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GURDIAN・USER

GURDIAN・HOME


第一話 GURDIAN・USER  


この世は乱れている。


今から約数十年前、とある人物が歴史を動かした。

その人物はアメリカ人の怪奇科学者と呼ばれているレイズ・バッカーノという男だ。

彼は科学で証明できない事件などを全て霊の仕業だと発表したが、それは全て他の科学者から否定されてきた。だがレイズはそれらの意見に全く耳を貸すことなく、自分の意見を貫き通したのだ。そして彼は研究に研究を重ね、とうとう全ての科学を覆しかねない成功をしてしまった。

それは誰も考えもしなかったこと。「霊界への行き方」

レイズはそれを発見してしまった。だがそれを発表しても信じてくれる人はいなく、ならばとレイズは霊界への扉を開け、その中へと足を踏み入れたのだ。

そのときの事をレイズはこう書いていた。

「私は霊界へと行った。そこは一面真っ白な世界だ。見渡す限り白、白、そして白。まるで遠近感を狂わせるような空間だった。

私はその世界をひたすら歩いた。しばらく歩き続けていると、突然大きな門が現れたのだ。それはもうすごい大きさだった。高層ビル並だよ。そしてその門の両脇に二人の人、いやあれは人ではないな確か・・・そうガーディアンとかいったか、彼らはその門を守っていると言っていた。私はどうにか門の中に入れてくれないかと頼んだのだが、一向に首を縦に振らないんだよ、人間は下界に帰れとか言ってな、私はここまで来たのに諦めるなんてできない。私は何百回、何千回と頼んだ。そしたらようやく許可がもらえたんだ。

私は門の中に入って驚愕したね、私の想像とはかなり異なっていたんだ。

その世界にはいろんな建物が建っていたよ、和風の家や洋風の家と様々さ、言うなれば私達の世界と大差ないんだ。私はそこで三日くらい過ごしたかな、いやぁ不思議だね。霊界では腹は減らないし喉も乾かないんだ、でも何でだろうね・・・少しイライラするようなムシャクシャするような妙な気持ちが沸いてきてね、その時ガーディアンに帰るように言われたんだ。私は拒否したよ、科学者として

なぜこのような気持ちになるのかを解明したいからね、しかしね・・・私は急に意識を失ってしまって、気がついたら自分のベットに寝ていたんだ、全く惜しいことをしたよ。」

それがレイズの最後の言葉だった。彼はこの後原因不明の病にかかり死亡してしまっているのだ。

それからだ、この世界に怪奇な事が起こり始めたは・・・

はじめはレイズの友人の女性だった。

この女性はある日突然倒れ死亡したのだ、それだけなら特に怪奇な事はない。しかし死体の検査の結果、その女性が死亡しているのは一週間前だということが分かったのだ。

この怪奇な死体は世界中で取り上げられた。

そして、怪奇な出来事はこれだけでは終わらなかった。

とある場所では数百という数の刃物が一斉に体に突き刺さった死体。

またとある場所では外傷が一切ないのに内蔵が丸ごと全て消え失せている死体。

その他怪奇な死体は多数見つかっていた。

このとき「怪奇な事といったら私だ」といってこの問題にとり組んだ科学者が一人いた。

その人物はレイズ・バッカーノの実の息子であり、レイズの助手を勤めていたアーノルド・バッカーノだ。

彼は怪奇=霊という父レイズの意志を継ぎ、レイズの同じ方法で霊界へと向かった。

そこはやはり一面真っ白な空間でしばらく歩けば大きな高層ビル並の門が現れる場所だった。そしてその門の両脇にはやはり二人のガーディアンがたっている。

「来ると思っていたぞ、人間」

右側のガーディアンが言う。

「やはり下界で何か起きたのだな」

今度は左側が言う。

アーノルドはガーディアンのその言葉を聞いて目を細める。

「何か心当たりがあるのですか?」

「あぁそうだ、あの人間がこの霊界に来たときから何か起こるのではないかと予想していた」

右側のガーディアンが淡々と続ける

「もし人間がもう一度この霊界へ来たとき説明する気だった。今がそのときのようだな。」

「・・・そうですね」

「うむ、では話そう。お前もこの世界に来たということは前回も霊界に人間が来たことは知っているな?」

「えぇ、知っています。その人間は私の父なので」

「ほぅ、あいつはお前の父だったのか。ならばお前はこれから我の言うことに対して覚悟が必要だぞ。」

「それは一体・・・?」

「なぜなら下界で起きている事はお前の父によって起こされた事だからだ」

「なっ!!!」

アーノルドは驚愕の表情を浮かべる。

「それはどういうことです!!なんで・・・なんで私の父が原因なんです!?」

アーノルドは食いつかんばかりの勢いでガーディアンにせめよるがガーディアンは全くその表情を崩すことなく淡々と言う。

「落ち着け、今からそれを説明してやる」

「くっ!」

アーノルドは苦虫を噛んだような顔をした。

「お前達人間の住む下界ではルールというものがあるだろ、それはこの霊界でも同じなのだ。例えば死んだ生物はこの霊界門を通り、中で輪廻転生の時期まで暮らすということ、一度死んだものは同一の生物に生まれ変われないこと、とまぁこんな感じだ。そして禁忌とされてるものが生物の霊界侵入、あの男はその禁忌を破って霊界へ来た。しかもこの門の奥にある霊世にまで入ってきた。我々も止めれば良かったのだが、なにぶん生きた人間が霊界へやっていたことなどなくて少し混乱していたかもしれん・・・おそらく下界で起きている事は生物の霊界侵入によるバランスの傾き、それによって行き場を見失った下界の霊の暴走だと思う。」

