始まりの時
作者は状況説明が苦手です。
また、無理に詰め込みすぎなところがあるかもしれません。
それでも別に気にしないという方はどうぞ。
魔王の城
「正門、突破されました!敵はなおも進軍中。」
玉座の間に伝令が報告を告げに来た。玉座の間の外からは、剣戟の音や悲鳴、怒声が響いている。
「どうしましょう?魔王様。」
側近の一人が豪華な装飾の施された玉座に座っている男に問いかける。男は魔王と呼ばれた割には邪悪そうな感じはせず、しかも精悍な顔をしている。
見た目もほとんど人間と変わりない。ただ決定的に違っているところが二つほどあった。
一つは、体からにじみ出ている強大な魔力。
もう一つは、瞳の色が紫色という点だ。
普通の人間や魔人ならば肉眼で見えるほどの魔力を持つことはできない。それに瞳の色も人間は明るい緑や青が大半を占めており、魔人もたいていは暗い色の黒などが多い。紫という色は魔王の血筋に連なるものだけが持つ特殊な色なのだ。
「西の門で防衛している兵の3分の2を迎撃に当たらせよ。」
魔王は深刻な顔をして、指示を出す。
「っ!?で、ですがそうすると西の門の守りが―――」
「いいから我の指示通りにせよ!」
「りょ、了解しました。」
命令を受けた側近が伝令を走らせる。
「それから……娘たちをここへ。」
10分後
「そんな!それでは、お父様はどうなさるのですか!?」
玉座の間に少女の声が響き渡る。先ほどまで十数人いた側近はおらず、魔王と二人の少女だけがいた。
その3人の共通点は二つ。黒い髪と紫の瞳。
「私はここに残り、勇者の相手をする。奴の相手ができるのは私だけだからな。」
魔王は、先ほどまでと違って鎧を身に着けている。誰が見ても一目で戦闘用だとわかるほどに禍々しい作りの鎧だ。そして、その瞳は自らの娘たちに向けられていた。
「何も、一人で相手をする必要はないでしょう。私はともかく、シャルならお父様の―――」
「ノエル!!」
魔王の怒声に二人の体がビクリと震える。
「お前たち二人がいたところで戦況は変わらん。たとえ、勇者をお前たちと倒したところで数の暴力には勝てん。じきに私たちも殺される。利権を求めて戦争を仕掛けてきた奴らだ。たとえ捕らえられたとしても何をされるかわからん。それに………。」
魔王はいったん言葉を切り、二人の顔をじっくりと見つめた。
「父として、娘を守りたいと思うのは当然のことだろう。………話は終わりだ。一個小隊を付けるから城の脱出路から逃げるんだ。異論は認めん。」
とりあえず、導入部分です。まだ、主人公とヒロインが出会うのは先になりそうですが……。
読んでくれた方、ありがとうございます。