だったかららしいよ~。その人が言うにはあんたはね、かの人の劣化版って感じらしいよ~」
人のことを劣化版と呼んでおきながらへらへらした態度を崩さないザック。
さすがにいらっときたので反論しようかとも思ったが先にノエルが行動していた。
「ユートさんを劣化版なんて……それに、今の話を聞く限りその人はこの世界が破滅しても別によかったと……そんな印象を受けましたが……」
丁寧な口調は変わりこそしないもののその声は至極冷たく、周囲に殺気を振りまいていた。
「おお~、さすがは魔王の娘。大した気迫だねぇ。ちょっとビックリしちゃったなぁ」
ザックは缶コーヒーの残りを一気にあおるとそれをどこかに投げた。
カラン!……カラッ!カラカラ。
「僕としてもひどい話だとは思ってる。けど、君たちが想像しているよりもはるかに世界は多いんだ。すべてを救えるわけでもなければ、望まれてもいないんだ。僕の力ではどうすることもできないし、できるかもしれない上司は今、思い人にしか興味がなくなってる」
最初のほうは悲しそうに、真剣に話していたザックだったが途中から元のへらへらした様子に戻ってしまった。
「いや~、あの様子を見るまではあの人が生物学的に見て女なんて信じられ……」
カ――――ン。
気持ちのいい高い音がPCのスピーカーから響き渡る。と、同時にザックは画面から消えていた。
そして、地面をのたうちまわっているような音が聞こえてくる。
「あら、ザックはそんな風に思っていたの。新参者のくせに……少し調教が必要かしら。フフフッ」
画面から聞こえてきたのは女性の声だった。すぐにのた打ち回る音が消える。
「ユ、ユーノさん!?なんでこんなとこに!?」
ザックの声が聞こえるが、先ほどとは打って変わり恐怖している声だった。
「大丈夫。すぐにそんなこと気にならなくなる……フフフッ」
「ちょっ、待ってくだ……ギャアァァァァァァ!」
画面を誰かが通り過ぎていく。次の瞬間にザックの悲鳴が聞こえ、接続が切れた。
訪れる静寂。
1分もたたないうちにまた通信がつながり、ボロボロになったザックが画面に現れた。
「ひ、ひどい目にあった」
結局のところ、ノエルは怒りの矛を収めてくれた。ザックのボロボロな姿を見て同情したというのが大きかったようだ。それにザック自身が何度も何度も謝っていったのもあるだろうが。
ザックはへらへらした態度をやめ(というよりは先ほどの恐怖を引きずっていたようだが)簡潔に要件を話すと接続を切ってしまった。
内容は6つ。
1つ、弾薬などの補給物資、または武器は要請さえすれば用意してくれるということ(ただ補給には一定期間、間をあけるそうだ)
2つ、金や食料は自分で調達してほしいとのこと
3つ、情報も要請されれば伝えてくれるがすべての情報を伝えられるわけではないとのこと
4つ、世界が崩壊しないように行動してくれれば自由にしてよいとのこと
5つ、ヘリの操縦については非常時の場合(戦闘中やユートが操縦できないなど)ザックのほうで操縦してくれるとのこと
6つ、それ以外は基本的に干渉しないとのこと
これで補給についての心配はなくなった。何せ基地に一人で突っ込んだから一部の弾薬が結構少なくなっていたのだ。
さすがに前にいた世界のように一日に三分の一を消費することはないだろうが一番よく使う7.62ミリが無くなるのは痛いものがある。
確か、あれはアフガンだったか。一度持っていた7.62ミリが切れてスナイパーライフルとハンドガンだけで敵基地を制圧しなきゃならんことがあったがあれはきつかった。
超近距離で敵と遭遇した時に手にあったのはスナイパーライフル。銃剣取り付けておかなかったら死んでたな。
ちなみに7.62ミリ弾は敵がよく使うので戦場で調達することも可能ではあるが、その時は運悪く正規品ではなくパチ物の銃弾だったために装填して何発かで暴発してしまった。腰だめで撃っていたので大事には至らなかったがひどい目にあった。銃のほうも一緒のようで危険だったので調達できなかったのだ。
チョンチョン
「んっ?」
昔の任務を思い出していると肩をノエルに突っつかれた。
「ユートさんはこれからどうするおつもりですか?世界を救うにしても何をするにしても計画は必要だと思いますけど」
ふむ、それもそうか。
さっきの情報から考えて思いつく案はいくつかある。
1つ、勇者暗殺。 危険度中
メリット・すぐに終わる。
デメリット・残った同盟軍の行動に不安要素がある。
2つ、同盟軍の排除。 危険度大
メリット・同盟軍が自爆することはなくなる。
デメリット・労力が大きい。
3つ、同盟軍が追いつめられるまで放置。 危険度小
メリット・一番楽。
