夢で見た話
「どうして解雇なんですか」
早朝、始業の鐘が鳴って直、この部署に勤める6人に解雇が告げられた。
自分以外は何故かそれを素直に受け入れ荷物をまとめて去っていく。
そこに何の感情も見られず、ただ淡々と別れの挨拶すらなく何時も仕事へ行くときの様に辞めて行った。
「君は知らないのか?」
「何をですか」
「昨日、X社からこの分野の仕事はその一切をX社が引き受け、X社以外の人員は全て解雇だと発表があっただろう」
再び部長の机に手を叩きつける。
「何故それをこっちが受け入れるんですか。X社が勝手に言っているだけで、関係ないでしょう?別に国からの行政命令があったわけでもX社がこの分野の先駆者というわけでもないじゃないですか。むしろこっちの方が歴も長いし、有名でしょう」
「君の言い分もわかる。だが、もう決まったことだ。我が社だけじゃない他社もそういう方針で動いている。勿論、私も解雇対象だ」
「部長も?会社の上の人間が決めたんですか?」
「何を言っているんだ。X社に決まってるだろう。私も荷物をまとめなければならないんだ。喋りはもういいだろう」
そう言うと背中を向けてどんな話を振っても無視して動く。
全ての荷物を持って扉から出ていく直前に一言話してから出ていく。
「あ、そうそうどうしても解雇に反対する君宛に一通封筒を渡しておこう。ほれ」
大き目の封筒にA4サイズのコピー紙が貼りつけられており、差出人はX社。中身には当然のように解雇通知。
受け入れられず止まっていると、他の部署の人間が入り仕事を始める。
存在は完全に無視され、嫌々ながらも帰路につく。
「どうしろってんだよ。全く」
悪態をついて布団に身を投げ出す。
鞄を適当に放り投げて目を瞑る。
「何者だよX社。意味わかんないぜ。なんで勝手に言ったことがこっちまで影響するんだよ。部署のあいつらだってそうだ。仕事を失うっていうのにあんなに簡単に諦められるか?もうわからん」
ため息を付き、遅めの2度寝を迎える。
寝過ぎで疲労感を覚えながら立ち上がると、すっかり日も落ち外は暗闇に包まれている。
ネットを確認してもそれらしい情報はなく、昨日のX社による発表があるのみである。
解雇通知もそうだ。何故会社からのものではなくX社から送られてくるんだよ。
鞄から封筒を取り出すと宛名ラベルが剥がれ下の紙が現れている。
I想重ねて君を呼ぶ日差しは柔かく頬を撫でOcean breezeがその日を照らす時は静かに愛を守り続けXylophoneの調べはその時を告げ分かち合う夢は果てしなく続くTenderな夜はその分を深め行き交う人々の中で君を探すのぞむ未来は輝きに満ち飛び立つ鳥の影を追いかけ行く先は霧の向こうに消え機微に触れる君の笑顔に導かれにじむ月明かりに心を重ね乗せた想いは星に届くようれんず越しにその行方を願う 佐々木
ナニコレ
解雇されたと思っていたら下手なポエム文が送られてきてた。しかも謎に斜めにプリントされている。
ふざけてんのかX社。
なんかでも馬鹿らしくなってきたな。
久しぶりの就活か。あれ結構きついんだよな。
数日は久しぶりにゆっくり過ごすか。仕事始めて最近はパット金使って遊んでないしな。
取り合えずその日はコンビニに晩酌を買って夜更かしして飲んだ。
金を使おうと思ったが特にしたいこともなく、高い肉には早々に飽きというか量が食べれず、だらだらと過ごしていた。
ミステリー系のテレビを見ていると暗号の解読シーンが映る。
元凶を忘れないために捨てていなかった封筒を引っ張り出して見ると、書かれている文字列に従って細く切れ込みが入っている。
なんだか昔見た気がして剥がし、適当な棒に巻き付けてみても判然としない。
縦読みや斜め読みにも反応はなく、AI君に賭けると愛と永遠への希望に乗れなんて言われる始末。
諦めずに暗号解読に励んでいるとI日O時X分T行の飛行機に乗れという言葉が浮かびあがってくる。
未だ、I日には時間があり、Tが観光地だったことから暇つぶしに向かうことにする。
I日になって飛行機に乗ると、誰も乗っていない。
不審に思うが貧乏性で止めることもできない。
客室乗務員も乗客も自分以外に見えないが何事もなく出発する。
暫くは何事もなく飛んでいたが、異音と揺れが酷くなり爆音と光が溢れ、意識が途切れた。
次に目を開けると子供部屋だった。
何か見覚えを感じる部屋だが、自分の子供部屋と決定的に違う点としてベットが三つあり、見たことのない少年と少女が寝ている。
自分に兄弟などいなかった。しかも、少年少女は西洋風だ。
そもそも自分は飛行機に乗っていたはずじゃなかっただろうか。
何か問題が起ってここに拾われたとか。それでも子供たちと一緒に寝かせるだろうか。
ベットから起き上がるとやけに目線が低い。手も小さく、短い。
「あー、あー」
声を出すと高い気もする。喉も柔らかい。
起こしてしまったのだろう、少年少女が起き上がってくる。
「「お兄ちゃん?」」
お兄ちゃん?自分が?この子達は何者だ。むしろ自分が何者になったのだ。