長々と語ったガーディアンはここで一度言葉を切った。

「どうすれば・・・」

アーノルドは小さくつぶやく。

「知りたいか?」

「なにか、方法があるのですか?」

「厳密にいえば無い。道に迷った霊は二度と霊界へはたどり着けない、ならばどうするか・・・」

空間にわずかな静寂がおりる


「我々ガーディアンと契約する」


ガーディアンはそう告げた。

「ガーディアンと・・・契約?」

「そうだ、下界で起きていることは我々にも責任がある、できればどうにかしてやりたいが、霊界の者が下界の事に干渉することは禁止されていてできない、だか我々ガーディアンと人間が契約し協力すれば下界の霊を強制成仏させる事ができる」

「強制成仏」

「そうだ、下界にある物体にガーディアンを憑依させれば、その物体に一時的にガーディアンの力を持たせる事ができる、それで霊をもう一度殺す事ができれば強制成仏させる事ができるはずだ。ついでだからガーディアンの力についても説明しておこう。」

そうガーディアンは語っていたが、アーノルドは複雑な気持ちに潰されていた。

彼は下界で起きている怪奇な事件の解決のためにレイズと同じようにこの霊界へとやってきている。だがその事件の原因が実の親であるレイズ・バッカーノだということに彼は落胆していた。

アーノルドは内心英雄気分で霊界へとやってきている、しかいいざその原因が自分の身内となると、その意味は尻拭いいなってくる。だがアーノルドは怪奇な事件を解決しようと改めて決意した。少し意味は変わってしまったけど、それでも今は自分にしか怪奇な事件を解決できないと確信していたのだ。

アーノルドは自分の中に何かフツフツとわき起こるような感覚を感じた。

「ガーディアンには基本能力と特殊能力と二つの能力がある、基本能力というのはガーディアンなら誰でも持っている霊への干渉、つまりこの能力で霊を強制成仏させるのだ

、そして特殊能力は個々のガーディアンが持つ能力のことだ、それとーーー」

「もういいです」

「なに?」

「説明はもういりません、私は早く人を救いたい。父のせいで大勢の人が死んだ、そしてこれからもたくさんのが死んでゆくかもしれない、そんなの私は耐えられない。だから今すぐ私は戦いたい!」

「そうか・・・・良かろう」

ガーディアンは一拍おいて


「我がお前のガーディアンになろう!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アーノルドが下界から消えて約12時間、その間奇怪な事件で死んでいく人間の数が急増していた。

霊界から戻ったアーノルドがまず初めにとった行動は、アメリカの大統領との面談だった。

そこでアーノルドは霊界で知ったことや今自分はガーディアンと契約していてこれから暴走した霊を片っ端から強制成仏させていく事、そして暴走した霊の事を「デットゴースト」と呼ぶことを説明し、これらのことを他の国にも教えてほしい事を語った。

大統領は最初、半信半疑だったようだが確かに今この世界で起きていることは常識を逸しているということで信じたようだ。

アーノルドがガーディアンと契約し、GURDIAN・USERとしてデットゴーストと戦い始めて3ヶ月が経過すると人類の人口は半分程度まで減少し世界は混乱し始めていた。それもそうだろうたった一人の人間が全世界をカバーすることなど不可能だ。そこでアーノルドの情報によってデットゴーストの存在を知った世界の国々のトップは、対デットゴースト組織を秘密裏に組織する事を決定した。

なぜ秘密裏なのか?それは民間人にデットゴーストの存在を知られるのを恐れたからだ。ただでさえ最近死亡数が増え微弱の混乱にあるところに、さらに追い打ちをかけ大混乱になる恐れがあるのだ。

善は急げと、世界の国々は早急に対デットゴースト組織の設立に取り組んだ。

三年後、ついに対デットゴースト組織は完成した。しかしそれは少し遅れた登場だった。2ヶ月前、アーノルド・バッカーノは戦死していたのだ。

それはとても虚しく悲しい死だった。GURDIAN・HOMEに集められた裏の戦士達はアーノルドの死を悲しんだ。

そしてその中の一人の少年はアーノルドの意志を継ごうと決意したのだった。


ピピピッピピピッピピピッピピピッピピピッ

暗闇に包まれた部屋の中、その中央に置かれたベットの周りにある数十というデジタル時計の目覚ましである電子音が鳴り響いていた。

ベットの中の人影は布団の中で身じろぎをしている。

「うぅ・・・ん~・・・」

ゴソゴソと布団の中で動く人影は、ニュゥと腕を伸ばして、鳴り響く目覚まし時計の頭をパンッ!パンッ!と叩いていく、そのたびにに電子音が小さくなっていった。

全ての電子音が消えると布団の中にいる人影がムクリと上体をお越し布団の中から抜け出した。

パチンッという音がすると、部屋の天井に取り付けられている蛍光灯が暗闇の部屋に光をもたらす。

部屋の広さは12畳程度のワンルームで、家具はベットと小さなテレビ、あとは水道、クローゼットだけという寂しい部屋だ。

この部屋の主は一人の少年だ。その少年の名はレイ・カンダ、日本人、15歳のGURDIAN・USERだ。その姿は160cmと小柄ながら引き締まった体、端正な少年らしい顔に僅かな戦士の雰囲気が漂っている。だがそれらの全てを無視してしまうほどの特徴がレイにはある。