デメリット・魔人と人との関係に問題が生じる可能性あり。
1つ目は俺が一人で敵の本拠地に行って銃弾を一発放てば終わる。
だが、勇者を失っても結局破滅への道を進む可能性がある。
2つ目はかなり危険だ。さっきの戦場には15万くらいの人がいた。単純に2で割ったとしても7万5千は同盟軍。実際はもっといるだろうし、本国のほうにも防衛部隊が残っているはずだ。ということはかなりの人数を相手にしなくてはいけないことになる。
いくら銃が多対少において効果を発揮するといってもその数には限度がある。まして1対数万は許容範囲を数倍も越えている。
だが、破滅への要因を消すことができるので破滅を免れることができる。
3つ目は最も安全で楽な方法。同盟軍が連合軍にボロボロにされた後に殲滅すればいい話だ。自爆するくらいだからかなりの兵力を失った後だと思われる。殲滅するくらいなら一人でも、最悪でも連合軍に協力すれば簡単に終わるだろう。
しかし、同盟軍の行動のせいで魔人と人との関係が悪くなり、将来的に同じことを繰り返す可能性がある。
この考えを二人に話してみたのだが、あまり受け入れられなかった。
確かにこの三つは自分を中心にリスクを考慮して考えた案だ。最善の策ではないのだし、その間の犠牲もそのあとの犠牲も考慮していない。
特に二人は魔人への迫害をどうにかしたい様子である。
ならば、今思いつく最善の策は……。
「同盟軍の妨害なんてどうでしょう?」
ノエルがふと思いついたように口を開いた。
「同盟軍を自爆させるまでに追い詰めるということは両者の間に大きな憎悪が生まれたということでしょう。なら、その憎悪を軽減し全面戦争にならないように妨害をする。そうすれば連合国は同盟国の首都に攻め込むこともなくなるかもしれません。それに、魔人たちを助けることにもつながります。」
確かにそれが今思いつく最善の策かもしれないが、負担が大きい。
何せ、情報を集め同盟軍の動きを先に予測し、行動し敵を排除。
言うだけなら簡単なように聞こえるかもしれないが、そんなことはない。
情報は科学が発展した現代においても手に入れにくいものだ。
24時間体制で何人もの人材を投入しなければ正確な情報は得られない。
まして科学が進んでないこの世界でそんなことをするのは困難であり、情報に信憑性もない。
「だが、妨害するにしろ情報が必要だ。その情報はどうやって集める?仮に集められたとしても正確でなかった場合、妨害は最大限の効果を発揮できない」
「それなら、『遠見の魔法』があるよ。遠くにいる人の様子が分かるっていう魔法だよ~。」
先ほどまで話についていけていなかったシャルがうれしそうに話す。
話に加われなかったのが少し悲しかったのかもしれない。
「じゃあ、その『遠見の魔法』って言うのはどのくらい正確に様子がわかるんだ?」
問いかけに対してシャルは唇に人差し指を当てて答えてくれた。
「んっとね。魔力にもよるんだけど~、ふつうの魔人ならその人の周り15メートルくらいでね~、私やお姉ちゃんくらいなら50メートルくらいまで見えるよ~」
対象の周り50メートルを正確に知ることができるのは確かに強みかもしれないが、位置情報まで知ることができるだろうか?
50メートル以内に位置を特定できるものがなければ意味がない。ましてその場所を知らなければ使えないのではないだろうか。
「しかし、対象者の周りに濃霧などが発生していた場合や気づかれて『遮断の魔法』を使われてしまうと意味を成さなくなってしまいます。相手はあの勇者ですから最初の一回で気づかれてしまう可能性が高いです」
ノエルの言葉で『遠見の魔法』とやらを使うわけにはいかなくなった。一回しか使えない可能性があるのならば、今後もっと効果的な場面で使うべきだろう。
「それなら使えないな。でも負担は大きいが効果も高いようだし基本方針はノエルの案でいこう。それにだいぶ夜も更けてきたことだしまた明日にでも話し合うことにしよう」
この湖に着いたときには夕方だったのだが、今では空に星が多く輝いていた。月は出ていない。周りには風に吹かれた木々のざわめきだけがかすかに聞こえていた。
それから、三人で支給されていた軍用レーションを食べて眠りについた。
味のほうは……昔に比べればよくなっていたといっておこう。
遅れてホントすいません。
理由は活動報告のほうにでも書いておきます。
いろいろとへんな設定が増えていますがあんまり話には影響のないものも多いので気にしないでください。
あと、かなりリアルが忙しいので週一投稿は無理と判断します。
時間が取れれば連続で、取れなければ数ヶ月あく場合があるので気長に待ってくれるとうれしいです。