第5話:仲良くなる大作戦
第4話からの続きとなります。
少しだけ時間を遡った12月初旬。勉強と部活に勤しんでおり、心身共に充実した毎日を送っていた。
佳穂とは文化祭の日以降まったく話せていなかった。付き合ってる説が流れてしまったせいか、廊下ですれ違ったときも、目は合うが恥ずかしそうにされてしまうので声をかけるに至らず。
実は佳穂が亡くなった原因を私は知らない。葬儀の日、私は泊まりでの仕事があり行けなかったのだ。参加できていれば同級生との会話で聞けたかもしれないが。
一報が入った段階の感じだと事故などの突発的なものではなさそう。そうなると病気の可能性が高い。その場合、早期に病気を発見できるようにするのが彼女を救う唯一の近道に思える。
亡くなったのが35~36歳の年なので少なくとも30歳前後の時代から毎年人間ドッグに行くよう勧められる立ち位置にいたい。気軽に話が出来るポジション。一番自然なのは恋人、配偶者の立ち位置だろう。仮に事故死や自ら命を断った場合でも、その関係性であれば生活圏もその当時とは異なり、私次第でなんとか出来るはずだ。
正直な話、先日の文化祭での一件は私をドキドキさせた。同級生との恋愛は難しいなんて思っていたが、ぶっちゃけもう好きになっている。チョロいぞ、私。。
ということで、恋人路線でいきたいと思うが、この状況である。なんとかもう少し親しくなれないだろうか。恋愛に関してはタイムリープ前でも奥手であったため、名案は思いつかなかった。
その日は顧問の都合で部活がなく、貴史と一緒に下校していた。
「トキ、どうした?元気無さそうだけど何か悩みごとか?」
いつものほほんとしているのに、こいつは時々カンが鋭い。
「俺で力になれるかわからないけど、相談のるぞ?」
なんでも自分一人で考えていたが、時には人に頼るのもよいかと思い、貴史に話してみることにした。
「佳穂ちゃん狙いとはハードル高いとこいくなぁ」
「うっせー、好きになっちゃったもんはしょうがないだろぉ」
「いや、冷やかしてるわけじゃない。客観的に見ての言葉だよ。でもまあ、よし。案はある。大舟にのったつもりで任せておけ!」
自信満々な貴史に少々不安を覚えたが、実際、貴史は最高の仕事をしてくれた。
こう見えて貴史はコミュニケーション力のバケモンだ。貴史は佳穂と同じクラスだった。二学期の期末テスト2週間前ということもあり、貴史はクラスの男女数名に声を掛け、2週にわたる土日4日間貴史の家で勉強会をすることになったということだ。そこにサプライズ特別講師として成績優秀な私を呼ぶということだった。もちろん、その参加予定者には佳穂がいた。
「お前、天才かっ!」
「フッ。これくらい俺にとっちゃ朝飯前だぜ。でもまあこっから先はお前次第だぞ。」
「わかってる。ありがとな。」
持つべきものは親友である。
そして土曜日、最初の勉強会。この週はまだ部活があるので部活のある人は後から合流という形だ。一度帰ってシャワーを浴びて着替えてから貴史の家に向かった。
貴史の家があるマンションの少し手前で、前を歩く佳穂に気付いた。声を掛けようと思ったがサプライズゲストなので自重し、少し遅れて家に着くようゆっくりと歩いた。
ピンポーン
「お、来た来た」
「えっ?もう全員揃ってるけど?」
「??」
なんか貴史の勢いにのってサプライズ仕掛け役になってしまったが、いざやるとなるとどう入っていいかわからん。ハズイぞ。
「ジャジャーン!スペシャル講師のトキオくんで~す!みんな、わからないところがあったらなんでも聞いちゃおー」
家の中には貴史含め男子2名女子3名が居た。
「ど、ども。よろしくです。」
一時の沈黙の後、
「マジかよ!?今日のメンバー、成績似たり寄ったりだったから集まって勉強しても意味なくね?って思ってたけど、最高じゃねーか!」
「えーっ。すごーい。どうやって勉強してるのかとか聞いてもいいかなぁ?いろいろ聞きたいことありすぎる!」