それは晴天の空のように、はたまた、透明度の高いスカイブルーのような、そんな青色をした髪だ。

確認するが、レイは日本人だ。そしてその髪は普通、黒色をしているはず。だがレイの髪は青色していた。

「ふぁ~・・・ねむ・・・」

レイは目を擦りながら水道に向かい水をだすと、それを手を皿にして受け止め、溜めた水を顔にかけた。

それを2、3回繰り返し、濡れた顔をタオルで拭くと、次いでクローゼットは開けてそこから一着のコートを取り出した。

それはGURDIAN・USERが任務の際に着用が義務づけられているコートで、それを着ていれば公共施設は全て無料で使用することができる事になっている。

それは黒を基調としていて、袖と襟の部分が白く、右胸のあたりにUSERとしての証であるマークがつけてある。さらに4つのボタンは本物の金でできておりクールさの中にもかすかな豪華さのあるコートだ。

レイはそのコートを着て部屋から出た。

「ちょっと寒いな・・・」

そこは幅10メートくらいの廊下だ、縦の長さは先が見えないほど長い、なぜかというと、ここがGURDIAN・HOMEの本部だからである。

「ふぁ~」

レイはまた欠伸をすると、このとてつもなく長い廊下をおもむろに歩きだした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

縦3メートル、横4メートルの大きな扉を開けるとそこは食堂だ。

ここではHOMEで仕事をする人が食事をしにくる場所で、その広さは東京ドームの半分の大きさらしい。ついでにこのHOMEでの仕事を紹介しておこう。

まず、レイのような「GURDIAN・USER(通称USER)」と呼ばれる人たちは、与えられた任務を遂行する、いわば戦闘員だ。USERは全てガーディアンと契約しており、自分の持つ武器にガーディアンを憑依させ、その力を行使してデットゴーストを倒す、つまり強制成仏させるのだ。

次に「諜報部」と呼ばれる仕事についてだ。これはどこで、どのような事件が起きているのか、またその事件はデットゴーストと関係あるのか、を調べ、もし関係があった場合、それを任務としてUSERに知らせるのが仕事だ。

続いて「技術・開発局」、これはHOMEで採用されている自立空中浮遊通信機通称「ゴーレム」の開発、またUSERの使う武器を作る事、さらにHOME内にある施設が壊れた場合の修理など、HOME内での仕事を専門とするところである。

そして、このHOMEのすべてを統括するのが、様々な国のトップ達で形成される「統括理事国」とうい部署なのだが、基本この人達は何もしていない。その代わりこのHOMEには「組織長」と呼ばれるただ一人の人物が、事実上実権を握っている。

HOMEでの仕事はおおまかこんな者で、ほかにも細かい仕事がいくつか存在したりする。

そして、その細かい仕事のうちの一つが、ここ食堂で働くシェフ達だ。

「お腹減ったなぁ~」

レイは眠気と空腹でふらつく足取りで食堂に入る。そして扉の一直線上にある(といっても食堂の広さは東京ドームの半分の大きさなので結構離れている)カウンターへと向かう、そこで注文を行うのだ。

「おはようございます」

レイはカウンターの向こう側へと声をとばす。

「おお、レイか」

すると、そこから真っ赤に燃えるような髪をポニーテールでまとめた女性がでてきた。

その女性はシャア、料理長を勤める強気な女で、綺麗な容姿の反面、「男より強し」と呼ばれるほど勝ち気なので有名だ。

「よしっ!今日は何を食う?何でも作るぜ!」

ガシッ!とガッツポーズをするシャアをレイは苦笑混じりで見つめた。

「ははは・・・じゃぁ、ステーキを5人前、ピザ4人前、蕎麦を10人前、天ぷらのエビを50匹、ライスを4人前、デザートで、みたらし団子が100本お願いできますか?」

「・・・いつもながら、すごい量を食うな、お前・・・」

若干、ゲッソリとした表情でシャアがつぶやく

「そうですか?普通だと思いますけど?」

「普通じゃねぇーよ!」

シャアが叫ぶ。

レイは「は、はぁ~・・・」と引きながら、「それじゃ、頼みます」と言ってカウンターを後にした。

食堂には長さ300メートルのテーブルが複数あり、イスも同様に300メートルの長さを誇っている。

レイはだだっ広い食堂を見渡しながら何処に座ろうかと考えを巡らせていた。この食堂の広さは東京ドームの半分の大きがあるのだが、なぜかカウンターは一カ所にしかなく、あまりカウンターから離れた所に座ると、できあがった料理を自分の席に運ぶのに苦労をしてしまう。今は朝だからか人は少なく、簡単にカウンターの近くに座ることができるのだが、昼時になると食堂に大量の人が来るため、かなり大変な思いをすることがあるのだ。

