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第3話:恋愛レボリューション

第2話からの続きとなります。

もう一つ、中学生年代(第3種登録)の大きなサッカー大会として、高円宮杯 JFA 全日本U-15サッカー選手権大会がある。


 日本サッカー協会 (JFA) が主催して毎年11-12月に行っているサッカーの公式戦であり、歴史の上では今年第3回大会が、中学校サッカー部が優勝した最後の大会となり、その後はずっとクラブチームが戴冠している。1998年以降の優勝はすべてJリーグ所属クラブの下部組織の名前が並ぶ。

 

 プロリーグが出来たことによる効果は、海外強豪チームでプレーする日本人選手がたくさん出てきていることからもわかるが、このような育成世代でも顕著に現れている。


 入学から間もない今年は無理だが、来年この大会で優勝することを目標とする。部室でみんなにそう宣言してみた。笑ったりからかわれたりするかなと思っていたが、みんなそんなことはなかった。皆が押し黙るなか、2年生の新キャプテンが口を開いた。


「なんでかな。途方もないことを言ってるのに、なんだかおまえが言うとやってやろうって思える気になるんだよなぁ」


 そう言って微笑みながらこう続けた。


「トキ。監督や二年のメンバーとも話し合ったんだが、おまえに副キャプテンをやってほしい。一年が副キャプテンなんてのは異例中の異例だってことはわかってる。だがおまえがサッカーに詳しすぎるのを知らない部員は一人もいないし、おまえと一緒にやるサッカーはドキドキとわくわくが止まらねえんだよ。おまえの好きなようにやって、俺たちに新しい景色を見せてくれ。頼む!」


「「「「「「「「「頼む!」」」」」」」」」


 二年生だけじゃなく一年生もなぜか全員が私に頭を下げて口を揃えて言った。


「はぁ。まったくしょうがないですね。みんなちゃんと付いてきてくださいね!」


 この後、どういう戦術のチームにしていくか、かなり悩んだ挙げ句、プロでも難しい5レーンの考え方や動き方、攻撃時に4ー4ー2から3ー5ー2にシフトする動き、ゲーゲンプレスなど、この時代にはない戦術を全員に徹底的に叩き込み、それを実践できる走力とスタミナをみっちりと鍛え上げるトレーニングを積むこととなる。



*****



 夏休みも終わり、文化祭の季節がやってきた。

 自分のクラスはバザーをやることとなっていて、基本的には皆で家から提供しても大丈夫な物を持ち寄り、それらを販売する形だが、いくつか手作りの物も売ることとなっていた。


 教室の飾りつけをする班、集まったものを整理して値付けや管理をする班、手作り班などに分かれて放課後に作業を行う。私は手作り班となった。


 手作りするものはいくつかあったが、私は安全ピンとビーズを使って、いろんな国の国旗を作成することとなった。作り方が決まっているわけではなく、社会の教科書に記載してあった国旗を見て何となく作っていくというもの。手先の器用さとセンスが必要なところとなり、男子は私含め2名しかおらず、あとは全員女子という班。


 手先の器用さはともかく、頭の中で色と配置の組合せを設計して作ってみたところ、なかなか上手く出来た。サッカー部らしくサッカーの強豪国ブラジルの国旗を緑と黄色と青のビーズで上手く表現。アルゼンチン、イングランド、ドイツ、と黙々と作っていると周りの女子達がそれに気付き


「トキオくん上手~」

「ホントだ、上手~」


 近くに寄ってきて、手にとってお褒めの言葉を伝えてきてくれます。そして一瞬で女子に囲まれてしまった。


 女子のいい匂いに包まれるのはとても嬉しい、もとい、好意的に接してくれるのはとても嬉しいのだが、いささか距離感がバグってて、みんなかなり近くに寄ってくる。


 もう一人の男子や部屋の飾りつけをしている男子達の冷たい視線を感じる。。


「あ、ごめん。そろそろ部活行かなきゃだ。」


 と言ってなんとかそこを抜け出す。

 

 多分なんだが、おそらく勘違いじゃないと思うのだが、めちゃくちゃモテてる気がする。


 サッカー部で1年生からレギュラーかつエース、勉強も学年1位。中学生でモテるステータスとしては確かに申し分無いと客観的にみて思う。


 しかしだ。中身はオッサンということもあり、タイムリープ前の時点では高校生以下は子供にしかみえなく、まったく興味なしであり、同世代の恋愛は難しそうだなと思っていた。


 実際、戻りたての小学生の時に初恋の子と話をしていても何らトキメかなかった。


 文化祭の準備を抜け、校庭の隅にある部室に向かおうと歩いていた。その時すれ違った人影に私は一瞬で目を奪われ、立ち止まった。


「おー、トキ。さっさと着替えてやろうぜ。練習始まる前にちょっと教えてほしいことが…っておいっ、大丈夫か?!」

 