「やばっ。学年1位に勉強見てもらえるとかヤバすぎでしょ!みんなでトップ10入れちゃったりして!ね、佳穂」
「う、うん...」
一気にみんなテンションが上がっていた。そんなに喜んでもらえるとは嬉しい反面、期待に応えないといけない。佳穂と仲良くなる大作戦を実行しつつ、みんなに勉強の仕方を教えねばなるまい。
佳穂だけは大はしゃぎせずにチラチラ私を見るだけだったのは気になったが、勉強会はスタートした。
まずは暗記を必要とする社会から。テスト範囲は日本史の古代から平安時代まで。当然勉強会の時間にその全て暗記することなどできないので、覚え方のコツを皆に伝授し、相関図などを書いた自作のノートやマーカーを付けた教科書を皆に回して参考にしてもらった。あとは各自、自分で昇華してもらうしかない。
続いて数学だ。一から私が授業する時間はないので、これについても重要なポイントをまとめた私のノートを見せて参考にしてもらった。
「このノート、すげー参考になるな。俺、ノートなんか先生が黒板に書いたことをそのまま書くだけだったわ。」
「わたしも。ってか普通みんなそうじゃない?」
「そうそう。授業中はノート取ることに集中しすぎてあんまり頭に入ってなかったりするのよね。」
学校の授業というものに何も考えず取り組むとそうなりがちである。授業中は話を理解することに集中し、ポイントをメモ書きする程度にして、帰宅後に自分なりに聞いたことをノートにまとめるのがよい。自分で考えてノートに書くので、ノートのどこに何を書いてたなど、後でかなり思い出しやすい利点がある。自宅での復習時間、面倒なようだがこれを惜しまず習慣づけて出来るようになると勉強は苦ではなくなる。
といった勉強の取り組み方などを参考情報として話したりした。あとはみんなそれぞれ問題に取り組んでいった。
「トキオくん、この問題がわからないんだけど…」
隣の女子が質問してきた。
「どれどれ?ああ、これはね…」
「なるほど。わかりやすい!ありがと!」
と言いながら腕を組んできた。まだ中学一年なのでそれほど目立った突起はないが柔らかいものが当たっている感触はある。だいぶ陽気なキャラの子なので他意はないと思うが反応に困る。
「どういたしまして」
と言いつつ、自然な感じで少し離れる。
「あ、俺もちょっとここ聞きたい」
その後も皆にちょこちょこ質問されては傍に行ってヒントを与えることを繰り返した。
夕飯の時間も近くなり解散となった。
「また明日な。明日は13時くらいからね」
貴史を残し、皆で帰路に着いた。最後尾を佳穂と2人で歩いた。
「さっき優香にくっつかれて鼻の下伸ばしてたでしょ…」
横を歩く佳穂がそう呟いた。
「えっ」
不意を突かれ、驚いて佳穂を見ると、軽く睨んだ目でこっちを見ている。
「い、いや、そんなことないよ。ただ勉強教えてただけだし…」
「ほんとにぃ?……………...ならいいけど。今日トキオくん来るって聞いてなかったからビックリしちゃった。いろいろ教えてくれてありがとう」
笑顔になってそう言った。なんとか機嫌はよくなったようだ。よかった。笑顔がかわいい。
「明日もよろしくね。…...この勉強会参加してよかった(ボソッ)」
「うん。また明日」
そう言って帰る方向の分岐点で分かれた。最後のほう何て言ってるかよく聞こえなかったけど、また明日会えるのは嬉しい。なんとかこれまでの気まずい雰囲気は解消できたと思う。
翌日、日課の早朝ランニングとサッカーのトレーニングを済ませ、午後の勉強会の準備を行った。日曜は試合がある場合以外、基本部活はお休みだ。今日は残りの国語、英語、理科の3教科。
家でお昼を食べた後、荷物をカバンに詰め込み、貴史の家に向かった。途中、参加メンバー4人が前を歩いていたので声を掛け全員一緒に勉強会場に到着した。
「さて、今日もやりますか!」