「よいしょ」

レイは比較的近くの席に腰を下ろすと、頬杖をついて高い天井をぼんやりと眺めた。

天井にからつり下げられたシャンデリアがらは淡い光が降り注ぐ、朝のためか食堂はほぼ静寂といっていいほど静かだ。

(今日の任務はなんだろうな)

レイはそう心中呟く。前回の任務から3日がたっているが、未だ新たな任務は無い、少し寂しい気持ちもあったが反面、楽だという気持ちもあった。

USERの任務は、任務掲示板という所に張り出されており、そこに任務の内容と任務実行者が書かれている。USER達はその掲示板を見て、今日の自分の任務を確認するのだ。ちまみに何もなければその日はフリーということになる。

(そろそろ、任務があってもいいと思うんだけどな)

そんな事を考えながら待つこと45分、

「おい!レイ、できたぞ!」

カウンターから顔を覗かせたシャアがそう声を張り上げた。

レイは「あ、はい」と返事をして席から立つとカウンターへと料理を受け取りに行く。

「ほらよ」

ドンッ!と音を立てて大量の料理がカウンターの上に現れた。レイはそれらの料理を目をキラキラさせて見つめ、

「ありがとうございます!!!」

目一杯の敬意と感謝をこめ、腰を90度に曲げて頭を下げた。

「お、おう、まぁな」

レイのあまりの感謝ぶりにシャアは若干後ずさっていたが、それでも笑顔を向けていた。

「それじゃ、いたたきます。・・・うんしょっ」

「お、おい!それ全部手で持っていくのか?」

カウンターの上に置かれた大量の料理を、両手で包むように持とうとするレイを、シャアは慌てて止める。だが、レイは一体何か変な事でも、と言わんばかりに首を傾げていた。

「そうですが?」

「いやいや、ちょっと待て!!なっ?そんな大量の料理を一度に全部運ぼうだなんて無理だろ、何回かに分けて運んだらどうだ?」

「え?」

ジェスチャーを加えながら丁寧に熱弁するシャアのことを

、レイはなぜか目を見開いて見ていた。

「それ、本気で言ってるんですか?」

「あ?ああ、そうだが?」

「そうですか・・・シャアさん、あなたはそんな人だったんですね。」

「えっとー、何が?」

「あなたは・・・」

レイは料理からゆっくり手を離すと、右手をユラリと上げ、その指でシャアを指す。そして・・・


「シャアさん!あなたはなんて人だ!そんなことしたら、不公平じゃないか!!!」


レイはそう叫ぶと、ガシッ!と料理をつかみそそくさとカウンターから離れていった。

言われたシャアは、全く訳もわからず固まっていた。しばらくして思考が回復し始めたシャアは、

「意味わかんねぇ!!!!!」

と叫ぶことしかできなかった。


食事を終え、自室に戻る途中で掲示板を見てきたレイは、クローゼットを開けた。

「今日は任務だね。」

独り言を呟くレイは、クローゼットの中から自立空中浮遊通信機、ゴーレムを取り出すと、そのスイッチを入れた。

キュィイイン、という起動音が響き、ゴーレムは一見コウモリの羽に見えるそれをバタつかせ、虚空へと飛び立つ。

「あと、これも」

「主、任務ですか?」

さらにクローゼットを探るレイに、誰かが話しかけた。しかし、この部屋にはレイ以外の人はいない、だったら誰か?

「やぁ、ロックオン」

レイがそう言った刹那、ポンッ!という何かが弾けるような音と共に、レイの傍らにレイと全く同じ姿をしたガーディアンが現れた。

ロックオン、それがレイと契約を交わしたガーディアンの名前だ。姿はレイと瓜二つだが、声が低く大人のような感じがする。しかしレイの姿は明らかに子供のため、少し、いや、かなり違和感がある。

「久しぶりの任務ですね」

「うん、そうだね腕が鈍ってなければいいけど」

「大丈夫です、私がついてます。」

「はは、ありがとうロックオン」

レイはクローゼットの中から任務に必要な道具を取り出し、それを制服であるコートの中にしまっていく。その中にレイの武器であるリボルバーも入っていた。

「よしっ、準備完了!」

パタンッ!とクローゼットの扉を閉めたレイはフゥ~と息を吐いた。

「行きますか主?」

ロックオンが言う。

「うん、そうだね、そろそろ行こうか。」

レイはコートを翻し、任務へ向けて部屋を出た。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

薄暗い通路、壁は石、光は石の壁に掛けられたたいまつのみ、そんな空間をレイは歩いていた。

靴音の響く静寂な空間、ここはUSERが任務に出る際に使用される地下通路である、そしてこの奥には地下水道がありそこから船に乗って外に出る、コレは秘密組織であるGURDIAN・HOMEの存在を隠す為の手段の一つである。