起きたのを察知してか父親らしい人が現れる。
そこからのことは流れに身を任せ、朝食を食べビデオで学習する。
学習としては小学校で学んだような事だろうか。
歴史と言語は全くの別物、歴史に見覚えはないが言語よりはましで、見たことのない文字列なのに頭に叩き込まれるように理解できる。
学習の中で昔のことを思い出すようにここでの生活を思い出す。
少年少女が自分の兄弟であることや、自分の事、この世界の事。
様々な疑問、困惑に包まれながらこの世界でのこれまでの生活に倣って動く。
世界には全く覚えがないのにこの家だけは実家に似ている。
過ごしている中で思い出したことがある。
元の世界の事だが、庭木の下に秘密の隠し箱を入れていたことだ。
この世界ではどうなのだろうか。
「何するのお兄ちゃん」
「部屋で遊ぼうよ、お兄様」
後、これは趣味になるが妹からの呼び方をちゃんからさまにかえた。ゾクゾクする。
「宝探しだよ。スコップは持ったな?行くぞ」
「おー」
「えー」
対照的な二人だがなんだかんだ言って付いてきてくれる。
砂場で遊ぶようなスコップをもって掘っていると、缶の箱に当たる。
箱を開けると子供の頃の思い出ではなく、タブレットとソーラーパネルが入っていた。
「お兄ちゃんなにこれ?」
「お兄様これは?」
「これはタブレットだけど、知らないか?」
「「知らない」」
部屋に戻ってタブレットを開くと専門書らしい電子書籍が分野言語問わず無数に入っている。
弟はそれを見て頭が痛くなったようで、顔を背けるが妹の方は興味津々に覗き込む。
「お兄様。私これ解かる。お兄様はわからない?多分弟も解かってるとおもう。頭に直接理解が入ってくるもん」
「結構難しいこと書いてあるし、種類によっては何が書いてあるか読めすらしないんだけど」
「うん。これ面白いからもっと読んでていい?」
「いいよ。自分には楽しくないから。画面が光らなくなったら、こっちの板を陽光に当てて伸びてる線を繋げばまた、光ると思う」
「すごい。光を貯めこんで移してるの?」
「あー、まあそんなもんだよ」
ソーラーパネルの仕組みなんて光を当てれば発電できる程度しか知らないし、小さな妹に説明するのも酷だろう。そう思っていた。
箱を見つけ出して数日。
「お兄様。ソーラーパネルって太陽の光の光子がパネルの表面に当たると、パネルの材料である半導体の中の電子を押し出して、この電子が特定の方向に動くようにパネル内で仕組みが作られているため、電子の流れ、つまり電流が発生することで、乾電池のように、電気として利用できるようになる。っていう仕組みだったんですね。数日前の私が恥ずかしいです。そんな私に簡単に教えてくれたお兄様は凄いのです」
「え、なんて」
「だから、ソーラーパネルは太陽光に含まれる光子がシリコン原子に衝突し、その|バンドギャップエネルギー《バンドギャップエネルギー》が電子に伝達され、これにより、シリコンの価電子帯から電子が飛び出し、伝導帯に移動して自由電子となり、同時に正孔が生成され、PN接合部には、N型からP型へ向かう内部電界が存在し、生成された電子・正孔ペアは、この内部電界の作用により、電子はN型側へ、正孔はP型側へと引き寄せられ、分離し、キャリアが接合を境に蓄積することで、起電力が発生して、この起電力により、パネルの電極を外部回路に接続すると、電子がN型側からP型側へ移動し、直流電流として電力が取り出せるということだったんですね。こんなことを私に簡単に教えてくれたお兄様は凄いです。
「あ、うん。そうだね。ちゃんと理解できるなんて凄いな」
妹がちょっと理解できないことになっていた。
なにこれなにこれ。
確かにタブレットを四六時中持ち歩いて読んでいるとは思ったが、こうなってしまうとは。
前世合わせて数十年は生きている自分を、十年程度の少女が上回ってしまった。
弟はもう口を開けて呆けている。
しかし、何故か滅茶苦茶慕われてる。
やばい。これ、話を続けると幻滅されそう。
「おーい。友達が出来たのかー?手紙が来てたぞ」
丁度いい、父さんの呼び声が聞こえてきた。
この話を終わらせよう。
「お兄様の友達ですか?私が取って来ますね」
妹が駆けて行く。
「お兄ちゃん。妹はなんて言ってたの?」
「自分にも解からない。弟よお前もこっちであってくれ」
「何の話をしてたんですか?」
父さんから手紙を受け取った妹が戻ってくる。
「妹が賢くなったなって話」
手紙を貰い、頭を撫でる
「ありがとうございます。まだまだお兄様には及ばないのでもっと読み込みますね」
「頑張ってな」
撫で続けながら受け取った手紙を見ると差出人に佐々木の文字がある。
佐々木ってあのくそみたいなラブポエムじゃなくて暗号文を送ってきてた奴。
何者なんだ。
手紙を開いたその瞬間......
自分は目を覚ました。
出社し朝礼後も首の通達もなく、忙しい仕事の日々。
X社なんて存在せず、佐々木も出てくることはなかった。
超絶適当な落ちですいません。
続きを見れたら改変します。