貴史の音頭により、各自準備し勉強開始。昨日の初日で少し要領を掴んだのか、質問の仕方の精度がみんな少し上がったように思える。
途中、貴史のお母さんがお菓子と飲み物を差し入れてくれたので休憩が入った。
「ねぇ。みんなって部活がない土日とか何して過ごしてるの?」
明るいムードメーカーな優香が皆に質問した。
「私はウインドウショッピングでお洋服やかわいい小物見に行ったりするのが好きでよくお出掛けするかな。本当に気に入ったものはお小遣いで買ったりして。」
「俺は家でゴロゴロして、漫画読んだりゲームしたりかな」
「私はファッション雑誌読んだり、テレビ見たりかなぁ」
「俺も家でゲームかな。あとはビデオ屋で映画借りてきてみるとかだな」
「私も雑誌読んだり、犬の散歩したり、休日はリラックスして過ごす感じだね」
この当時は当然スマホなんてないし、携帯電話も存在はしていたがバカでかくてとても持ち運びに向いていなく一般的には存在もあまり知られていない代物だった。パソコンもインターネットもまださほど一般的ではなかったので、テレビや雑誌が娯楽の中心となっていた。また据え置きのゲーム機スーパーファ●コンが発売されてから1年程度経過しており、ゲーム市場も活発になっていた。
「トキオは?」
最後に貴史が私にふってきた。
「えと、トレーニングと勉強と…競馬かな」
「「「「「競馬ぁ??????!!」」」」」
「マテマテ。トレーニングと勉強、これはストイックなおまえのことだから休みの日に限らずいつもやってるのは知ってる。その後に聞きなれない言葉が聞こえたんだが気のせいか…競馬って」
「いや、気のせいじゃないぞ。競馬をギャンブルとしか捉えないと確かになんで競馬?って考えになるかもしれないが、競走馬には1頭1頭様々なドラマがあってだな……」
と、競馬の魅力を滔々と語りまくった。過去の名馬達を例に出し、そのエピソードを聞かせた。私がこんなに熱く語っている所を見たことがない皆は、少し引いてたかもしれないがちゃんと話に笑ったり共感してくれたりもした。
休憩をはさみ、夕方まで5時間弱皆でしっかりと勉強し、解散となった。
「平日は各自しっかり勉強するんだぞ。わかったな!特に俺!」
と貴史が最後に自虐的なボケをかまし、皆苦笑いしながら帰路に着いた。今日も最後尾を佳穂と歩いた。
「まだ勉強会2日やっただけだけど、ちょっと勉強楽しんでできるようになってきたかもー」
「それはよかった。嫌々やってるうちはなかなか伸びないからね。この調子でテストのりきっちゃおう。あとまだ早いけど高校も一緒のところいけるといいね。あっ」
「えっ?!」
しまった。うっかり思っていたことが口に出てしまった。この先、仮に付き合ったとしても高校が別だと別れてしまう確率がとても高いのを前生の統計上感じていたので、同じ高校に行けるといいなと思っていた。
ただ、自分の行きたい高校が県内トップの私立高校。前生は学力が少し届かず行けなかったが今回はそこに行きたい。ここを譲れないとなると、彼女の学力も上げて2人でそこに入るという道筋を目指すことになる。そんな風に最近考えていたため、つい口走ってしまった。
「あ、みんなで成績上げてそうなるといいなーって」
と思いつくごまかしの言葉で繋げた。
「そ、そうだね。トキオくんはやっぱり県立▲◎高校か●■高校?」
県立トップ2校のうち、近いほうの県立高校と県内私立トップの高校の名が上げられた。
「●■高校にいければいいなって思ってる。生徒の自主性を重んじてくれる学校みたいで、人として成長出来る環境って聞いてるから。」
「へぇーそうなんだ。私も行けるかなぁ」
「行けるよ!一緒に頑張ろう?」
「そうかな?うん!頑張ろう!」
1週間何事もなく過ぎ、テスト期間で部活もお休み。直前の土日も勉強会はあったが、コツを掴んだのか質問は少なく、皆淡々と勉強し時間が流れていった。