やや狭い一直線の通路をしばらく歩くと、突然空間が広くはれた。

奥には水が流れており、その水の上に数隻の小舟がある。ここが地下通路の最終地点で、この小舟で外に出るのだ。

「お願いします」

レイは小舟に乗っている船員にあいさつをすると、船員は

無言で微笑んだ。

小舟に乗り込み、ゆっくり動き出す小舟に身を任せること5分、外に出たレイは目を細めた。

「まぶしいな」

外は晴天で、少ない雲の間から太陽の光が降り注いでいるる。小舟はそこらへんの岸に止まるとレイを降ろし、来た道を逆に航行していった。

小舟はいつもこの森にUSER達を降ろしていく。この森は、すぐ近くに海と町があり、その町からは飛行機、または船で目的地まで行くことになっている。

「さっ、いくか」

レイは自分の頬をパンッ!と一度叩くと、颯爽とかけだした。

10分ほど走ると森を抜け、町外れへと着く。そこにはさほど多くはない人があっちへこっちへ歩いている。レイもさりげなくその流れに入っていた。

(さて、今回の任務はパラスでの任務だったよね。パラスは確かアジアのチュウセンの中にあったから、飛行機の方がいいよね)

この町には基本レンガ造りの建物が多く、そこまで高い建物はない、落ち着いた印象を与える町だ。

だが、この町から少し内陸に行くと、そこはもう都市といえる所だ、レイの目指す空港はその都市あたりにある。レイはその空港を目指して歩いていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

空港から出るとそこは今回レイが任務を行う国、チュウセンだ。だがレイの任務遂行場所は、チュウセンの内陸部の端にあるパラスという場所だ、そこはかなり貧乏な村らしくタクシーやバスも通っていない、そのためレイはヒッチハイクをする必要があるのだ。

ということで現在、レイはヒッチハイクで乗せてもらっている車の荷台に乗っていた。

この車はすでに相当内陸に入ってきているのか、周りに建物は全くなく、あるのは灼熱の太陽によってアツアツに暖められた砂だけだ。つまり今、レイは砂漠のど真ん中を車の荷台で揺られながら移動しているのだ。

「暑い~」

レイは荷台で寝っころがりながら、呟く。

「あ~アチ~、っていうかどうして荷台なんだろう、助手席空いてるじゃん、何コレ?嫌がらせですか?」

太陽に向かって愚痴を飛ばすが、太陽は無慈悲に熱をまきちらし続ける。

灼熱地獄にさらされること約1時間、車が急に動きを止めた。運転席からは運転手が「パラオに着いたよー!」と声を上げているが、汗だくだくの脱水症状寸前のレイにはそれに対しての、返事ができなかった。

運転手も返事が無いことに不信感を感じたらしく、運転席から出て、荷台を見た。

そこには、ダーと伸びているレイの姿があった。この気温の元ではレイの青い髪に涼しさというものは一切感じられないようだ・・・

「おっ、おい坊主!!大丈夫か!?水!水!」

カラカラに干上がっていたレイは川に飛び込む夢を見たそうだ。

~時間は進み30分後~

運転手から水を飲まされたレイは取りあえず一命を取り留めていた。

「すみません、ありがとうございます。」

苦笑を浮かべるレイはそういって頭を下げる。

「いや、悪いのは俺だ、助手席に乗せればよかったな・・・悪かった」

「いえそんな!乗せてもらえただけでもありがたいです。」

「そうか、ありがとう、そういってくれると気が楽だよ。」

男はそういって微笑んだ。その後レイと運転手の男は2、3度言葉を交わすと、男が車に乗って走り去っていった。

「よしっ!」

レイは正面を見据える。そこはパラオに入るための木でできた門、その奥には藁でできた簡単な家がいくつも並んでいる。

「デットゴーストの影響か・・・」

レイは呟き、奥歯を噛みしめる。

いくら諜報部の人間が優秀でも、発見してからの対応はどうしても遅れてしまう。それは無意味な所にUSERを派遣しないためにデットゴーストとの関係性を深密に調べる必要があるからだ。

レイは足を前に出し、木でできた古い簡単な門をくぐった。

その刹那。

「あのお方は!!」

どこからか声が飛ぶ。

「勇者さまだ!!!!!」

「は?」

レイが門を入った所でハテナマークを浮かべていると、どこからかそんな言葉が響いていた。

すると、そこらへんを歩いていた人も、藁の家の中にいた人も家から出てきて、レイの事をジーと見つめていた。その中にいる子供が「ねーねー、ママ、あれ勇者さまじゃないのー?」とレイを指さし言っていた。

レイは訳も分からず、ただ戸惑うことしかできない。

レイを見る人が段々と増える一方、一人の杖をついた小さな老人が、レイに歩み寄ってきた。その瞳は揺れている。

「あ、あなたは・・・」

しゃがれた声で老人は言う。

「もしや、勇者さまであられるか?」

「は?」

勇者?とレイが繰り返すと老人は深く頷き、

「このパラオ村の言い伝えにある勇者さま、その男は蒼き髪を伸ばし、漆黒の布で身を覆う者である。というものがある」

「えっと・・・そうなんですか、ところであなたは?」

「ああ!申し遅れた、ワシはこのパラオの村で村長を勤めている、パパチと言います。勇者さま、こんなところで立ち話も疲れるでしょう。今からワシの家へどうぞ」

いや、勇者じゃないんだけど・・・というレイの声は村長のパパチには届かなかったようだ。

パラオの村は意外と広かった。しかし、そのありさまは最悪だ。

元々はレンガでできていたらしい家も、今ではただのゴミになって転がっている、時々見かける倒れた人は死んでいるのだろうか。レイはこういう場所は何度も見てきたが、やはり新鮮な気持ちはぬけなかった。

