大天使ミカエルからの弔辞
人よ。
お前が生涯の中で、
どんな者とつるもうと、
喧騒の中で生きようと、
それでも必ず最後は
一人で納棺されてゆくのだ。
まるで、
お前が海をたった一人で
眺めていた時の様に、
自分の顔で
お前は納棺されて
墓穴に運ばれてゆく。
人よ。
愛は共に往けぬ。
だが、お前は
それを悲しむのか?
聞け。
一人の時にこそ、
憎しみを想う誰かや、
愛しい誰かの顔が浮かぶのなら、
その者達は記憶の中で
永遠の祝宴を
繰り広げているではないか。
お前達は、
決して交じり合わず、
拒絶し、抗い、殺し合う
孤独な肉だが、
憎しみ合うお前達は、
この地上の
[生涯]という名の大広間で、
[宿命]という名の舞踏を
軽快に踊り合っていたのでは?
お前は
歩かなくともよい道を往き、
出会わなくてもいい者達と
出会った筈だ。
敢えて喜劇に出演し、
隣人に嫌悪しながら、
会釈し、
親の仇の様に
殺し合う家族だったのだ・・
人よ。
孤独というものを誤解するな。
また、
絆というものを誤解するな。
絆とは、
ただ手を繋ぎ合う事ではない。
止まらぬ時間と
喪失と破壊の
この地上では、
そして、
所詮、消えゆく記憶の中では、
時として
抱擁も、
刃の刺し合いも、
同じ愛の産物である故に。
行け。
神の愛の道を・・
病や苦しみや死すら
優しい揺り籠として在り、
天上の王国で、
永遠の物語の続きを上演する・・
その階段を
お前は今日行くのだ・・