 後ろからやってきた同じ一年のチームメイトが話しかけてきたが、途中でその異変に気付いた。


「あ…れ…?」


 気が付けば大粒の涙が流れ出ていた。


「体調悪いのか?保健室行くか?」


「あ、ああ、大丈夫。何でもない。部活行こうぜ。」


 袖で涙をぬぐい、部室に向かう。友人は一瞬困惑した表情を浮かべたが、空気の読める彼はトキオの肩に手回し、


「トラップのパターン増やしたいんだけどさぁ。何個か使えそうなの教えてくんない?中盤でトラップ際寄せてきた相手をかわす時にいいやつ」


「ああ、じゃ着替えたら3パターンくらい実演してみるから、それを練習するといいよ」


 その日の練習は少し上の空だった。



*****


  

 すれ違った人影、その少女の名は、高井佳穂(たかいかほ)

 

 この時点ではまだ何の接点もなく知り合ってもいないが、紛れもなく彼女であった。彼女はもう一つの小学校から進学してきた子で、学年一番人気の女子生徒だった。


 中学卒業後は、中学校卒業20周年記念の大同窓会で会うまでまったく会うことがなかった。その同窓会の時も幹事の一人であった私は、幹事の仕事もあり挨拶程度しか言葉をかわせなかった。


 彼女とは3年間同じクラスになったこともなく、部活も違ったため、接点は0。初めてまともに話したのは、通っていた塾でのことだった。


 中学二年の時、もともと通っていた個人経営の塾から大手の塾に変えた。その塾は学力別に3クラス(ACF)に分けられており、最初一番上のFクラスに居たが、ある時昇級降級が決まるテストでミスって真ん中のCクラスに落ちたことがあった。


 そのとき、そのクラスに彼女がいた。席が前後になったとき、彼女が急に振り向いて話し掛けてきてくれたのだ。とてもドキドキしたのを覚えている。何を話したかはまったく覚えていないが。


 彼女が人気あったのは、その容姿がとても可愛かったからというのは勿論あるが、分け隔てなくみんなと接するその性格の良さにあったのではないだろうか。それからしばらく塾の教室で会うと話をする間柄になった。


 その後の昇級降級テストにより、彼女は一番下のAクラスに行ってしまった。私はギリギリ昇級できる点数を取れたが昇級しないでCクラスに留まった。もともとFクラスのギスギスした雰囲気が好きではなかったため、それを理由としたが、多分彼女がまた上がってくるのを待ちたかったのだと思う。しかしその後、彼女がCクラスに上がってくることはなかった。


 そうして塾で会って話をすることはなくなったが、部活で足を捻挫して廊下で足を引きずって歩いてたときなんかには寄ってきて「大丈夫?!どうしたの?」など話し掛けてくれることはしばしばあった。既に私は彼女を好きになっていたが、ずっとその距離感のまま想いを告げることなく卒業し、前述の同窓会に至る。同窓会の後、参加者の何人かからSNSを通じてお疲れ様メッセージを貰った。その中に彼女もいた。

 

「お疲れさまでした。来てくれてありがとう!一年掛かりの準備期間で大変ではあったけど、みんな楽しそうだったからALLオッケー!

お話ししたかったけど忙しくて無理でした。。

こうしてSNSで繋がっていればまた機会もあると思うので、今後ともよろしく」


 と私が返信したのに対し、


「ほんと、ゆっくり話せなかったのが残念だったけど、またの機会もあるだろうし、SNSもあるしね!今日はゆっくり休んでね。お疲れ様~~」


 とさらに返してくれた。


 私はこの時、楽観的に言葉通りに思っていたが、既に彼女はこの時わかっていたのだろうか。またの機会が訪れることはないということを。


 彼女はその年のクリスマスを迎える前に亡くなった。


 友人伝で葬儀の連絡が入った。一瞬言ってる意味がわからなかった。


 ナンデ?また今度会えるのを楽しみにしてたんだよ。ナンデダヨ。まだ人生これからだろう…お子さんもまだ小さいからまだまだママを必要としてるよ…早すぎるだろう…悔しいなぁ…


*****

 

 悲しさよりも何も出来ない自分に悔しさで一杯になった。そんな記憶が彼女とすれ違った瞬間に思い起こされた。何で忘れていたのだろう。


 数日塞ぎ込み、そして私は決めた。自分がタイムリープしたのには何か意味があるはずだと。ならば私はこの悲しい事象を書き換えたい。自分が好きだったこの女の子の命を救いたい。跡絶えてしまった未来を在るべきものとして、そして幸せになってほしいと。そのために出来ることを考えよう。そう心に決めたのであった。



第4話へ続く...

数ある作品の中から、当作品を読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク数が増えると続きを待っている人がこれだけいるんだ!って思え、執筆意欲が高まるので、登録していただけるととても嬉しいです。

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