しばらく歩くと目前に家の形を残したレンガの家が見えてきた。しかし、ボロボロな事に変わりは無い。

「あれがワシの家です」

パパチはそう言っていた。

「どうぞ、お入りください」

パパチはそう言って先に家へ入る、レイも後に続くように長方形に切り取られた壁を通る、おそろくここに扉があったのだろう。

「おじゃまします・・・」

中は外見からは見えないほど崩壊していた、あるのは人が6人くらい入れるリビングと、ドアの向こうの部屋ぐらいだ。

パパチはそのリビングの中央あたりに腰を下ろすと、レイには座るように言った。

「ヒドいでしょう・・・」

パパチは唐突に話し出した。

「この村も元々はそれなりに綺麗な所でした。周りだって砂漠ではなく森だったんです。しかし、いつからか・・・まず消えたのが森です。誰も気づかないうちに全ての木が折られていました。」

パパチのしゃがれた声が深みを増していく。

「私達は絶望しました。ですがそれもつかの間、ある日この村に妙な奴らがやってきたのです。」

「妙な奴ら?」

レイは任務書に書かれているため全て知っているが、あえてパパチにたずねた。

「ええ・・・」

パパチは一拍おいた。そして言う。


「人形ですよ。」


リビングを静寂が包む。

「人形ですか・・・?」

「そうです、人形です。子供の人形。とても信じてくれないでしょうが、奴らがこの村にやってきたのです。ものすごい数でした。そして奴らは・・・っ!」

パパチは両目をキツく瞑り、拳を握りしめている。

「奴らはこの村の村人を殺し始めたんです!!」

任務書と同じ・・・レイは心中つぶやく。

「しかも一日ではありません!3日に一度というペースで、午後7時にやってきて、8時に帰っていく・・・おかげで村人の数は4/1に減りました。」

床に滴が落ちた。

「今日、奴らが来ます。私達はその前にこの地を離れるつもりです。しかしっ!」

唐突に上げられたパパチの大声にレイはビクッ!と体を震わせる。

「勇者さま!あなた来てくれたからにはもう安心ですね!」

「え?あ、まぁ・・・」

勇者じゃないんだけどな・・・レイは思うが、逆にその方がやりやすいかもと思った。

自分がGURDIAN・USERだとバレるのはマズい、ならば勇者としてこの村に危害を加えるデットゴーストを倒してしまえば、村人からは勇者として扱われHOMEの存在を知られる心配が無くなるのだ。

現在、時刻は午後4時頃、人形が襲ってくる時間は午後7時、3時間暇な時間ができてしまった。

「それでは勇者さま、こんななにも無い所ですが、戦いが始まるまでの間、ごゆっくりとお休みください」

立ち上がり、頭を下げるパパチに、レイは

「はい、まかせてください」

といって、優しい笑みを浮かべたのだった。


パパチの居なくなったボロボロのリビングで、レイは仰向けに寝っころがり、睡魔に身をまかせえようとしていた。

「はぁ~」

レイはため息をつく。なぜなら、この家の外に人が集まっているのか、とても騒がしい、そのため寝たくても寝れないのだ。しかも、外にいる人たちの話は勇者にまつわるものばっかりだ。

「それにしても、パラオの言い伝えの勇者って、本当に僕に似てるな・・・」

パパチの話しによると、勇者は「蒼き髪を伸ばし、漆黒の布で身を覆う者である」らしい。確かにレイの髪は蒼く、着ているものも黒を基調としている、しかし自分が勇者だなんて到底信じる事などできなかった。っというか、それ以前にそれはただの言い伝えだ、信じるに値するはずがない、レイはそう心中思い、再び睡魔を呼び寄せ始めた。そしていつの間にか、眠りの園へと足を踏み入れるのだった。


「勇者さま!!勇者さま!!!起きてください勇者さま!!奴らが来ましたっ!人形が来たんですよ!!」

「何だって!!」

安らかな眠りの中にいたレイは、パパチの叫びで目を覚まし、飛び起きた。

「早くどうにかしてくださいっ!」

パパチの表情は恐怖一色に染まっている。外からは意識しなくても悲鳴や叫び声、泣き声がこだましている。起きあがったレイは、一直線に扉のない、扉へとむかった。

家から出るとレイは声を失った。その光景は地獄を彷彿させる。

身長50cmほどの女の子人形が地面一体を埋め尽くし、行進を続け、近づく人間の足や腕、首などを片っ端から折っていく。

ある男が太い木を振り回し人形へと反撃をするが、人形はそれを軽々と受け止め、さらに奪うと、一気に3mの高さまでジャンプ、そこから太い木を振りおろし男の顔面を真ん中からグチャリ!と潰した。細かな肉片と血のしぶきが

飛ぶ、男は腕を力無く下げ、次いで地面へと崩れ落ちた。

人形は男から奪った棒を一度上に投げ、それをやり投げの棒のように持ち変えると、まったく予備動作をなしに投げた。

あの小さい体のどこにそんな力があるのか、人形が投げた太い木の棒はビュウ!と風を切る音を響かせながら、走る女性の胸を貫通した。胸に大きな穴を開けた女性は無言で倒れ込む、その近くにいた小さな子供は死んだ女性に腰を抜かしたのか、その場に座り込み、その子供に目をつけた一体の人形が子供に歩み寄り、片手でガシッ!と首を掴むと、容赦なく子供の首を握り潰す。