「明日からいよいよテストだ!最後にトキオ先生からお言葉をいただこう」
4日目の勉強会終了時、貴史が急にムチャ振りしてきた。何を言ってるんだコイツは。が、人生経験豊富な私は即時対応した。
「皆さん、この2週間よく頑張りました。勉強会初日とは見違えるようになってます。私の見立てではこの調子で続ければ今後ここにいる全員の成績はドンドン上がってトップレベルの高校も目指せるようになると思います。自信をもってまずは目の前の期末試験に挑みましょう!」
「おー!」
パチパチパチ
「では、一丁締め(関東一本締め)で勉強会を締めたいと思います。皆さんお手を拝借」
「「「「「えっ?!」」」」」
しまった。会の締めは基本的に一丁締めが締まりよいのだが、中学生が取る音頭ではなかったか。
「出たよ(笑)ちょいちょいおっさんぽいとこあるよな、トキオは。で、どうすればいいの?」
まあ、中身おっさんだからね。。
「俺がせーのって言ったら、みんなで「いよーぉ」って言って、パンッってタイミング合わせて一回手をたたくだけだよ。じゃあいくね。」
「せーの」
「「「「「「いよーぉ」」」」」」
パンッ
パチパチパチパチ
「お疲れ様でした」
それで勉強会は解散となった。
淡々とテスト期間が終わり、テスト結果が返され、職員室前に成績上位者(10位まで)の貼り出しが行われた。順位と名前と5教科の合計得点が掲示される。
1位は不動の私。そしてなんと9位に勉強会参加者の優香、10位に佳穂が入っていた。
職員室前に2人の姿があった。
「私がこんなにテスト結果が良いなんてウソみたい。私だけじゃなくて佳穂も並んでるし」
「ね。この分だと他の3人も30位以内には居そうな気がするね」
そこにその3人がちょうど来て輪に加わった。
「トキオくんはまあ定位置として、優香と佳穂スゴいね!でも私たちもジャーン」
そう言って3人は小さな紙切れを見せてきた。10位台の2人と参加メンバーで一番低い順位でも貴史の23位だった。
「トキオ塾マジすげぇな」
「やめろ。みんな、マジで広めんなよ」
勉強会メンバーには話を広めないよう念押しした。流石に他の奴らの面倒など見切れない。あくまで作戦の成り行き上、勉強会メンバーの底上げを行ったに過ぎないのだ。
トキオは5人とクラスが違うためそこで分かれ、自教室へ戻っていった。
「トキオくん、将来有望だし私狙っちゃおーかなぁ?」
「えっ、優香、ダメだよだって…」
「ウソウソ。分かりやすく慌てちゃってかわいいな、この子は~。勉強会の時の佳穂の様子を見てたらわかるって。」
「もーっ。気付いてるなら言ってよぉ」
「ま、本人は気付いてなさそうだけどね。付き合えるといいね」
「うん。アリガト。」
そんな会話がされているとは露しらず、トキオはどう踏み出すか悩んでいた。
呼び出して告白したい。だがこの時代、連絡手段が物凄く限られるのだ。電話は自宅に電話するしかなく親御さんが出る可能性が高い。この時代あるあるだ。待ち合わせなんかも急に行けなくなった場合スマホがあればメッセージ1つで解決するが、この時代は急に連絡はできない。これが当たり前の時代だった。
シャクだが貴史の手を借りることにした。
廊下で待っていると貴史から私が待っていると伝えられた佳穂が教室から出てきた。
「あのさ、来週の火曜日の18時くらいって時間あったりするかな?」
「んー、多分犬の散歩してるかも」
「あ、じゃあさ、近くの公園でその時間会えないかな?ちょっと話したいことがあって…ここではちょっと話せない内容なので...」
「うん。大丈夫だよ。24日の18時頃ね」
無事に約束を取り付けた。クリスマスイブ。フラれたら最悪のイブになるが、当たって砕けろだ。まあ一回フラれたくらいで諦めるなんてこともないメンタルは持っているし。
第6話へ続く...
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