人形の布は血を吸って赤黒く変色していて、それが不気味さを、さらに増加させている。赤く光目には殺す対象しか見えていないようだ。

レイはその光景を見て奥歯をかむ。そして地獄絵図の中へとかけだした。

「やめろー!」

そう叫びながらレイは、コートの中に手を忍ばせ、そして抜いた。

レイの右手には白銀に輝く一丁のリボルバーが握られている、これがレイの武器だ。

「ロックオン!!」

懐からリボルバーを引き抜いたレイは、次いで虚空にそう叫んだ、するとポンっ!と音をたてて傍らに、レイと全く同じ姿をしたガーディアン、ロックオンが姿を現す。ただし服装はマントのようなものを着ている。

「ロックオン、憑依!!」

左手を空にかざすレイがそう言うと、

「はっ!!」

傍らにいたロックオンが飛び、レイの手の平で青白い人魂へと姿を変えた。レイはその人魂化したロックオンを握ると、右手にあるリボルバーへとその人魂を押し込んだ。

まばゆい光がこの場を支配し、人形達の注意がレイに向く。レイを包む白い光は、だんだんと消えていき、そして完全に消えるとレイの右手には先とは異なる形状のリボルバーが握られていた。

「憑依完了・・・ジャスティス!!」

そのリボルバーは銃口が二つに分かれていた。

ジャスティスとはレイの愛用する武器で、ロックオンを憑依させる事で銃口が二つになり、光の弾を無限に撃ち出す事ができる。

動きを止めた人形達は、立ちはだかるレイをその赤くひかる目で見ている。レイもそんな人形達を見ておもう。

(この人形達からは微かにマイナスオーラを感じるけど、多分こいつらは本体じゃない・・・どこかに本体がいるはずだ)

※マイナスオーラ・・・デットゴーストのみが出す特殊な

           オーラ、逆にガーディアンはプラ

           スオーラ


ユラリと人形達の腕が動いた。

来るか!?とジャスティスを人形達に向けて構える。そして100体近い人形達が一斉に地面を蹴りレイに接近してきた。人形の赤い目がレイを捕らえている。レイはジャスティスの引き金を引いた。

バン!バン!バン!と3回の銃声とともにジャスティスの二つの銃口から同時に2発の光弾が撃ち出される。計6発の光弾は人形へ向けて飛来する。

光弾を避ける気など全くないのか、撃ち出された6発の光弾は、前を駆けていた6体の人形に直撃した。ブシュッ!という音が響き人形の頭が破裂する。その中から飛び出した綿が舞っていた。

前の6体がやられても人形達に止まる気配は無い、レイとの距離が5mまで縮まる。

「数が多い・・・!」

レイの顔が歪む。

バン!バン!と続けざまに2回引き金を引き4発の弾を撃ち出す。光弾があたり、はじける4体の人形、だがほかの人形は止まらない。

「くっ!」

すでに人形はレイのすぐそばまで接近している、すると人形はレイの3倍の高さまでジャンプすると、その小さな手を握り拳を作り、それを高さと早さを利用してパンチとして繰り出した。

レイはそのパンチを横に動いてかわし、次いで後方へジャンプした。パパチの家の屋根に着地したレイは、ジャスティスを撃つ。

「数が多すぎる!」

いくらジャスティスで人形を倒しても一向に数が減らない、レイはさらにジャスティスを撃ち続けた。

人形の布が破れ、中に詰められている綿が宙を舞う、村人はすでに避難していて、このあたりにはいない。空は薄い暗闇に沈んでいた。

バン!バン!と銃声が響く、光弾が薄い闇を照らした。その時、レイの後ろから3体の人形が現れた。

「っ!」

3体の人形はそれぞれ斧、ナイフ、岩を持っていた。

岩を持った人形が、その岩をレイに向けて投げた。横に飛びその岩を避けると、岩はパパチの家の屋根を破り落ちた。レイは岩を投げた人形に銃口を向ける。だがその攻撃は失敗に終わる。レイの横から斧を持った人形とナイフを持った人形が同時に襲いかかってきたのだ。

レイは引き金を引くのを中断して、屋根からジャンプして地面に降りた。しかしそこは人形の巣だ。

「・・・マズ」

周り一面、人形だらけだ。さらに屋根から降りてきた刃物を持った人形が2体、素手の人形が一体。レイは完全に囲まれていた。

「仕方ないな。」

レイは両手を上げてつぶやいた。そして両手でジャスティスを握ると両目を閉じた。

「ガーディアン・セカンドタイプ!」

レイが叫ぶと、掲げられたジャスティスが光を放った。レイの姿が光に隠れる。

「蒼き勇気」

光の中でレイが言う、そして掲げられた両腕をバッ!と開いた。レイを包んでいた光は余韻を残すことなく虚空へ消えた。

「ジャスティス・ニードル!」

レイの両手にはまったく同じ形をしたリボルバーが一丁ずつ握られていた。銃口はどちらも一つだ。

USERにはガーディアン・セカンドタイプというものがあり、それは通常時より多くのプラスオーラを放出する事によって、攻撃力などを強化するもので、最高サードまでる、しかしサードを使う事のできるUSERは今のところ少数だ。

「さぁ、いくよ!」

レイは右のリボルバーを後ろに向け引き金を引いた。刹那、シュッ!っというような吹き矢を吹いたときの音が微かに聞こえた。

その音が3回続いたと感じた時には、3体の人形は頭を破裂させて地面に伏していた。

後ろの3体を消したレイは、右手と左手のリボルバーを前方に構えた。前には大量の人形がレイにジリジリと歩みよってきている、そんな人形達を見ながら、レイは小さく口元を上げていた。

ダッ!と一斉に駆けだした人形に向けて、レイは引き金を引いた。

静かな発射音が浅い夜空に響いていく。細い光の針は人形の体に触れると瞬時にはじけ、触れた箇所から膨張、破裂していった。

人形の数はどんどん減っていく、レイはさっきから一歩たりとも動いていない。そしてとうとう人形の数は二桁に満たないほどになっていた。

「形勢逆転だね」

レイは笑みを浮かべて、そう言った。身長50cmの人形はまったく反応を示さないが、それでも攻撃の手を止めたところを見ると、多少感情はあるのだろうか。

レイはさっさと残りの人形を倒して、この人形を操っている本体を探そうと決めて、引き金を引こうとした。が、その時人形のすぐ後ろの空間にヒビが入った。

「?」

そのヒビは徐々に広がっていく、パキッと無機質な音を

たてて広がるヒビは、縦に3mほど広がったところで止まった。

レイはヒビを凝視した。人形はまるで大物が出てきたときの兵士のように下がる。唐突に、ヒビが左右に裂けて、そこから太い腕が飛び出した。

「っ!」

ヒビはさらに左右に広がり、中から出てくるものの姿を露わにしていく、そして・・・

「ギャァァオオオオ!!」

奇声とともにヒビが大きく広がり、中から全長5mはあるかというほどの巨大なフランス人形が出てきた。しかしその姿は、フランス人形のような可憐さは一片も無い。その服はボロボロで目は赤く、口から涎が垂れ落ちる。

「アアアアアアアア・・・」

その人形の巨大な腕は下ろしただけで、ズン!と地響きを起こす。

「本体か・・・思ったよりデカいけど、マイナスオーラはそんなに大きくない・・・倒せる!」

レイはジャスティス・ニードルを親玉に向けた。光る銃先が血走った目を捕らえた。

ヒュゥッ!

細い光の針が飛ぶ、その先には赤い目がある。しか

し・・・その攻撃は巨人の腕に阻まれた。巨人の腕は膨張し、そして破裂した。

「ウア?」

無くした左腕を眺めて、デットゴーストは首を傾げている、そんなデットゴーストにレイは静かに言う。


「哀れな魂よ、僕が、道を教えてあげる。」


レイは一度目を伏せ、そしてカッ!と開けた。

「これで終わらせる!」

レイは上に大きくジャンプした。


「瞬神ショット!!」


ビュ!とレイの姿が空中で消えた。刹那、何人ものレイが姿を表し、四方八方は光の針を浴びせる。

ヒュ!ヒュ!ヒュ!ヒュ!ヒュ!ヒュ!ヒュ!

すごい数の発射音が響いた。なおもレイの数は増えていく、レイの姿が微かにブレている、おそらくあれは残像だろう。

どれくらい続いただろうか?すべてのレイが消え、地面にレイが立っていた事に気づくのには少し時間が必要だった。

「ア・・・アァ・・アゥ?」

なにが起きたのか把握できないデットゴーストは、ブルブル震える自分の体を見ている。

ボコッ!と背中が膨らみ、それに続くように腕、腹、顔、頭、すべての四肢が膨張を始める、すでに原型は止めておらず、いつ破裂してもおかしくなかった。

「オエッ!アガゥ・・・ゴホッ!」

苦しみもがくデットゴーストにレイは静かにつげた。

「大丈夫、君は霊界へ行って、生まれ変わるんだ。安らかに消えなさい。」

はじけた破片が夜空を舞った。


デットゴーストの強制成仏に成功したレイは、懐からゴーレムを取り出すと、そのスイッチを入れた。

キュイイインと音を立てて起動したゴーレムは通信機として使用する事ができる。

「HOMEへ」

レイが言うと、ゴーレムはピピッガーガと音をたてHOMEへと繋がる。

「ことらHOME、どうぞ」

「レイ・カンダ、ただいま任務の完了を確認しました、どうぞ」

「了解しました。それではHOMEへ帰還してください。」

「わかりました」

通信を切ると、レイは夜空を見上げた。空はすっかり暗闇に包まれていた。

このあたりに電気のような光などあるはずもなく、あるのは月の光だけ、村人は帰ってきていない。もし帰ってきて、祝いなど受けるのはごめんだ。そう考えたレイは。まだ暗い夜空の下を、歩き始めた。

空には欠けた月が浮いていた。

どうでしたでしょうか・・・正直自分はまだ未熟ですが、いつか小説家になろうという夢があります。できましたらコメント・アドバイスを下さい。辛口でも構いませんが、罵倒はさけてください。

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